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第1章「残り全部バケーション」
離婚する夫婦と其の一人娘が、ひょんな事から「岡田」と名乗る若い男性とドライヴに行く事に。男の素性が掴めない儘、起こった出来事とは?
第2章「タキオン作戦」
路上で見掛けた小学生男子の身体に、在るべき筈の無い傷跡を見付けた「岡田」と「溝口」。少年の家庭状況を知った2人は、突拍子も無い策で少年の父親に近付こうとする。
第3章「検問」
女は突然、車の後部座席に押し込められ、ガムテープを口に貼られる。運転席には、相棒に「溝口」と呼ばれる男が座っていた。前方に迫る検問を、此の車は通過する事が出来るのか?
第4章「小さな兵隊」
クラスメートの「岡田君」は、本当に問題児なのか?普段は目立たない彼が重ねる、意味不明の悪戯に「僕」は興味を持つ。
第5章「飛べても8分」
仕事中に交通事故に遭い、入院した「溝口」。同室の患者達と和やかに過ごしていたが、同じ病院には意外な人物が居て・・・。
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伊坂幸太郎氏の小説「残り全部バケーション」は、裏稼業コンビの「溝口」と「岡田」を描いた作品。犯罪行為をしている2人なのだが、何処かに間抜けさが漂い、特に岡田には御人好しな面が感じられたりと、憎めないコンビで在る。
第1章から第2章に掛けての話の繋がりからすると、第3章は話が逸れていっている感が在り、第4章になると「唐突に、無関係な話が挿入された。」という感じが在った。「意味が良く判らないなあ。」と首を捻り乍ら読み進めると、第5章の最後に“意外な事実”が判明し、全ての章が上手くリンクされている事に気付かされる。此の辺のテクニック、「流石だなあ。」とは思う。
唯、此の意外な事実に関しては、“説明過多な文章に慣れ切ってしまった人”だと、“説明不足”という事で、良く判らない儘にスルーしてしまうかも。
伊坂作品は概して、人によって好き嫌いがハッキリする様に思う。ネット上のレヴューを見ると、伊坂作品のディープなファンと思しき人程「『残り全部バケーション』は、伊坂氏らしい作品。」等と高い評価を下しているが、個人的には「可も無く不可も無し。」という感じだった。
総合評価は、星3つとする。
“脅されていた側”が“脅していた側”の提案に乗っかり、結果としてノリノリで“別の悪”を脅す。此れには、思わず笑ってしまいました。
又、今や死語となってしまった「とんでもはっぷん」(http://zokugo-dict.com/20to/tondemo-happen.htm)に、ああいう謂れが在ったというのを初めて知り、今度飲みの席で薀蓄として傾けてみようかなとも。
総合的には「うーん・・・。」という感じでしたが、全く無関係と思われた事柄を絶妙にリンクさせて行くというのは、「上手いなあ。」と思います。「20年前云々」という部分も「そうだったのかあ。」と感じましたし。(此の辺が「説明過多な文章に慣れ切っている人だと、良く意味が判らない儘、スルーしてしまいそうな気も。)