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銀行に失望してメガバンクを退職した百瀬良太(ももせ りょうた)は、県が管轄する「いしかわ金融調査部」で、金融関係の相談員として再就職した。
其の頃、良太の兄・正弘(まさひろ)が経営する会社の経営が危うく、兄が頼ったのは、地方で噂になっている株取引の天才「黒女神」だった。
黒女神事、こと二礼茜(にれい あかね)は、大金と引き換えに、“依頼人の最も大切な物”を要求すると言う。大金を用意した茜は、良太を助手にする事に。
良太は依頼人に応えて行く茜を見守るが、一方で、良太の職場の上司・秀島史秋(ひでしま ふみあき)が茜の存在を調べているらしい事を知り、良太は不安を覚え・・・。
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第14回(2015年)「『このミステリーがすごい!』大賞」で大賞に輝いた小説「ブラック・ヴィーナス 投資の女神」(著者:城山真一氏)は、「経営に行き詰まり、多額の負債を抱える人物に代わって、株取引で必要とされる金銭を稼いで与える。」という二礼茜が主人公。株取引で天才的な能力を発揮し、“黒女神”と呼ばれる彼女は、相手の望みを叶える代償として“依頼人の最も大切な物”を要求するのだが、其れが一般的には無価値な物だったりする。
荒唐無稽な設定が目立ち、「非現実的で、読み続ける気にならない。」と考える人も居られるだろうが、「二礼茜とは、一体何者なのか?」、「実入りが決して多くは無さそうな事を、何故彼女は続けているのか?」、「秀島史秋は何故、彼女の事を調べているのか?」等々、秘められた多くの謎に、ついつい読み進めてしまった。荒唐無稽さも、此れ程突き抜けてしまうと、“純粋な読み物”として気にならなくなるし、何よりもストーリーが魅力的。或る人物と茜の人間関係も、意外性が在った。
最終選考の委員・大森望氏が選評で「ヒロインのキャラ立ちも抜群で、直ぐにでも漫画化/ドラマ化のオファーが来そう。」と書いているけれど、自分もそんな感じが。
総合評価は、星3.5個とする。