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「法律を変えて、予算を勝ち取る。其れが出来るのは、国会議員だけなのよ。」。
野党・民衛党から出馬し、初当選した芹沢小町(せりざわ こまち)は、「現役キャバクラ嬢」にしてシングル・マザー。夜の銀座で働く親専門の託児施設を立ち上げた行動力と、物怖じしないキャラクターがメディアで話題となり、働く母親達から熱い支持を集めたのだ。待機児童、保活、賃金格差、貧困・・・課題山積みの“子育て後進国”ニッポンに、男社会・永田町に、小町のパワーは風穴を開けられるのか!?
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西條奈加さんの小説「永田町 小町バトル」は、2人の新人女性議員が登場する。「野党・民衛党から出馬して当選した、見た目も行動も派手な現役キャバクラ嬢・芹沢小町。」と「祖父は総理大臣、父も曽祖父も政府の要職を歴任したという華麗な家に生まれ、急死した父の跡を継いで与党・自雄党から出馬した、典型的な世襲議員の小野塚遼子(おのづか りょうこ)。」という2人だ。年齢は30代、美人で強気な性格という共通点を持ち乍ら、経歴が余りに異なる彼女達。強烈なライヴァル意識を持っている様な2人に対し、メディアは名字(“小野”塚)と名前(“小町”)に擬え、「永田町(小野)小町バトル」と呼ぶ様に。
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けれど与野党も無所属も関わりない、大原則がひとつある。選挙に勝たなければ、二期目、三期目と当選し続けなければ、理想も目標も追うことはできない。一方で選挙活動といえば、概ね決まっている。それが瑠美(るみ)が言った、街頭演説とポスター貼りとちらし配りだ。とにかく顔と名前を覚えてもらう―。選挙の必勝法はそれに尽きる。
毎日のようにマイクをもって街角に立ち、何千枚ものポスターとちらしをせっせと配り歩く。仮にそのために一日二時間費やすとすると、一年で七百三十時間。単純に日に換算すれば、ほぼ一ヵ月となるが、議員活動ができる時間を一日十二時間とすると、倍の二ヵ月分を削られることになる。一年の六分の一を選挙活動にとられるくらいなら、他にやりたいことが山のようにある。
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国会議員の本業が、「街頭演説やポスター貼り、ちらし配り、支持者に関係する冠婚葬祭への“顔出し”等、自身の顔と名前の売り込み活動。」になってしまっている現実は、抜本的に変えなければいけない。とは言え、そういった活動を余りにも制限すれば、当選するのは顔や名前が売れたタレント候補や世襲候補許りになってしまうだろうから、実に悩ましい問題だ。
国会議員に関わる事柄が、判り易く記されている。知っている様で、実際には表面的な事しか知らなかった事柄も在ったりで、非常に勉強になったが、国会議員を擁護し過ぎている様な感じも。
又、“保活”の厳しい実態が、具体的な数字と共に記されているのも、読む価値が在ると思う。
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ひとりの考えには限界がある。雑音をすべてとっ払って目指す道は、当然、ひどく極端な方向に偏ることになる。世界大戦中のナチスが良い例だ。それでも大衆は、結果をより早く提示できる迷いなき指導者を、心のどこかで求めている。中東でテロ組織が気勢を挙げるのも、欧米の指導者に極右思想をもつ者が台頭してきたのも、同じ理屈である。
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面白いストーリーなだけに、結末が今一つだったのは残念。「こういう感じで終わるんだろうな。」という予想通りの結末だったので。
総合評価は、星3つとする。