ば○こう○ちの納得いかないコーナー

「世の中の不条理な出来事」に吼えるブログ。(映画及び小説の評価は、「星5つ」を最高と定義。)

”血笑鬼”グレート・東郷 Part2

2006年07月04日 | スポーツ関連
彼が日本のマットに初めて登場したのは1959年。当時の日本プロレス界は、力道山人気で盛り上がっていた。他のレスラー達や余程気心の知れたベテラン記者以外には自らを「先生」と呼ばせていたという”専制君主”の力道山が、何故かグレート・東郷には「リキさん」と呼ばせていて、且つ親しい間柄に在った様だったと彼等を知る者が語っている。アメリカのマット界に顔が利く彼に、力道山が敬意を払っていた面も在ろうが、その他にも理由が在ったのではなかろうかと著者の森氏は推理する。それは力道山が北朝鮮出身で在ったのと同様に、グレート・東郷も両親が日本人の日系二世では無かったからではないだろうかと。

当初、彼の母親が中国人だったのではないかと考えていた森氏だったが、グレート・東郷と近しかったグレート草津の元を訪ねインタビューした所、両親共に韓国籍という事をグレート・東郷本人から聞いたと証言。結局、真相は判らず仕舞いで終わっているのだが、もしグレート草津の話が事実だとすると、北朝鮮出身の力道山と、韓国出身のグレート・東郷。共にコリア出身の二人が日本のプロレスの礎を作り、時にはリング場でタッグを組み、アメリカのレスラー達を蹴散らすファイトに敗戦国日本の国民は熱狂し、自信や誇りを取り戻した。その試合の中継で真価を発揮したTVは、やがてメディアの覇者となり、拉致問題や反日運動等を大々的に取り上げ、日本に於けるナショナリズム高揚の大きな潤滑油となっているのだから、何と捻れ国威発揚で、何と哀しいナショナリズムだろう。とする森氏の文章が心に響く。

グレート・東郷に触れた部分以外にも、この本は読ませる内容が多い。過去に「さらば、”全女”!」等の記事でも触れた様に、嘗ては熱くプロレスを見ていた自分だが、プロレス関連本を読み漁る程のディープなファンでは無かった。ディープなプロレス・ファンならば常識として知っている事なのかもしれないが、プロレスの型は必ず左半身を軸にしているというのは勉強になった。例外が全く無い訳では無いが、「左足を軸に(左から攻め)右方向に動く。」というのが大原則。

日本人のプロレスラー力道山(正確に言えば、力道山は日本人と称していた事になるが。)以前にも多数居たというのも意外な事実で、1883年に大相撲を経てアメリカに渡った松田幸次郎(リング・ネームはソラキチ・マツダ。)が日本人初のプロレスラーなのだそうだ。

そして何と言っても心に残ったのは、肝心のプロレス話では無く、日本のマスメディアと国民のメンタリティーに触れた部分だった。

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思想、信条は自由。だけど相手がその呼称を嫌がっているのなら、それを避ける位の良識は、人として当たり前だ。ところが今では現都知事すら、公式の場で(中国を)シナと発音する。そう異議を唱える僕に、『何を言っているんだ。中国は世界的にもシナと呼ばれている。』と言い切った保守派の論客が居た。シナじゃない。チャイナだ。でも彼等はチャイナとは言わない。わざわざシナと発音する。

このレベルには、彼等が良く口にする「民族の誇り」や「国家への思い」等の高邁さや崇高さは欠片も無い自らより少しでも劣位の位置に在るもの(若しくは劣位の位置に在ると思い込んでいるもの)に対する侮蔑で在り、排斥で在り、嫌悪だ。ところが現都知事への支持率が圧倒的に高い事が示す様に、このレベルが今のこの国をマジョリティーの意識として覆っている。(中略)

「(今の日本人は)ぶよぶよに膨れ上がり、中身はすっからかん。」と「週刊ポスト(2005年1月14&21日号)」誌上で発言した石原都知事はその理由を、60年間戦争が無かったから。と断定した。料亭の戯言が洩れた訳では無い。公称発行部数80万部の週刊誌に掲載されたインタビューだ。ところが全く問題にならない。批判の声すら上がらない。

政治家の質が悪くなっただけでなく、これをチェックすべきメディアと民意が、すっかり不感症になっている。それともこの程度の発言には、もう誰も違和感を抱かないという事なのか。まあそれならそれで良い。
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韓国や中国等からの度を越した内政干渉には、腹立たしさを覚えない訳では無い。それに、かく言う自分も戯言レベルでは、差別的な発言をしない訳でも無い。しかし懸念を覚えるのは、こういった国及び国民に対して何から何迄、それも心底侮蔑の念を露骨に表す人が近年目立つ事。度を越した内政干渉に対して毅然とした態度で拒むべきだし、彼等に阿る必要なぞ毛頭無いが、だからと言って何から何迄、侮蔑の念を表すというのはどうかと思う。「相手が先に侮蔑的な言動をしたから、こちらも同じ事をしている迄。」という事かもしれないが、それでは侮蔑している相手と同じ土俵に立ってしまっている事になりはしないだろうか。自国に高い誇りを持っているならばこそ、軽々しく野卑な言動を為すのは慎むべきだと思う。

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3 コメント

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Unknown (雷座)
2006-07-04 18:53:11
こんにちは。

森氏の本を読むまでは「グレート東郷は単なる悪い奴」という印象しかありませんでした。

「ギャラのつり上げやピンハネ」といった事しか昔の「プロレス関連本」には書いてなかったように思います。

グレート草津氏へのインタビューなどで「知られざる真実」が明かされるなど予想以上に面白い本でした。
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「もうひとりの力道山」 (かんちゃん)
2006-07-04 22:13:56
こんばんは。森さんの本は未読ですが、読んでみたくなりました。グレート東郷=コリアン説は、全くの初耳です。



タイトルに書いたのは、小学館文庫から出ている、力道山の伝記です。



http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4094023712/qid=1152018408/sr=1-1/ref=sr_1_2_1/249-5153635-1107511



僕と同世代の在日朝鮮人3世のライターによって書かれたもので、過去の力道山本の著者ができなかった、北朝鮮への渡航取材によって知り得た新事実も含む力作です。もし、未読ならぜひお奨めします。
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レスラーのビジネスと民族 (破壊王子)
2006-07-04 22:57:29
たとえばカール・ゴッチ。彼は非ナチ型のドイツ人キャラクターですが、実際にはベルギー人だと聞いたことがあります。確か故ルー・テーズ(ルーマニア系アメリカ人)が語っていたと思います。曰く

「彼の技をジャーマンスープレックスというからウケルんだ。ベルジャンスープレックスではねえ・・・」

その他にも実際にはユダヤ系なのにナチス風のキャラクターやアラブ系の衣装を着たレスラーすら居ました。

まことにプロレス界は業が深いのです。



シナという表記問題ですが、日本の中で日本語で会話や文章を組み立てる際には使わない方が大変なこともあります。本州の西側、近畿地方の西に中国地方があるからです。



「中国銀行」「中国放送」「中国電力」まだまだありますが、これらは外資じゃありません。



ついでに言いますとロシア語ではシナ=中国はキタイと言うそうですが。語源は契丹です。



一筋縄でいかないのが言葉の問題でありまして、都知事の如き挑発的、侮蔑的に使うのであれば、それがどんな美称・尊称であろうとも侮蔑的にしか響かなくなるものと思います。

そもそもアタクシは現都知事、好きじゃないんで(笑)





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