ば○こう○ちの納得いかないコーナー

「世の中の不条理な出来事」に吼えるブログ。(映画及び小説の評価は、「星5つ」を最高と定義。)

「幕間のモノローグ」

2021年05月27日 | 書籍関連

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ドラマ映画の撮影中、舞台の演技中に起こる様々な事件やトラブルを、鮮やかに解決するヴェテラン俳優の南雲草介(なぐも そうすけ)。其処には、或る秘密が隠されていた。

「辞めたい。」という俳優に、自信を取り戻させた不思議な練習方法。“斬られ役”の俳優が、何故かカメラに背を向けて倒れた理由とは?俳優のマネージャーが、“態と”自動車事故に遭ったのは何故か?脚本家に「下手だ。」と思われていた俳優を何故、南雲は主役に抜擢したのか?

南雲の狙いは、何だったのか?彼には何故、真実が見えたのか?
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教場シリーズ」で人気小説家の仲間入りを果たした長岡弘樹氏。そんな彼が「芸能界に生きる者達の“”を描いた小説。」で在る「幕間のモノローグ」を読了。「二十一世紀アクターズスクール」で講師を務めているヴェテラン俳優・南雲草介が、“教え子達”が関わる“事件”の謎を解いて行くというストーリーで、8つの短編小説から構成されている。

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理容学校では、腰を落としたまま重心を移動する練習を何度もやらされた。腰痛予防のためだ。理容師はどうしても前屈みの姿勢を強いられる。腰が強くなければ務まらない仕事なのだ。

・「いい方法がありますよ。」。「・・・何のこと?」。「ですから、瞳孔を開かせる方法です。いいですか、このあたりを摘んでみてください。」。水沢(みずさわ)は右手を上げ、それを自分の首の後ろへやった。何かに驚いて毛が逆立つ、といった経験をたまにするでしょう。そのとき、首筋の毛の生え際あたりがぞぞっとしますよね。そのあたりを摘むんです。そうすると瞳孔は開きます。。「・・・本当に?」。ええ、ここを刺激すると、アドレナリンが出るんです。すると人間の体は、周囲をもっとよく見るために光を取り入れようとします。だから開くんです。
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「へー。」と思わせる蘊蓄が幾つも鏤められているが、特に“演技”に関する物は、とても興味深かった。例えば「“殺し屋”の役を演じて下さい。」とだけ指示されても、「殺し屋は何故、そんな仕事に手を染める様になったのか?」から始まり、彼の家族構成や半生等、自分の中で“演じる人間の設定の肉付け”を詳しく作り上げた上で臨まないと、見ている側の心を揺り動かす演技は出来ない・・・というのは、「成る程なあ。」と思った。

以前、誰だったか忘れたけれど、或る俳優が『後ろから急に声を掛けられて驚く。』という演技を要求されると、殆どの人は『慌てて
後ろを振り返り、驚いた顔を見せる。』という演技をするが、此れは全く現実感が無い。実際、後ろから急に声を掛けられて驚いた場合、先ずは周りの髪の毛がびくっと上に上がる物だ。其処から始めないと、現実感の在る演技では無い。という趣旨の発言をしていたけれど、確かにそうだと思う。優れた俳優というのは、優れた観察力を持っている。と言って良いだろう。

「『故人に対し、手を合わせて合掌する。』際、故人への思い入れの度合は、合わせた手と顔の距離にリンクしているのではないか?」というのは、自分が経験から感じている事。「個人に対する思いれの度合いが強ければ強い程、合わせた手は顔に近付き、逆に度合いが弱いと、顔からの距離が離れる。」様に思う。こういう事も、演技をする上で役立つのではないか。

「教場シリーズ」もそうだが、長岡氏の伏線の敷き方の上手さは相変わらず。又、「メソッド演技法」というのは知っていたけれど、様々な演技の練習方法も面白かった

残念なのは、終わり方にモヤモヤ感が在った事。もっと意外性の在る結末を期待していたので、全くすっきりしなかった。

総合評価は、星3つとする。


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