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東京・赤羽の巨大団地「葵ヶ丘」に住む北原美紗子(きたはら みさこ)の娘で、小学1年生の奈月(なつき)が失踪した。赤羽中央署生活安全課の疋田務(ひきた つとむ)は部下の小宮真子(こみや まこ)、末松孝志(すえまつ たかし)、野々山幸平(ののやまこうへい)等と共に、懸命な捜査を続ける。だが、一向に消息は掴めなかった。奈月は、一体 何処へ?
軈て誘拐犯を名乗る人物から身代金要求の電話が掛かった時、事件は予想だにしない方向に暴走を始め・・・。
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帯に記された惹句「若い母親は何を求めたのか?幼い娘の未来は何処へ・・・。」に興味が惹かれ、手に取った小説「限界捜査」。著者・安東能明氏の作品は、此れ迄に全く読んだ事が無く、今回が初めてとなる。
幼児や小児を性的対象とする「小児性愛」を「ペドフィリア」、そしてそういった性癖を有し、実際に幼児達に性的行為をする人間を「チャイルド・マレスター」と言うが、此の小説は「ペドフィリア」や「チャイルド・マレスター」を題材にしている。子供が大好きで、尚且つ子供を性的対象にし得ない自分にとっては、読んでいて不快さを感じる描写が少なく無い。
登場人物達のキャラクター設定が、全体的に物足りない。例えば疋田の部下で在る小宮真子の場合、「母親が弟を溺愛する一方、娘の真子を疎んでいる。」という設定で、そういった描写が何度か出て来るし、真子もそんな母親を嫌っているのだけれど、「だから何なの?」と感じてしまう程、ストーリーに全く反映されていない。疋田を嫌っている副署長の曽我辺実(そかべ みのる)というのも、パンチ力に欠ける気が。
疋田達の“推理”には、「此れだけの材料で其処迄判ってしまうというのは、無理が在り過ぎだろう。」と思ってしまう所が在り、白けてしまう。筋立てに、もっと緻密さが欲しい。
「タイトルの『限界捜査』には、どういう意味が在るのだろう?『捜査して行く過程で強大な圧力が掛かり、一旦は捜査に限界を感じるも、最終的に犯人を捕まえる。』といったストーリーなのかな?」等と彼此推測していたのだが、「限界集落」の「限界」を意味しているのを知った時には、申し訳無いけれど、「タイトル付けに、センスが無いなあ。」と感じてしまった。読み終えて、「結局、『限界捜査』って何の事だったの?」と頭を捻った人も居そう。
少なくとも此の小説を読んだ限りでは、安東作品に魅了される部分は全く無かった。総合評価は、星2つとする。