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少年法10条1項:少年及び保護者は、家庭裁判所の許可を受けて、付添人を選任する事が出来る。但し、弁護士を付添人に選任するには、家庭裁判所の許可を要しない。
同条2項:保護者は、家庭裁判所の許可を受けて、付添人となる事が出来る。
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「3年半前、結婚していた相手と別れた。当時、小学生だった息子は、相手が引き取る事に。以降、相手に養育費を払い続ける一方、息子とは定期的に会い続けていたが、部下と親しい関係になって行く中で、息子との会う頻度が低くなっていた。重要な仕事を任せられ、部下からも信頼され、そして親しい関係となった部下との関係も深まって行った或る日、中学2年になった息子が同級生を殺害したとして逮捕された。警察で息子に面会するも、彼は何も話してくれなかった。少年という事で、息子は“少年A”として報道されていたが、ネット上では息子の実名や顔写真等、個人情報が晒され、軈て息子が殺人容疑で逮捕された事が、近所の人達や会社の人間にばれてしまった。」、そういう立場に置かれたら、貴方はどうするだろうか?
「離れて暮らしてはいたが、息子の事は大事に思っている。だから、彼を何としても守りたい。」、「でも、今の立場を思うと、息子が逮捕された事はばれないで欲しい。」、「息子が殺人なんかする訳が無い。でも、だったら何故、息子は何も話そうとしないのか?」、「被害者の家族と、自分はどう向き合えば良いのか?」等々、様々な事に懊悩させられるに違い無い。
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勤務中の吉永圭一(よしなが けいいち)の下に、警察が遣って来た。元妻・青葉純子(あおば じゅんこ)が引き取った息子・翼(つばさ)が、死体遺棄容疑で逮捕されたと言う。然し、翼は弁護士に何も話さない。
吉永は少年法10条に、「保護者自らが弁護士に代わって話を聞ける『付添人制度』が在る。」事を知る。生活が混乱を極める中、真相を探る吉永に、刻一刻と少年審判の日が迫る。
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少年事件を扱った作品を多く著して来た作家・薬丸岳氏が、「付添人」をテーマにした作品が「Aではない君と」。冒頭で記した様に、「自分が吉永の立場になったとしたら。」と想像すると、様々な事で懊悩させられ、「どうすれば良いのか。」と絶望的な思いになってしまう。
非常に重い内容だが、のめり込んで読んでしまった。「恐らくは、こういう方向に展開して行くんだろうな。」と“救われるストーリー”を予想していたのだが、そうでは無かった。心が重くなって行くけれど、世の中にはもっともっと過酷な現実が在ったりもするのだ。
此の作品は3つの章で構成されているのだが、週刊誌に連載されていた際には、第2章で終わっていたのだとか。単行本として上梓される際、第3章を加筆し、修正したそうだ。個人的には「第2章で完結していたら、モヤモヤ感の残る作品になっていただろう。第3章を加筆した事で、“光”が感じられる内容になった。」と思う。
「付添人となって以降、吉永が先輩や部下とどういう関係になって行ったのかが、今一つ良く判らない。」等、不満を感じる点も無い訳では無いが、全体的に言えば“読ませる内容”だ。
総合評価は、星4.5個とさせて貰う。
それが見えて来た方がいいのか、当事者に委ねた方がいいかは分かりませんが、こうして、小説のように、おそらくモデルとなったであろう事件があったのであれば、内部の葛藤も知れた方が、良いように思います。
昨年、川崎市で中学1年の男子が少年達に惨殺された事件は、本当にショックでした。昨日、リーダー格の少年の裁判員裁判が始まりましたが、被害者を死に至らしめる過程が法廷で明らかとなり、改めて其の残忍さに堪らない思いが。
加害者の少年達、特にリーダー格の少年に関しては、以前より其の凶暴さが指摘されていたというのに、一緒に住んでいた家族は一体何をしていたのか?報道される限りでは、彼の無軌道振りを容認する許りか、諌める人達を恫喝する事も在ったとか。こういうのを見聞すると、「加害者だけでは無く、其の家族も責任を負うべきではないか?」と思ってしまう訳ですが、中には何とかしようともがき苦しんでいる親も居る事でしょう。そういう人達をも十把一絡げにしてしまうのは、非常に危険な事で在り、見極めが難しく在ります。