「坂本九氏が歌う『上を向いて歩こう』【動画】が、英題を『SUKIYAKI(スキヤキ)』【動画】としてアメリカで発売した所、同国の音楽業界誌『ビルボード』(1963年6月15日付け)の『Billboard Hot 100』の週間1位を獲得した(全米チャート1位)。」、「“中国で愛される三大昭和歌謡”が、『北国の春』【動画】と『四季の歌』【動画】、そして『昴』【動画】と言われている。」、「渡辺はま子さんが歌った戦時歌謡『愛国の花』【歌】を、インドネシアの初代大統領のスカルノ氏が大変愛し、自らインドネシア語の歌詞を作り、『ブンガ・サクラ(桜の花)』というタイトルにした所、同国で非常に有名な歌となった。」等は、結構知られた話だと思う。
2月3日にBSテレ東で放送された「武田鉄矢の昭和は輝いていた」(「昭和」という時代を扱う歴史情報番組。)では、2時間SPとして「世界に愛される昭和歌謡」の数々を取り上げていたのだが、知らない事実が結構多く、とても面白かった。
所謂“昭和歌謡”が、世界で大きく取り上げられた端緒は“古賀メロディー”だったと言う。昭和初期、日本で活躍していたアメリカ人歌手のバートン・クレーン氏が、古賀政男氏が作曲した作品のレコードをアメリカに持ち帰った事で、古賀メロディーの素晴らしさが同国で広まって行った。
1938年にはグレース・ムーアさんが「酒は涙か溜息か」【動画】を、そしてリリー・ポンスさんが「二人は若い」【歌】をと、当時の人気ソプラノ歌手がカヴァーした事で、古賀メロディーは好評を得る。同年、古賀氏は“音楽親善大使”として渡米。翌年の1939年8月31日、アメリカを代表するラジオ局「NBC」で、古賀メロディーが全世界に向け、15分間も放送されたそうだ。「上を向いて歩こう」が全米チャート1位に輝く、約24年も前の事だというから凄い。
ザ・ピーナッツが1963年に歌ったヒット曲「恋のバカンス」【動画】は、ソ連で誰もが知る歌だったとか。
当時、ソ連の国家テレビ・ラジオ委員会の東京特派員が、此の歌を甚く気に入り、本国に持ち帰り、1965年に人気歌手のニーナ・パンテレーエワさんがロシア語歌詞で歌った所、大ヒット。“鉄のカーテン”が敷かれ、ソ連の内情に付いて、日本では殆ど情報が得られなかった時代に、そんな事が在ったというのは驚き。「『恋のバカンス』は、ソ連の歌。」と認識するソ連人(ロシア人)が多かった(多い)。」というのも、面白い話だ。
カンボジアで愛される昭和歌謡には「ここに幸あり」【動画】、「骨まで愛して」【動画】、「潮来笠」【動画】、「港町ブルース」【動画】、「長崎は今日も雨だった」【動画】、「達者でナ」【動画】等が在る。此れ等の歌が日本でヒットしていた当時、カンボジア系中国人が台湾や香港経由でカンボジアに持ち込んだのだが、中国人歌手が歌ったりしていたので、“中国の歌”と勘違いしている人も少なく無いとか。
又、三橋美智也氏が歌う「達者でナ」は、「愛情を懸けて育てた馬を売りに出し、そして見送る農民の心情を歌った作品。」だが、カンボジアでは「歌詞が、ラヴ・ソングに変えられている。」と言う。
1968年、いしだあゆみさんが歌った「ブルー・ライト・ヨコハマ」【動画】は大ヒットを記録したが、此の歌は「当時“軍事政権下”に在り、『日本の歌を聞く事も、歌う事も禁止されていた韓国で、広く知られて行った。」とか。何しろ日本文化の流入が厳しく禁じられていた時代なので、人々は「ラベルが真っ白(曲目も歌手名も記されていない。)な“海賊版”のレコード。」にて、「ブルー・ライト・ヨコハマ」を聞いていた。「何も記されていないのに、何で『ブルー・ライト・ヨコハマ』って判るの?」と疑問を持たれ様が、「真っ白なラベルには、『ヨコハマ』の『ヨ』を意味するハングル語だけが記入されていたので、其れで見分けた。」そうだ。
当時、韓国の人々は「経済的に急成長を続ける日本に対し、強い対抗と同時に憧れを持つという複雑な感情が在り、加えて軍事政権によって自由な芸術活動が出来ない事への反発も在った。」事が、同国への昭和歌謡流入の下地となっていた。
でも、少なからず流入した昭和歌謡の中から、どうして「ブルー・ライト・ヨコハマ」が、韓国の人々に断トツで愛されたのか?理由は幾つか在ろうが、番組では“曲自体の魅力”を指摘していた。
此の歌で“人気作曲家”の仲間入りをした筒美京平氏。時代時代に斬新な曲調を生み出して来た彼だが、「ブルー・ライト・ヨコハマ」でも斬新さを発揮。音楽用語に「アウフタクト(弱起)」というのが在り、其れは「楽曲が、第1拍から始まる。」事を意味し、「ブルー・ライト・ヨコハマ」には、此のテクニックが使われていると言う。こう書いても良く意味が判らないと思うので、簡単に書くと「『当時の歌は、低い出出しで始まり、徐々に上がって行くという曲調。』が一般的だったのに、『ブルー・ライト・ヨコハマ』は高い出出しで始まり、下がって行くというアウフタクトのテクニックが使われている。」のが斬新だったと。
今回のSPを見て、「そう言われてみれば、『恋のバカンス』の曲調って、ロシア民謡に似ているなあ。」と思ったのだが、世界に愛される昭和歌謡の多くは、其れが流行った国の“土着の音楽”に雰囲気が似た物が多い気がする。