ば○こう○ちの納得いかないコーナー

「世の中の不条理な出来事」に吼えるブログ。(映画及び小説の評価は、「星5つ」を最高と定義。)

「オオルリ流星群」

2022年05月09日 | 書籍関連

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彼の時の面子、今、皆此方居るみたいだぜ。」。「まさか、スイ子か?何で又?」。

スイ子、山際彗子(やまぎわ けいこ)が、秦野市に帰って来た。手作りで、太陽系の果てを観測する天文台を建てると言うのだ。28年振りの再会を果たした高校時代の同級生・種村久志(たねむら ひさし)は、嘗ての仲間達と共に、彗子の計画に力を貸す事に。

高校最後の夏、協力して巨大な大瑠璃柄のタペストリー制作した日々に思いを馳せるが、天文台作りを切っ掛けに、彼の夏に起きた事の真実が明らかになって行く。其れは決して、美しいだけの時間では無かった。

そして久志達は、屈託多き“今”を、自らの手で変える事が出来るのか?
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伊与原新氏の小説オオルリ流星群」は、「45歳となり、其れ其れが人生に行き詰まりを感じている高校時代の同級生達が、“小さな私設天文台”を建てる事に協力して行く過程で、忘れていた大事な物を思い出し、そして少しづつ夢を取り戻して行く。」というストーリー。こう書くと、「小説に在り勝ちな、御都合主義の話だろ。」と思われるかも知れない。でも、ストーリーを構成する“素材”、特に天文に関する事柄がとても詳細に記されているのでリアリティーが在り、御都合主義な感じはしない

高校時代の同級生の夢に協力する同級生達。彼等に共通するのは、「28年前の高校時代、9月の文化祭で作り上げた巨大なタペストリーを、共に制作した“仲間”。」という点。見返りが得られる訳でも無い事に、一心不乱に取り組んだ彼の時。其の経験は彼等の心の中に、28年経っても消える事の無い“”を残していたのだろう。

伊与原氏の作品を読むのは今回が初めてだが、彼の経歴を見ると「神戸大学理学部地球科学科卒業後、東京大学大学院理学系研究科博士課程修了。専門は地球惑星物理学。」と記されている。道理で天文に関する事柄を、詳細に記せる訳だ。

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久志の星は、目的地ではなく、北極星のようなものだ。自力で道を切り拓くことなどできない自分が、何とか迷子にならずに歩いていくための、道しるべ、つまらないだと人は言うかもしれないが、星は星だ。

四十五歳になった今の自分たちは、「星食」のときを生きているようなものなのかもしれない。それを頼りに歩いていけばいいと思っていた星が、突然光を失い、どこにあるかわからなくなってしまった。その星と自分たちとの間を、別の天体が横切っているのだ。

けれど「星食」は、いずれ終わる。そのときは、見失った星をまたさがしてもいいし、別の星を見つけて生きていってもいい。
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「人生に行き詰まりを感じている人。」、「学生時代に持っていた“熱さ”を、少しでも思い出したい人。」、「夜空の星々に、感慨覚える人。」等が、此の作品を読んだら、グッと来る物が在ると思う。又、知らず知らずの内に涙腺が緩んでしまったら、其の涙は“心の汚れ”を洗い落とす事だろう。

総合評価は、星4つとする。


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