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「秘密保護法 言わねばならない事 ~国民の良識を信じよ~ 作家・浅田次郎氏」(1月3日付け東京新聞【朝刊】)
政府・与党が彼程強引に、特定秘密保護法を成立させるとは思わなかった。数に物を言わせて世論の反対を押し切るのは、政党政治の危機だ。
秘密保護法は、罰せられる内容も人も範囲が広過ぎる。秘密を守るなら、情報を漏らす人を罰するだけで充分だ。其の為の法律は既に在り、一般国民に迄罰を及ぼすのは筋が違う。
政府は「市民が罰せられる事は無い。」と説明し、本当にそう考えているのかもしれないが、問題は法律が将来、悪用出来る書き方になっている事だ。30年後、40年後に悪用された時、今の政治家は責任を取れるのか。未来の事を考えたら、廃止すべきだ。
世論を軽視し、国民に罰を科す法律を作ったのは、政治家が国民を信じていない事の表れだろう。政府・与党には「愚民思想」が在る様に感じる。自民党の石破茂幹事長が、デモとテロを同一視する様な発言をしたのが象徴的だ。
明治-昭和初期は、政治家が国民を見下す様な事は無かった。国民の苦労を知る政治家が多かった。今は裕福に育ったエリート許りで、政治が劣化した。
私は陸上自衛隊に所属した経験を基に作品を書いた事が在るが、書けなくなるかもしれない。内容に問題が無くても、政府が私を邪魔だと思えば、身柄拘束出来る法律になっている。
小説家だって、知った事を全て書く訳では無い。書いても国の為にならないと思う事は、書かなかったり、表現を曖昧にしている。我々国民は、其の位の常識は持ち合わせている。政治家は、国民の良識を信じて欲しい。
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「政治家は、全て駄目。」と言う気は毛頭無い。中には、評価出来る人物も居る。だが哀しい哉、「国民の事を真剣に考え、行動している政治家。」は少ないのが現実だろう。余りにも問題が多過ぎる「特定秘密保護法案」に賛成した政治家の中には、「何だか良く判らないけれど、賛成しておいた方が、政府に重用して貰えそう。」という私欲だけを優先させた者も多そうだし。
「政治が劣化した。」という背景には、世襲政治家が増え過ぎたというのが在ると思っている。世襲政治家に関しても「全て駄目。」という気は無いけれど、5年前の記事「世襲議員」でも記した様に、弊害が多いからだ。
フランス革命前に民衆が貧困と食料難に陥り、怨嗟の声を上げている事を聞いたマリー・アントワネット王妃が、「(食べる)パンが無ければ、ケーキを食べれば良いじゃない。」と言い放ったと言う。「実際には、そんな事は言わなかった。」という話も在るけれど、「恵まれた“殻”のだけで生きて来た人達には、“其れ以外の世界”は判り得ない。」という面は在ると思う。
“裕福に育ったエリート許り”が(与野党を問わず)政界を動かしており、尚且つ其の「エリート」というのが、単に「多くの政治家を輩出している家系に属している。」という“だけ”で、肝心な御頭がすっからかんな連中が結構見受けられたりする。そんな連中もが「愚民意識」を持ち、“暴走”しているのだから、実に怖い話だ。
若い人たちと接していると、
自分はホームレスにはなるはずがない、障碍者になるはずがない
と思い込んでいるんですよね。
>「恵まれた“殻”のだけで生きて来た人達には、“其れ以外の世界”は判り得ない。」
これでは世の中、うまく回すことなんてできやしません。
なんでここまで頭が使えない人が大手を振ってるんですかねえ。
特別な環境に育っても、周りの「悪しき部分」を反面教師とし得るか、其れとも心地良い物として取り入れてしまうか、人によって異なるのでしょうね。良家の子女でも、千差万別なのでしょうが、残念乍ら我が国の現トップは、「自らが心地良さを覚える選択肢しか、選び得ない人間。」の様な感じがします。
どんな主義&主張を持とうと、“原則的には”個人の自由。でも、一国のトップたる人間の場合は、自ずと制限される部分も在る筈。自刃の“趣味”を押し通す事に汲々とし、国民を顧みないのだとしたら、国民は不幸としか言い様が無い。
若い人のみならず、「想像力」が著しく欠如している様な人が、我が国には急増している様な気がしてなりません。何等かの具体的な根拠が在った上での主張ならばいざ知らず、全くの無根拠で、感覚的に「在り得ない。」と言い切ってしまう人達が、何と多い事か。以前にも書いたけれど、「世の中に『在り得ない。』と断言出来る事柄なんて、其れこそ在り得ない。」し、過去の歴史を見れば、拡大解釈等によって「在り得ないと考えられていた事柄」が、普通に在り得てしまった事なんて枚挙に遑が無いのですから。
夕刊紙で安倍首相の“御友達”の百田尚樹氏が、「救国の人は安倍首相しか居ない!」といった感じで、歯の浮くような御追従を書き連ねていました。特定秘密保護法に付いても、僅か乍らの懸念を書いてはいるものの、「条文を読めば、言論統制なんか出来る訳が無い。左巻き連中の陰謀だ。」みたいな指摘。「貴方、本当に物書きなの!?古今東西の歴史を顧みれば、条文なんて幾らでも拡大解釈して、言論統制等、国民を縛り上げた例は幾らでも在るでしょ?そんな事も想像出来ないのでは、物書きとしてどうなの?」と、申し訳無いけれど思いました。
>政府は「市民が罰せられる事は無い。」と説明し、本当にそう考えているのかもしれないが、問題は法律が将来、悪用出来る書き方になっている事だ。30年後、40年後に悪用された時、今の政治家は責任を取れるのか。
この法案を策定した人々は、権限を行使される側には性悪説をとっているのに、権限を行使する側には性善説をとっているように思います。その権限を行使するのが別の人だったとしても濫用されず、被害を最小限で抑えられる対策を講じる必要がある。
>想像力の欠如
よほどのことが起きない限り安泰でいられる階層の人や、自分の頑張りや能力・価値観を恃みにして人を批判したり排除したりする傾向のある人が、自分たちやそれに準ずる人たちを標準にした政策を主張しているなあと感じます。
また、「下の人が上からの理不尽な要求などに対して断ったり、他の人が反対してくれたりしたときに、彼らに対して非難したり害をなしたりするのは、不条理に対して憤ったり置かれた状況を嘆いたりするはずの同じような立場の人」という風潮が強くなっている昨今なので、さらに危惧を感じます。
ぷりな様が書かれている様に、何か変な風潮が蔓延り出している気がしますね。突き詰めると、「自分とは少しでも異なる対象を、徹底的に排除するという思考。」が、日本のみならず世界中に広がっている感じが。各国で見受けられる「移民排除」なんていうのも、其の表れかと。