8年前、「『人間が生き物の生き死にを自由にしようなんて、おこがましいとは思わんかね。』」という記事を書いた。大好きな漫画「ブラック・ジャック」には名台詞が数多く在るが、中でも一番印象に残っているのが、此の台詞だ。
「自分の腕に絶対的な自信を持つブラック・ジャックが、命の恩人・本間丈太郎の命を救うべく、手術に臨む。しかし、必死で取り組んだにも拘わらず、本間は帰らぬ人となってしまう。絶望感に打ち拉がれ、石段に座り込むブラック・ジャック。其の背後には在りし日の本間の姿が描かれ、彼から掛けられた言葉として、最終齣に描かれている。」のだけれど、「あらゆる生物の中で、人間は万能な存在。」という思い上がりに対する、痛烈な否定と言える。
東京新聞の夕刊には、「紙つぶて」というコラムが連載されている。2月10日付けの紙面には、静岡大学大学院教授の稲垣栄洋氏が、「空を仰ぐ生き方」というタイトルで文章を書いておられる。其れを読んで思い浮かんだのが、「人間が生き物の生き死にを自由にしようなんて、おこがましいとは思わんかね。」という台詞だった。
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「空を仰ぐ生き方」
「植物は、どうして動かないのでしょうか?」。そう質問される事が在ります。しかし、其れは人間の一方的な見方です。抑、どうして動かなければならないのでしょうか。太陽の光で光合成を行う植物は、動き回る必要が在りません。一方、動物は食べ物を捜して、動き回らなければ生きて行く事が出来ないのです。「どうして動物は動いているのか?」と、植物は不思議に思っている事でしょう。
「植物は脳が無いのに、どうやって生きているのか?」と聞かれる事も在ります。決して人間の生き方が、当たり前という訳では在りません。情報を1つの頭脳に集めて処理するシステムは、生き物の中では少数派です。
私達人間は横を見て暮らしていますが、植物は上を見て生きています。植物は常に、太陽に向かって伸びて行きます。降り注ぐ陽光、青く澄んだ空、流れる雲、恐らくは、此れが植物達の見ている光景です。
人間は横を見ているので、余計な物が目に入ります。そして、頭が良過ぎる所為か、時に思い悩み、時に間違えてしまうのです。
偶には空を見上げて、植物の気持ちになってみるのも悪く無いかも知れません。俯いている植物は無いのです。
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