昨年度のミステリー・ランキング(「本格ミステリ・ベスト10」、「このミステリーがすごい!」&「週刊文春ミステリーベスト10」)で特に気になった作家は道尾秀介氏だった。ミステリー大好き人間を自称しておきながら、この作家の存在を全く知らなかったというのは全く以って不勉強の到り。彼の作品「シャドウ」が3つのベスト10(国内編)全てに入選しているだけでも凄いのに、「本格ミステリ・ベスト10」に到っては彼の他の2作品も入選しているのだから、これはデビューから2年しか経っていない作家としては快挙とも言えるだろう。
昨年末、ベスト10入りしていた彼の作品から「向日葵の咲かない夏」をチョイスして読んでみたのだが、やや期待外れの感が正直在った。そこで、3つのベスト10全てに入選した「シャドウ」にて彼の真価を探ってみる事とした。
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「人間は死んだらどうなるの?」「居なくなるのよ。」「居なくなって、どうなるの?」「居なくなって、それだけなの・・・。」
幼き鳳介とそんな会話を交わした3年後に、彼の母は病にて天国に召されてしまう。父の洋一郎と小学5年生の鳳介という二人だけの生活が始まって数日後、幼馴染の亜紀の母が、夫の徹の職場で在る医科大学研究棟の屋上から飛び降り自殺を遂げ、残された遺書には徹を責める言葉が記されていた。そして亜紀が交通事故に遭ったばかりか、洋一郎迄もが・・・。
鳳介の脳裏に時折浮かぶ謎の光景が意味するものは?父とのささやかな幸せを願う鳳介が、苦悩の果てに辿り着いた驚愕の真実とは?
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昨年は、3つのベスト10の1位(国内編)が全て異なっていた。「本格ミステリ・ベスト10」は有栖川有栖氏の「乱鴉の島」、「このミステリーがすごい!」は平山夢明氏の「独白するユニバーサル横メルカトル」、そして「週刊文春ミステリーベスト10」は宮部みゆき女史の「名も無き毒」といった具合にだ。ミステリー好きのブロガー諸氏の書評ではこの「シャドウ」を絶賛しているものが結構見受けられ、中には「『シャドウ』がミステリー・ランキングの1位じゃないのは理解出来ない。」という声も在った。自分は実際に1位となった上記3作品を未読な為比較は出来無いのだが、純粋に「シャドウ」という作品が1位に選ばれてもおかしくない出来だとは思った。
確かに一寸無理を感じる設定が無い訳では無い。自分と同年代の方ならば理解して貰えるとは思うが、嘗ての人気ドラマ”赤いシリーズ”の様に、「偶然知り合った見ず知らずの男女。彼等はやがて恋に落ちるも、その後に腹違いの兄妹で在る事を知らされ苦悩する。」といった具合の無理さ加減に似ているかと。それに同じ著者の作品「向日葵の咲かない夏」でも感じたが、主人公の少年の年齢を考えると余りにも大人過ぎる思考の様に思え、その辺がやや非現実的に感じてしまう。
しかしながら二転三転どころか四転五転する設定、そしてその為の伏線の張り方は御見事!ストーリーの中で画家のエドヴァルド・ムンクの代表作「叫び」(今回使用した画像。)と、その油絵版にムンク自身が書き込んだとされる「狂人だけがこの絵を描ける。」という言葉が登場するのだが、最後の”種明かし”で「そういう意味合いだったのか。」と思わず独り言ちてしまった程の上手い使い方。
読後に爽快感を覚える内容では無いものの、ミステリーとしては読み応えの在る作品ではなかろうか。総合評価は一寸おまけして星4つ。
昨年末、ベスト10入りしていた彼の作品から「向日葵の咲かない夏」をチョイスして読んでみたのだが、やや期待外れの感が正直在った。そこで、3つのベスト10全てに入選した「シャドウ」にて彼の真価を探ってみる事とした。
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「人間は死んだらどうなるの?」「居なくなるのよ。」「居なくなって、どうなるの?」「居なくなって、それだけなの・・・。」
幼き鳳介とそんな会話を交わした3年後に、彼の母は病にて天国に召されてしまう。父の洋一郎と小学5年生の鳳介という二人だけの生活が始まって数日後、幼馴染の亜紀の母が、夫の徹の職場で在る医科大学研究棟の屋上から飛び降り自殺を遂げ、残された遺書には徹を責める言葉が記されていた。そして亜紀が交通事故に遭ったばかりか、洋一郎迄もが・・・。
鳳介の脳裏に時折浮かぶ謎の光景が意味するものは?父とのささやかな幸せを願う鳳介が、苦悩の果てに辿り着いた驚愕の真実とは?
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昨年は、3つのベスト10の1位(国内編)が全て異なっていた。「本格ミステリ・ベスト10」は有栖川有栖氏の「乱鴉の島」、「このミステリーがすごい!」は平山夢明氏の「独白するユニバーサル横メルカトル」、そして「週刊文春ミステリーベスト10」は宮部みゆき女史の「名も無き毒」といった具合にだ。ミステリー好きのブロガー諸氏の書評ではこの「シャドウ」を絶賛しているものが結構見受けられ、中には「『シャドウ』がミステリー・ランキングの1位じゃないのは理解出来ない。」という声も在った。自分は実際に1位となった上記3作品を未読な為比較は出来無いのだが、純粋に「シャドウ」という作品が1位に選ばれてもおかしくない出来だとは思った。
確かに一寸無理を感じる設定が無い訳では無い。自分と同年代の方ならば理解して貰えるとは思うが、嘗ての人気ドラマ”赤いシリーズ”の様に、「偶然知り合った見ず知らずの男女。彼等はやがて恋に落ちるも、その後に腹違いの兄妹で在る事を知らされ苦悩する。」といった具合の無理さ加減に似ているかと。それに同じ著者の作品「向日葵の咲かない夏」でも感じたが、主人公の少年の年齢を考えると余りにも大人過ぎる思考の様に思え、その辺がやや非現実的に感じてしまう。
しかしながら二転三転どころか四転五転する設定、そしてその為の伏線の張り方は御見事!ストーリーの中で画家のエドヴァルド・ムンクの代表作「叫び」(今回使用した画像。)と、その油絵版にムンク自身が書き込んだとされる「狂人だけがこの絵を描ける。」という言葉が登場するのだが、最後の”種明かし”で「そういう意味合いだったのか。」と思わず独り言ちてしまった程の上手い使い方。
読後に爽快感を覚える内容では無いものの、ミステリーとしては読み応えの在る作品ではなかろうか。総合評価は一寸おまけして星4つ。
絵を描くのは大の苦手なのですが、鑑賞するのは結構好きです。一昔前に刊行されていた「週刊グレート・アーチスト」も全巻揃え、今でも時々見返している程。画家が違えばこれ程迄に表現が異なるものかと、見ていて楽しいです。
ムンクの「叫び」と言えば、自分が学生の頃の美術の教科書には必ず載っていて、多くの生徒が一度はあのポーズを取ったのではないでしょうか。構図的にも非常に不安な感情を誘発させる絵です。
バブル期には大手企業が、こぞって美術品を高値で買い漁っていましたね。あの頃は多くの人が金銭感覚を麻痺させられていた様に思います。