8年前の記事「老舗」で、「老舗と呼ばれる様な店ですら、閉店する所がちらほら出ている。」と記したけれど、此の3ヶ月だけでも近場で、昔から愛されて来た店が4店舗閉店している。地元民としては、寂しい話だ。
地元の情報を取り上げたサイトを見ていると、去年辺りから近場の店舗の閉店情報が目に付く様になった。多いのは飲食店。中には立地条件が良く、繁盛していた様に見えた店も。「店主が高齢となり、後継者も居ないので。」とか「同業の大手チェーンが近くに進出して来て、売り上げが大幅に下がったので。」等、閉店に到った理由は色々在ろうが、「商売が時代に合わなくなり、採算が取れなくなったので。」というのも結構在る様に感じる。
「手に職を付けていれば、一生食いっ逸れが無い。」と、昔は良く言われた。でも、手に職を付けていても、今では生計を立てるのが厳しい物も珍しく無い。
嘗ては“飛ぶ鳥を落とす勢い”の企業が、今じゃあガタガタになってしまっている事も。東芝なんぞは、そんな典型だろう。
2月20日付けの「まぐまぐニュース!」に、「カメラのキタムラ129店閉鎖の衝撃。街の写真屋を殺したのは誰か」という記事が載っていた。昭和9年、高知市で「キタムラ写真機店」として創業した「カメラのキタムラ」。全国展開する事となった同社だが、先日、「全体の約1割に当たる129店舗を閉鎖する。」と発表。主力の「カメラのキタムラ」と写真館「スタジオマリオ」を中心に、閉鎖を順次進めるそうだ。
昨年の熊本地震の影響で、デジタルカメラ等の減産や写真のプリントの低迷が続き、業績は悪化。2017年3月期の連結業績予想を下方修正し、売上高は当初計画より263億円減少(15.8%減)の1,405億円、連結営業損益は16億円の赤字、連結最終損益が24億円の赤字に。大量閉店により、約13億円の特別損失が計上されるそうだ。
唯、大量閉店に踏み切った“直接的な理由”が昨年の熊本地震に在るにしても、“間接的な理由”の方が影響大だろう。カメラ関連製品を主に販売し、成長して来た同社。1997年~2000年迄、フィルムを使用するカメラ(銀塩カメラ))の総出荷金額が3,000~4,000億円と長らく大きな変動が無かった時代は、安定経営が続いていた。
然し、デジタルカメラの普及により、2001年以降は売り上げが大きく落ち込み始める。2000年の総出荷金額は3,020億円だったのに、翌2001年は2,398億円と、約20.6%も落ち込んだのだ。そして、2002年には2,000億円に迄。
其の後、デジタルカメラ市場は急拡大するも、勢いは長くは続かなかった。2008年の総出荷金額は2兆1,640億円に迄達するも、2009年からは急速に落ち込み、2015年には8,854億円に迄減少。急速に落ち込んでいった理由として、「リーマン・ショックに端を発した景気後退の影響」に加え、「スマートフォンの普及」が挙げられる。「カメラでは無く、スマホで写真を撮る時代。」となり、デジタルカメラは衰退して行く事に。
其処でカメラのキタムラは、スマホの販売強化を打ち出して行くのだが、此れが上手く行かなかった。カメラに慣れた既存の従業員では対応が難しく、スマホを販売出来る従業員の採用が必要となり、結果として人件費の上昇を齎したからだ。売上高に占める「給与及び手当」が占める割合は、2008年3月期が8.8%だったのに対し、2016年3月期は12.2%に迄上昇。右肩上がりで上昇して行く人件費が、経営をどんどん圧迫。
又、SNSの普及により、写真をプリントする機会が激減した事も、カメラのキタムラの経営を苦しくさせた。2008年3月期の同社のプリントは、前年比31.9%増の563億円も在ったが、翌年から低迷し、2016年3月期には425億円に迄落ち込んだとか。
時代が幾ら変わっても、絶対に変えてはならない“軸”が在る。でも、“時代の波”に合わせ、変えていかなければならない部分も在る。其れを経営者は、確りと見極めなければならない。栄枯盛衰は世の常とはいえ、商売は本当に難しい物だと思う。
一人の消費者として、確かにデジタル化で恩恵を受ける点は決して少なくないけれど、アナログが消えていく一抹の寂しさを覚えるのは、自分の青春時代と重なるが故のノスタルジーなのかなあ。
最近リサイクル・ショップで安価なレコードプレイヤーを買ってきて、手元に残してあったわずかなレコードを聴いています。
これもデジタル化して残すのが目的ですが、CDやMP3を聴き慣れた耳には、レコードのプチプチとしたノイズも懐かしく、温かみのあるように感じる音に癒されています(笑)。
「場所を取らない。」とか「安価に購入出来る。」等のメリットは認めるものの、本は矢張り“紙に印刷された物”が良いです。紙&インクの匂い、手触り、表紙等に描かれたイラスト等、古くから親しんで来た物を、此の年になって変えたくは無い。
音楽に精通した人は、「レコードとCDとでは音が違う。」と言いますね。「レコードの方が、高音域を拾う。」という主張に対して、CD派の人は「そんな高音域、若者じゃないと聞こえないから無意味。」と。素人の立場からすると、レコードの方が「ぼやけた感じの、何とも言えない温かみが感じられる。」ので、CDよりも好き。
一時期は絶滅寸前だったレコードも、近年は若者を中心に愛好者が増加し、レコード針製造会社の老舗「ナガオカ」も製造を増やしているとか。