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ミステリアスで美しい水上の迷宮都市ヴェネツィア。流浪の日々を送る名探偵エルキュール・ポアロ(ケネス・ブラナー氏)は、「死者の声を話す事が出来る。」という霊媒師のトリックを見破る為に、子供の亡霊が出るという謎めいた屋敷での降霊会に参加する。
然し、其処で招待客の1人が、人間には不可能な方法で殺害される事件が発生。犯人が実在するかさえ不明な殺人事件に戸惑い乍らも、真相究明に挑むポアロだったが・・・。
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“ミステリーの女王”と呼ばれるアガサ・クリスティ―女史。彼女は長編小説66作を始めとして、全248作を著したとされるが、エルキュール・ポアロとミス・マープルは彼女が創作した有名な二大名探偵だ。
エルキュール・ポアロを主役にした映画は、1970年代から1980年代に掛けて次々と製作された。「オリエント急行殺人事件」(1974年)、「ナイル殺人事件」(1978年)、「地中海殺人事件」(1982年)、そして「死海殺人事件」(1988年)の4作。ミステリーが大好きで、アガサ作品を全て読んだ自分なので、此の4作品は全て映画館で観た。
俳優のケネス・ブラナー氏がエルキュール・ポアロに扮し、映画監督と製作も担当した「オリエント急行殺人事件」(2017年)と「ナイル殺人事件」(2022年)。自分は共に映画館で観て、共に総合評価「星3.5個」とした。
今回は彼がエルキュールポアロ役に扮し、映画監督と製作も担当した第3弾「名探偵ポアロ:ベネチアの亡霊」を観て来た。此の作品は「ハロウィーン・パーティー」を原作としているが、勿論原作は読んでいるし、TVドラマ・シリーズ「名探偵ポワロ」でも今夏、「ハロウィーン・パーティー」というタイトルで放送されたのを見ている(過去にも見ているが。)。なので、ストーリーも真犯人もトリックも知っているが、「どういう風に映像化されるのか?」に興味が在った。
「オリエント急行殺人事件」や「ナイル殺人事件」と比べると、「ハロウィーン・パーティー」という作品は地味さを否めない。だから、「敢えて『名探偵ポアロ:ベネチアの亡霊』という全く無関係なタイトルに変更する事で、アガサ作品ファンを含めた多くの人の耳目を集める戦略に出たのでは?」という気がする。
交霊術を扱っている事も在り、中盤位迄は“オカルト的な雰囲気”が漂っている。そういう類いの事を全く信じていないポアロなのに、オカルト的な雰囲気に振り回され「大丈夫か?」と不安になってしまうが、後になって「どうして、そういう事になったのか?」が明かされ、「成る程。」と納得する観客も多い事だろう。
「どんなに近しい(と思われる)人で在っても、常に疑って掛かれる様で無いと、名探偵にはなれない。」とミステリーを読んでいて良く思うのだが、今回の「名探偵ポアロ:ベネチアの亡霊」で、其の思いを強くした。名探偵とはしんどい商売で在り、人間不信になりそう。
中盤位迄は「大丈夫か?」と不安を感じさせたポアロだが、終盤には“立て板に水”といった感じで淀み無く、完璧に真相を明らかにして行く。流石、名探偵だ。
とは言え、全体的にどうしても地味さを感じてしまう。「オリエント急行殺人事件」や「ナイル殺人事件」と比べるとトリック面で今一つだし、何よりも「設定の豪華さに欠ける。」ので。
総合評価は、星3つとする。