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離婚した許りの元美容師・太郎(たろう)は、世田谷に在る取り壊し寸前の古いアパート「ビューパレス サエキⅢ」に引っ越して来た。或る時、同じアパートに住む女・西(にし)が、塀を乗り越え、隣の家の敷地に侵入し様としているのを目撃する。注意し様と呼び止めた所、太郎は女から意外な動機を聞かされる。
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第151回(2014年上半期)芥川賞を受賞した小説「春の庭」(著者:柴崎友香さん)。本の帯に記された惹句には「『隣の女』に誘われた小さな冒険。何気無く通り過ぎていた、何時もの街‐。其処には、深く静かな歓びが埋まっていた。」と在り、「どんな内容なんだろう?」と興味がそそられた。
実際に読み始めてみると、余りにも詰まらなくて、読み進めるのが苦痛な内容。ミステリーの様な〝意外性”を求めてはいないけれど、登場人物達の日常を、唯だらだらと書いているだけといった感じ。
登場人物達に魅力が無く、感情移入も出来ないし、ずっと“太郎の視点”で描かれていたのが、最後になって少しだけ“太郎の姉の視点”に切り替わる意味合いも良く判らない。
意味合いが判らないと言えば、其の最たる物は、最後の最後に登場する“撮影シーン”。“女優”の正体も含め、「著者は何を言いたいが為に、こんなシーンを入れたのか?」が、全く理解不能。
第150回(2013年下半期)芥川賞を受賞した小説「穴」のレヴューで「近年の芥川賞受賞作品が駄作続き。」と記したが、其の思いを更に深めた。
総合評価は、星2つ。
“「”の出っ張った所」、自分も最初に読んだ時は「?」と思いました。頭の中で形を描いてみて、「嗚呼、そういう事か。」と何と無く判りましたが、もっと判り易い表現が在りそうなもの。
或る意味、小説って“無駄な部分”が在って良いと思うのですが、其れにしても此の「春の庭」には、「意味が不明過ぎて、無駄としか思えない記述。」が多いですね。「此の記述って、何か意味が在るのかなあ?登場人物の心理描写とか、設定に意味を与えているのだろうか?」と思って読み進めたら、結局、何の意味も無かったというのも在りましたし。
芥川賞受賞作という事で無かったら、恐らくは手に取る事が無かったろうし、手に取って読み始めても、余りの詰まらなさに途中で読むのを止めてしまったと思います。