2012年、小説「体育館の殺人」で第22回鮎川哲也賞を受賞した青崎有吾氏。当時、明治大学に在学中だった彼は、“鮎川哲也賞史上初の平成生まれの受賞者”となった。ロジカルな推理を基本とした作風から、彼は“平成のエラリー・クイーン”とも呼ばれている。
今回読了した「水族館の殺人」は、「体育館の殺人」で文壇デビューした彼にとって、第2作目に当たる。奥付を見ると「2013年8月16日 初版」となっているから、刊行されたのは1年以上前の事。
*********************************
夏休みも中盤に突入し、風ヶ丘高校新聞部の面々は、「風ヶ丘タイムズ」の取材で市内の穴場水族館「横浜丸美水族館」に繰り出した。館内を館長・西ノ洲雅彦(にしのす まさひこ)の案内で取材していると、檸檬鮫の巨大水槽の前で、驚愕のシーンを目撃。水槽内に海豚の飼育員・雨宮茂(あめみや しげる)が落下し、檸檬鮫に喰い付かれてしまったのだ。
駆け付けた神奈川県警の仙堂(せんどう)と袴田優作(はかまだ ゆうさく)が、関係者に事情聴取して行くと、全ての容疑者に強固なアリバイが・・・。
仙堂と袴田は仕方無く、袴田の妹・柚乃(ゆの)に連絡を取った。彼のアニメオタクの駄目人間・裏染天馬(うらぞめ てんま)を呼び出して貰う為に。
*********************************
風ヶ丘高校内の“開かずの部室”に住み着き、変人中の変人なのだけれど、抜群の推理力を有する裏染天馬が、「体育館の殺人」に続いて謎を解く。彼の隠された過去が少しづつ明らかになって行くというのも、「水族館の殺人」の売りだろう。
「人の名前が、中々覚えられない。」というのが、自分の欠点の1つ。特に外国人の名前を覚えるのが苦手で、其れ故に海外のミステリーは積極的に読む気がしない。(アーサー・コナン・ドイル氏とアガサ・クリスティー女史の作品は例外だが。)だから、登場人物が多く、尚且つ容疑者が11人も居る「水族館の殺人」は、登場人物の名前と其の設定を覚えるのが一苦労だった。
又、ロジカルな推理を基本とした作風という事から、謎解きの面で「ん、どういう事?」と何度か読み返さないと理解出来ない所も在り、其の点でも読了に時間を要した。
そういう難儀さは在ったものの、謎解きで「そういう事だったのか!」という驚きが幾つも在り、高い評価は与えられる。唯、何度も何度も読み返したのだが、天馬が謎解きをする場面で、1つだけ“誤り”が在る様に思え、其れが残念。348頁の「まず犯人は十時五十分以降」という部分がそうで、此れは「九時五十分以降」が正しいと思う。自分が読んだのは上記した様に「初版」なので、もしかしたら以降の「版」では訂正されているのかもしれないが・・・。