ば○こう○ちの納得いかないコーナー

「世の中の不条理な出来事」に吼えるブログ。(映画及び小説の評価は、「星5つ」を最高と定義。)

「愛と誠」

2012年07月02日 | 映画関連

自分(giants-55)が属する世代を「~で育った世代」という表現で表すならば、「アニメで育った世代」や「特撮で育った世代」、「歌謡曲で育った世代」等が挙げられる。そして「梶原一騎作品で育った世代」というのも、忘れてはいけないだろう。

 

漫画原作者としての梶原氏が世に生み出した作品は「空手バカ一代」、「タイガーマスク」、「巨人の星」、「侍ジャイアンツ」、「あしたのジョー」、「キックの鬼」等々、枚挙に遑が無い。「努力と根性で直向きにスポーツに取り組み、様々な艱難辛苦を乗り越え、人間として成長して行く。」というのが所謂スポ根作品」だが、梶原氏は「スポ根作品」という分野を確立させたパイオニアと言って良い。彼の漫画、そして其れを原作としたアニメを当時の子供達は夢中になって見たし、自分も其の例外では無い。

 

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1972年、新宿地下街に太賀誠妻夫木聡氏)が現れ、不良グループと大乱闘を繰り広げる。彼は少年院送りとなるが、其の乱闘を見ていたブルジョワの御嬢様・早乙女愛武井咲さん)によって少年院から出され、名門の「青葉台学園」に編入させられる。

 

愛は校則違反のアルバイトをする等し、誠を献身的に支えていたが、誠は又しても警察沙汰を起こしてしまう。誠は青葉台学園を退学となり、不良達の掃き溜め「花園実業」に編入する事に。早速スケバン達とトラブルを起こす誠。そして、愛も誠を追って花園実業に転校するのだが・・・。

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「元インド首相ジャワハルラール・ネルー氏が、娘(後の首相で在るインディラ・ガンディー女史)へ宛てた手紙の中に含まれた『愛』と『誠』という言葉をタイトルにした。」とされている漫画「愛と誠」。1973年から1976年に掛けて「週刊少年マガジン」に連載された此の漫画、原作を手掛けたのは梶原氏だが、「スポ根作品」では無く、「純愛作品」の範疇に入る。しかし「愛情」や「友情」、「正義」といった梶原作品には欠かせない“熱さ”は、「愛と誠」にも満ち溢れている。真面目な秀才・石清水弘は早乙女愛に強い対して強い愛情を抱いているのだが、其の愛情は“無償の愛”と言っても良く、彼がしばしば発する「早乙女愛よ、石清水弘は君のなら死ねる。」という台詞は其れを象徴しており、連載当時、此の台詞は流行語にもなった。

 

「愛と誠」は此れ(昨年の時点迄)、4度実写化されている。映画として3度、そしてテレビ・ドラマとして1度で、何れも1970年代の事。個人的に言えば、“ヒデキ”こと西城秀樹氏が誠役を、そして今は亡き早乙女愛さんが愛役を演じた映画版(1974年公開)が、一番印象に残っている。

 

最後の実写化から36年経った今年、妻夫木氏と武井さんを其れ其れ誠と愛に据えた映画「愛と誠」(動画)が公開されている。「愛と誠」という作品を全く知らない人達は別にして、作品を読んで育って来た人達が此の映画を観たならば、「何だ、此れは!?」と驚いてしまう事だろう。原作の持つ「熱さをも感じる純愛性」と「生真面目さ」は脇に追い遣られ、コメディー・タッチミュージカル仕様になっているからだ。

 

映画を実際に観られたKei様は「愛と誠」という記事の中で、従来の“世界観”とは180度違う内容となった理由に付いて、次の様に指摘されている。

 

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本作についても、例えば石清水弘の「君のためなら死ねる!」のセリフは笑えてしまうし、花園実業の荒れっぷりや、影の大番長の存在はほとんど東映スケ番映画「恐怖女子高校」シリーズ等)かと思えるほどに荒唐無稽である。

 

・・・にもかかわらず、これらが熱い支持を受け、読者の多くが感動出来たのは、時代が高度成長への発展途上であり、勤勉に働き、真摯な思いを抱いて頑張れば、報われる・・・つまり、信じられる夢があった時代だからだろう。

 

バブル崩壊を経て、長期的な低成長時代がいつ果てるともなく続き、閉塞感漂う現代。若い人は多くが非正規雇用強いられ、夢を信じる余裕もない・・・。もはや、’70年代のような熱気は望むべくもない

 

そんな今の時代では、梶原劇画の世界は、もはやギャグでしかないのである。

 

だから、今さら「愛と誠」をまともに映画化なんか出来っこない。呆れられ、失笑されるのがオチである。執筆を依頼された脚本家も頭を抱えた事だろう。

 

そこで脚本家の宅間孝行が思いついた戦略は、これを思い切って歌謡ミュージカルにしてしまうというものであった(インタビュー記事より)。

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「確かにそうだろうなあ。」と思う。時代の移り変わりと共に、我々は次々と“新しい物”を取り入れ、同時に“古い物”を捨てて来た。嘗ては無条件で納得したり、感動していたりした事柄も、“今の価値観”では一笑に付されて御仕舞いという事だって在る。「1970年代の漫画「愛と誠」の世界観を其の持ち込む。」よりも、「徹底的に“御馬鹿なミュージカル”に変え、そして同作品の重要なエッセンス然り気無く残す。」形の方が、今の世の中では多くの人を魅了するかもしれない。

 

事前に“御馬鹿なミュージカル”というのは知っていたものの、実際に観ると、其の打っ飛び方は想像していた以上だった。冒頭、誠が不良グループと大乱闘を繰り広げるシーンが登場する(動画)のだが、「激しい恋」(動画)に合わせて誠達が踊る姿には爆笑。伊原剛志氏が演じる番長座王権太が「狼少年ケン」【動画】の歌に合わせ、「ワーオ ワーオ ワオー♪」と踊り始めたのには腹を抱えて笑ってしまった。)パパイヤ鈴木氏が振り付けを担当しているが、踊りは実に良い味を出している。

 

伊原剛志氏が演じる座王権太】

 

他にも「空に太陽があるかぎり」(動画)や「あの素晴らしい愛をもう一度」(動画)、「圭子の夢は夜ひらく」(動画)、「酒と泪と男と女」(動画)、「また逢う日まで」(動画)と、1970年代のヒット曲が流れ、懐かしさで一杯。

 

【太賀誠】

 

【妻夫木聡氏演じる太賀誠】

 

【早乙女愛】

 

【武井咲さん演じる早乙女愛】

 

【石清水弘】

 

斎藤工氏演じる石清水弘】

 

高校生の番長・座王権太役を今年で49歳になる伊原剛志氏に演じさせたセンスは凄いが、どう見ても高校生には見えなかった。でも、今年で32歳になる妻夫木氏は、学ランを着ても余り違和感が無い。「死ぬ、学ランを着続けるのではないか。(其れ程、学ラン姿に違和感が無かった。)」と思っていた役者・松田洋治氏の“記録”を、妻夫木氏は抜けるか?

 

座王権太の他にも、“影の大番長”こと高原由紀大野いとさん)やガムコ安藤サクラさん)といったキャラクター登場したりと、原作を知っている人間からすると「外してないなあ。」と思わされるキャスティング「太賀誠」には高身長のイメージが在るので、妻夫木氏だとやや違った感じもするが、演技は悪くない。石清水役の斎藤工氏も、コミカルな役を上手く演じていたと思う。(懐かしのCMフレーズ眼鏡は顔の一部です。」を口にするとは。武井咲さんは・・・兎に角可愛かった。

 

此の作品、観た人によって「良い悪い」はハッキリ分かれる事だろう。「余りの下らなさ(何よりも、出演者が“御馬鹿な演技”に徹しているのが素晴らしい。)に爆笑し、そしてしんみりとさせられるシーンも在る。」という事で、個人的には結構良かった。総合評価は、星3.5個とする。


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いや、当時も十分にアナクロ (AK)
2012-07-02 13:37:21
いやいや当時もアナクロだと思われていました。なぜか大ヒットしましたが…(そういう私も映画版、テレビ版ちゃんと見てるし^^;)。

当時も高校・大学生だともはやギャグと言いつつもまだ熱血物、闘争の熱のある時代でしたから、なんだかんだで見てしまったし、小中学生の方だともっと真剣に見てたんでしょうか…?

しかしまあコメディミュージカルになってしまうとは(笑)。テレビ放映されたら見ます!

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梶原一騎世代 (雫石鉄也)
2012-07-02 13:56:21
私も梶原一騎世代です。(手塚治虫世代でもあります)
「巨人の星」「あしたのジョー」「愛と誠」「空手バカ一代」などは、少年マガジンで毎週リアルタイムで読んでました。
「愛と誠」あれを、21世紀の現代、どう映画化するのか興味がありました。まともに映画化すれば、お笑いにしかなりません。なるほどミュージカル仕立てにしましたか。映画館に観に行くほどでもありませんが、レンタルDVDになれば観ようと思います。
「巨人の星」を読み直したのですが、梶原一騎はやっぱり稀代のストーリーテラーですね。次々に頁をめくらす技術はものすごいです。
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>AK様 (giants-55)
2012-07-02 15:07:14
書き込み有り難う御座いました。

「愛と誠」が連載されていた当時、自分は名古屋の片田舎に住むガキんちょでした。石清水が口にする「早乙女愛よ、石清水弘は君の為なら死ねる。」という台詞には、ガキんちょだった自分ですら「何だ其れ!?」という感覚(要はアナクロさ。)を持っていましたが、でも彼の頃は所謂「番長」や「スケバン」というのが“普通”の存在でしたから、そういった面では違和感を持たなかった。でも、今の子達からすると「愛と誠」の世界観自体が、アナクロさを感じてしまう事でしょうね。
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>雫石鉄也様 (giants-55)
2012-07-02 15:14:56
書き込み有り難う御座いました。今回は、此方にレスを付けさせて貰います。

自分も大の手塚治虫ファンですので、雫石様がブログの中で手塚作品に付いて書かれた際は、「うんうん、其の通りなんだよなあ。」なんぞと、楽しく拝読させて貰っています。

漫画やアニメを実写化した場合、概してガッカリする結果になってしまう。「オリジナル通りに実写化するのは、自身の才能の無さを明らかにしてしまう。」という恐れを作り手が抱くのか、「中途半端に中身を変えてしまう。」のが大きな要因で、そういった点に昔からの(作品の)ファンは幻滅してしまうのだと思うんです。

しかし、此の「愛と誠」の場合は、「現代の感覚とミスマッチな内容を十二分に認識した上で、予想外の切り口から描いた。」というのが功を奏している。又、出演者達が“御馬鹿ミュージカル”を真剣に演じているのが良い。詰まり、「作り手も演じても“悪ふざけ”では無い、真剣に“馬鹿”を演じさせている(演じている)。」というのが、概してネット上の評価が高い要因ではないかと自分は思います。
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『愛と誠』 (あいとまこと)
2012-07-03 02:14:50
 こんにちは『愛と誠』関係のブログをネットサーフィンしている者です。
 今回の映画化は原作好きの者にとっては喜ばしいかぎりです。
 もしよろしければこちらのサイトにも一度遊びに来てください。『愛と誠』関係に関する出演者ブログやニュース、他の方の感想ブログのリンク一覧にまとめており、また『愛と誠』に関する書き込みならなんでも書き込んでください。
・ 映画『愛と誠』ネタバレ掲示板 http://aimako.bbs.fc2.com/
他にも
・ 『愛と誠』覚え書き      http://www.myagent.ne.jp/~bonkura/201X.html
・ 梶原一騎ファンサイト『一騎に読め!』 http://www.myagent.ne.jp/~bonkura/
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