*********************************
「人を傷付けてしまうかも知れない。」という強迫観念に囚われている、中学3年生の山根理子(やまね りこ)。彼女は小学6年生の時に、同級生の瀬戸加奈子(せと かなこ)を目の前で“死なせてしまった”事を、トラウマとして抱えていた。
“身近な人間の殺害計画”を“夜の日記”と名付けたノートに綴る事で心を落ち着け、どうにか学校生活を送っていた理子の前に、或る日、加奈子の弟・悠人(ゆうと)が現れる。“加奈子の死”に纏わる理子の秘密を暴露すると脅され、理子は悠人の父親・龍馬(りょうま)を殺す計画を手伝う事に。
止むを得ず殺害計画を考える内、誰にも言えなかった“夜の日記”を共有出来る悠人に心惹かれていく理子。軈て2人は、殺害計画を実行に移すが・・・。
*********************************
逸木裕氏の小説「少女は夜を綴らない」。逸木作品は現在迄に3作品上梓されており、今回の作品で全て読了。
「不合理な行為や思考を、自分の意に反して反復してしまう精神障害。」の一種に“強迫性障害”が在るが、其の1つにとして挙げられるのが“加害恐怖”。「自分の不注意等により、他人に危害を加える事態を異常に恐れる症状。」を意味し、「車の運転をしている際、気が付かない内に人を轢いてしまったのではないかと不安に苛まれ、確認に戻る。」とか、「赤ん坊を抱いている女性を見て、突如として其の子供を掴んで投げてしまったり、落としたりするという様な、常軌を逸した行為をするのではないかという恐怖を感じる。」といった事が、具体的な症状。主人公の理子は同級生を目の前で死なせてしまった事により、加害恐怖を発してしまう。
加害恐怖の他に、DVやホームレス殺害等、不快さを感じさせる記述で溢れている。読後感も良く無く、典型的な“イヤミス”と言えるだろう。
加害恐怖をテーマに挙げたのは、決して悪く無かったと思う。「どんな展開になるのだろうか?」と、興味を惹かれたし。でも、結末はがっかりの一言。理子の兄・智己(ともき)の“正体”も“取って付けた感”しか無かったし、本当にがっかりな内容。
総合評価は、星2つとする。