リコー GR DIGITAL III富士カメラ
【8月5日発売・新製品】GR DIGITAL III
65,047円 (税込68,299円) 送料別
明るい単焦点レンズを持つスナップデジカメ――リコー「GR DIGITAL III」
写真愛好家層を中心に根強い人気を誇るGR DIGITALの三代目「GR DIGITAL III」が発売された。本物志向のマニアックな雰囲気はそのままで、レンズがより明るくなり、液晶モニタが大きく精細になった。
リコーGR DIGITALシリーズの最新モデル「GR DIGITAL III」が登場した。2007年に発売された「GR DIGITAL II」の後継機にあたり、レンズやCCD、処理エンジン、液晶モニタなどの主要装備を改良している。
ひと目見た印象は従来機とほとんど変わらない。外装は、表面にシボ処理を施したマグネシウム合金製で、グリップ部には手に吸い付くようにフィットするラバーが張られている。無駄な意匠を排除した、シンプルで渋いフルブラックボディはやや味気ないともいえるが、生真面目で質実剛健な雰囲気が漂い、一般的なコンパクトデジカメとは性格が異なることを外観からアピールしている。
ボディサイズは、従来機GR DIGITAL IIに比べて幅と高さ、奥行きがそれぞれわずかにアップし、本体質量は約168グラムから約188グラムへと増加した。これは、レンズや液晶を変更したためだ。新レンズは、これまでのGR DIGITALシリーズと同じく35ミリ換算で28ミリ相当の焦点距離を持つが、開放値がF1.9とより明るくなっている。コンパクトデジカメでここまで明るいレンズは最近では珍しく、薄暗いシーンでも感度を上げずに済むメリットがある。
レンズの描写力は良好だ。色ズレや歪曲などの各種の収差が目立たないように補正され、開放値F1.9でも安心して使用できる。レンズ表面にマルチコーティングを施すことで逆光時のゴースト発生やコントラストの低下も抑えている。また、最短1センチまで近寄れる近接性能も高い。
28ミリ相当という焦点距離については、GR DIGITALおよび銀塩時代のGRシリーズから続くもので、ファンにはお馴染みであり、使いやすいはず。ただ、ふだんズーム付きのコンパクトデジカメに慣れている人には戸惑いもあるだろう。焦点距離を意識せず何気なく構えて撮ると、間延びした構図になりがち。昔から言われるように、広角単焦点レンズを使いこなすには、常に被写体に向かって一歩踏み込んで撮るような感覚が必要だ。
撮像素子は1/1.7型の有効1000万画素CCDを搭載する。GR DIGITAL IIの1/1.75型有効1001万画素CCDに比べて記録画素数は変わらず、サイズがわずかに大きくなった。併せて処理エンジンやノイズリダクション、レンズを改良したことで、画質向上を実現した。一般的なコンパクトデジカメに多く見られる画像処理でシャープ感と彩度を強調した絵作りではなく、拡大しても細部の表現が自然で、発色傾向はナチュラルだ。
JPEG画質の傾向を調整する「画像設定」機能は一新され、初期設定の「スタンダード」のほか、シャープネスとコントラスト、彩度を高めた「ビビッド」や、モノトーンの「白黒」、白黒に調色を加えた「白黒(TE)」を選べる。個別設定によって、色相や彩度を細かく調整することも可能だ。
トータルとしては、GR DIGITALシリーズのコンセプトがまったくブレない正常進化といえる。特にレンズの明るさがありがたい。画素数を高画素化したり、シーン認識や顔認識を搭載したり、動画モードを充実させることだけがデジカメの進化ではないことを示している。ただし、手ブレ補正機構が見送られたのは残念だ。また個人的には、28ミリ相当ではない、35ミリや40ミリのGR DIGITALを見てみたい気もするし、シルバーボディのGR DIGITALに期待する気持ちもある。でも、それではGRではなくなるのかもしれない。