今年の初めの方だったか、「グインサーガ」の新刊のあとがきを読んでいたら、栗本薫こと中島梓さんが胆管ガンのため12月に手術すると書いてあってびっくり。(本が出た時点では手術終わってたと思いますが)
昔乳がんの手術をされた時も、「グイン途中で終わっちゃったらどうしよう」なんて思ったりしたものでしたが、無事に手術も済み、再発も全くないようですっかり安心していましたが、また違うガンになってしまうとは・・・
その後のグインのあとがきで、無事退院もされているようですが、抗がん剤治療も続けているようで、「時間との戦いになってきた」なんて書かれていたので、転移してたのかもしくは取りきれなかったんだろうなあというのは感じていました。はっきりとは書いてなかったけれど。
その後の経過も知りたかったし、入院されていた病院にうちの父も入院してたりしたので親近感もあったりして、読んでみました。父は1階下の17階だったんですよね。(時期は重なってませんが)18階が特別病棟だなんて知らなかった。ちょっとのぞいてみればよかったなあ(笑)
乳がんの時の闘病記「アマゾネスのように」は読まなかったんですが・・・
読み終わったあとでしたが、樋口宗孝さんも癌でなくなり、いろいろと考えさせられるものがあります。最近の公式サイトの日記では、食べた後お腹が痛くて苦しんでらっしゃるようで、心配です・・・うちの父もそうだったから。原因が同じとは限りませんけど。
そんな中島梓さんの、黄疸の症状が出て、実は胆管のガンが原因だったことが判明するあたりから、入院、手術、手術後の経過と、つれづれの気持ちを書きとめたエッセイ集です。書き口が相変わらず読みやすいので、するすると読めました。
ピーターラビットってイメージじゃないなあ・・・(失礼(汗))と思っていたら、ご主人が入院中のお見舞いに持ってきた置物の人形のことだったんですね。
小説家としてたくさんの人間を殺して来たし、身近な人の死も経験していながらも、やはり実際に死を意識させられる大病の経験というのは大きかったようで・・・「生きたい」という切実な思いをひしひしと感じました。
死ぬかもしれないという思いを見つめつつ、その時々の思いを書きとめている様子には、胸を衝かれますね・・・
一方で、お嬢様なんだなあ、と思わせるような率直なことも書いていて、ああ、こういう人なんだ、だから嫌われたり攻撃されちゃうんだなあ、なんてことも思ってしまいました(汗)
例えば、告知についての考え方も、私自身は全く同意見ではあるんですが、告知されても死ぬかもしれないという現実を受け止められない人というのも存在するわけで・・・
皆があなたのように頭が良いわけではないんだけどな、とつい反感を持ってしまう部分もありました。
非常に頭の良い人で、弱い人間の心理も理解しているけれど、どこかで弱かったり愚かだったりしている人々を見下している・・・わけではないんだけれど、ある意味お姫様が下々を理解できないような(汗)そんな感じがしてしまうんですね。
そういう意味では、やっぱりリンダは彼女の分身だなあと思ったりします。リンダはそんなに頭が良くないので(汗)許せてしまうんだけど。
そういうところが、「グイン」の登場人物でも、一部の人々への扱いの酷さにつながってるような気がして、どうも作者にしいだけられているキャラ(レムスとかシルヴィアとかアムネリスとか)が好きな私としては「彼女の作品のこういうところが好きになれないんだよな・・・」と思ってしまったりもしました。
ただ、自身でも「マザーテレサコンプレックス」と書いていて、人のために尽くすことはできないタイプで、そのことに罪悪感を感じる、と率直に書いているあたり、正直な人だなあとも思います。
きっと頭はいいけど不器用な人で、それで反感を買う人からは反感を買うんだろうなあ・・・なんてことを思ってしまいました。
だいたい、ネットで攻撃されて反撃するなんて、なんて馬鹿なことをするんだろう・・・と私などは思ってしまうのですが(汗)実名vs.匿名の多数の人たちの戦いなんて分の悪いこと、するだけ無駄だと思うんだけど・・・それでも反論せずにはいられない、そういう真っ正直で不器用な人なんだなあ、と思いました。
なんて、一介の読者に色々勝手に分析されてしまって、物書きというのは大変な職業だなあ、と思ったりもしますが(汗)
あと、実際の手術や治療の経過のことも当然書いていて、父の病気のこともあったので色々と興味深く読みました。
手術するというのは大変なことだ、次にもう一度手術をすると言われたら考えてしまう、というのは共感しますね。
私自身のことではないけれど、手術後にほとんど身動きもできず、回復にもかなりかかった父の姿を見ていて、手術なんてするもんじゃないな、私だったら放射線治療を選択するな、と思ったものです。
手術後に出てくる「せん妄」という症状(頭が混乱して認知症のような状態になる)についても、なるほど、と思うところがありました。父もなったのですが、なぜそういうことになるのかがわからなかったので・・・
手術直後には身体からたくさんの管が出ていて、そういう通常と違う状態にあるというショックから、一時的にせん妄状態になる人が多いそうです。
中島梓さんはせん妄にはならなかったそうで、精神的に強いということのようでした。なるほど、自分の状態を精神的に受け入れられないとせん妄になるんだなあと。
父は、手術後だけでなく、最後の方もせん妄状態になったのですが、痛み止めのモルヒネのせいなのかと思っていたのですが、お医者さんは「病気がさせていたことだと思いますが」と言っていて、薬のせいではなかったようです。
中島梓さんのせん妄についての話を読んでいて、ああ、父は自分が死ぬという事実を受け入れられなくてせん妄状態になったんだなあ、と思いました。
人間の心って上手くできているんですね。精神的に現状を受け入れられなくなったら、バランスを取るように出来ているんだなあ・・・。
中島梓さんは、自分で自分がわからなくなってしまうような状態になることは物書きとして耐えられない、と書いてましたが、こうやってその時々の自分の思いを見つめている彼女のことだから、きっと最後までしっかりと意識を保った状態でいるのではないかなあと思いました。
最後にあとがきで、肝臓への転移が見つかったことなどが書いてあって、引き続き闘病されていると書いてありました。その後の経過は、グインの後書きとか、ホームページの経過報告で見ることができますが。随時闘病記も書いてらっしゃるようなので、そのうちまたエッセイ集が出るかもしれません。
樋口さんのこともあるし、今後の経過も心配ですが・・・
でも、がんが全身に転移しながら何年も頑張った絵門ゆう子さんのような方もいらっしゃるし、それを思えばそこまで転移しているわけではないわけだし・・・
治療が上手く行って、回復される日が来ることを祈ります。
抗がん剤治療はかなり辛いようで、「ガンで死ぬか抗がん剤で死ぬか」と書いていたのは(これはホームページの経過報告ですが)わかりますが・・・。父もそうだったし。樋口さんもそういう感じだったのかなあ、なんてことも考えてしまいました。
何はともあれ、闘病生活が少しでも楽になり、回復されるようにお祈りします。
そして、また無理をせずとも思う存分執筆できる状態になられますように・・・