朝方まで降っていた雨は夜明け前に上がり、昨日に引き続いての行楽日和になりました。ファニアス・ニューボーンJr.の「HARLEM BLUES」を聴きながら、ゆっくりとモーニングコーヒーを楽しんでいると
「バブさん、これから迎えに行きますから」
「えっ!」
同僚K君からの電話です。そう、先日お話しした映画「フラガール」の件であります。
じつをいいますと、ここまで引っ張ってきたのには訳がありまして・・・正直、心底興味をもっている映画でもなく・・・・何とか逃げようとしていたというか・・・、
しかし、迎えにくるうえにタダ券まで用意したと言われれば、「ひょっとして、お前の親戚に関係者でもいるのか?」と思いながらも、断るわけにもいかないわけで、観てきましたよ「フラガール」
「どう?バブさん、良かったでしょ?泣いちゃったんじゃないの、鼻をすすっていたの聞こえましたよ」
「あ~?泣きゃしなかったけど、じゅうぶん楽しんだよ」
感想は、あえて書かないことにします。
えっ?それほどでもなかったのかって? いえいえ、楽しんではまいりました。ただね、最近そのへんの感動回路が、どうも鈍くなってきているんですよ、私。だから、私の感想はあてにならないということで、今回は書かないことにいたしました。
映画を見終わった後、昼食をとりながら
「バブさん、久々にいい邦画ですよねぇ、フラガール、・・・・・・」
しばし、彼の感動話を聞かされ、
「デューク島袋の音楽もいいっすよねぇ、俺なんかCD買っちゃったもんなぁ」
たしかに、デューク島袋のウクレレにはいつも感心させられます。
ともかく、彼の惚れようは半端じゃありません、ここまで言ってくれる観客がいたということで、やっぱり「フラガール」は良い映画なのでしょう。
「バブさん、ジャズに詳しいのは知ってますけど、映画音楽はどうなんです?」
「えっ?そりゃぁお前、映画音楽全集LP20枚っての持ってたもん、この前だって『ひまわり』のヘンリー・マンシーニの音楽に感激しながらDVD観てたんだから」
「ヒマだから、久しぶりにバブさんのところでコーヒーでも飲みながら、CDでも聴いていこうかな、映画音楽もあります?」とK君、
「いや・・・・、でもジャズの映画音楽ってのもあるよ」
ということで、午後のひとときは、彼の世界から私の世界に、彼をグググイッと引き寄せたのであります。
「死刑台のエレベーター」にはじまり、「ALFIE」「FLIGHT TO DENMARK」の「危険な関係のブルース」を聴きながら、
「おっ、そうだ、同じアルバムの中の『ON GREEN DOLPHIN STREET』は、ジャズのスタンダードだけど、もとはまぎれもない映画の主題曲だった」
そうです「ON GREEN DOLPHIN STREET」は、同名映画、邦題を「大地は怒る」のメインテーマ、しかも、いろんなジャズメンが演奏してるぞぉ~~~!
てんで、「ON GREEN DOLPHIN STREET」の聴き比べを強要したのでありました。
「よし、デューク・ジョーダンのピアノ・トリオを聴いたから・・・」
ウォルター・ビショップJr.「SPEAK LOW」、ウイントン・ケリー「KELLY BLUE」、ビル・エバンス「GREEN DOLPHIN STREET」、オスカー・ピーターソン「THE SOUND OF THE TRIO」、スリー・サウンズ「MOODS」、ケニー・ドリュー「BY REQUEST」と、「ON GREEN DOLPHIN STREET」だけを立て続けに聴いてみました。いやはや、こういうときはCDというのは重宝しますね。
「あら?ちょっと飽きてきた?大丈夫、こんどはピアノトリオじゃないから」
「・・・・・・・・・・!?」
まずは、この曲をスタンダードたらしめたマイルスから、「1958 MILES」、ソニー・ロリンズ「SONNY ROLLINS ON IMPULSE !」、このへんから彼には辛いかな?、アーチー・シェップ「ON GREEN DOLPHIN STREET」、エリック・ドルフィー「OUTWARD BOUND」・・・・・・
「バブさん、そろそろ遅くなりますから帰ります。楽しかったで~す。」
あれ?私はとんでもない無理強いをしていまったのかなぁ?????
それでも彼が帰った後も、なんだか面白くなってしまって
バーニー・ケッセル「THE POLL WINNERS」、なんとアルバート・アイラーの「MY NAME IS ALBERT AYLER」まで引っ張り出し、最後は「MILES DAVIS & JOHN COLTRANE / SO WHAT」でしめました。
なんだか、ちょつとした満足感まで感じたりして、
いやいや、いかん。自分の好みや興味を、他人にむりやり勧めることは、映画にしてもジャズにしても、あまりよろしいことではありませんね。反省すべきことをしてしまいました。
ということで、今日の一枚はアーチー・シェップのそれにしてみました。
この時期のシェップを、「シェップも商業主義に走ったか」と取るか、「シェップも何かに目覚めたんだな」と取るのか、はたまた・・・・・
これも、それぞれのとらえ方にお任せすることにしましょう。
ON GREEN DOLPHIN STREET / ARCHIE SHEPP
1977年11月28日録音
ARCHIE SHEPP(ts) WALTER BISHOP Jr.(p) SAM JONES(b) JOE CHAMBERS(ds)
1.ON GREEN DOLPHIN STREET
2.ENOUGH
3.THE SCENE IS CLEAN
4.IN A MELLOW BLUES
5.I THOUGHT ABOUT YOU