風船になつてゐる間も目をつむり
まんなかが窪む遅日のひとだかり
石ながくのびてゐるなり秋の風
亀鳴くとビルのあひだに挟まれぬ
蟬の死にぱちんぱちんと星が出る
秋風の岬へ道のせり出せり
沢瀉の夢に三人来てをりぬ
常緑の夜のエンジンの透けてきぬ
サルビアは思ひ違ひをしてゐたか
円柱の蟬のきこえる側にゐる
風船になつてゐる間も目をつむり
まんなかが窪む遅日のひとだかり
石ながくのびてゐるなり秋の風
亀鳴くとビルのあひだに挟まれぬ
蟬の死にぱちんぱちんと星が出る
秋風の岬へ道のせり出せり
沢瀉の夢に三人来てをりぬ
常緑の夜のエンジンの透けてきぬ
サルビアは思ひ違ひをしてゐたか
円柱の蟬のきこえる側にゐる
乱れゐて乱れ無かりし吾亦紅 山尾玉藻
目薬の上手に入りし青嶺かな 杉浦典子
大瑠璃を見上ぐる声の濡れゐたり 浜口高子
金魚玉雨のち晴れでありにけり 涼野海音
水瓶が/目白の/對角線上に 酒卷英一郎
天敵を喪くしたんだね優曇華よ 志賀康
黄泉からの風に委ねて蛇苺 曾根毅
死にかわる少年学のシャーベット 九堂夜想
霧流れはじめ着替への途中たり 島田牙城
新涼や頰杖のあと肘枕 ひらのこぼ
夜の木に鳥がたくさんゐて涼し 堀下翔
風に色なくて荷風の文庫本 媚庵
脣が切れて血の味流れ星 仲寒蟬
街ごとの肺活量や天の川 佐藤文香
空蟬の中のかすかな砂うごく 男波弘志
月白の回転木馬触れ合わず 月野ぽぽな
こおろぎの声転がって露無辺 高野ムツオ
日本の臨界点に水を打つ 栗林浩
小路から大路へ抜ける大暑かな 渡辺誠一郎
夏座敷風は黙より生まれくる 佐藤成之
特集 日下節子句集『店蔵』書評
満開の笹百合・・・・石母田星人(「滝」「俳句スクエア」)
天の川ちがう模様の魚群れ 花谷清
あと一歩きみへ進めば全て滝 同
石の苔生きるすべてをうべないて 花谷和子
浜のおとこの眉重たかり雲の峰 辻本孝子
腕に蝉大和は岩と女人の国 金子兜太
生臭く小さく人間蝉しぐれ 同
涅槃西風食うため海へ出てゆけり 武田伸一
もつれゆく先頭ありて蟻の道 山中葛子
黙っていれば花いちもんめあげる 河西志帆
特集記事・海程全国大会 in 箱根
第二日/第二次句会「憂いと詩性と」五島高資
第二日/有志吟行③「小田原城の楊枝サムライ」室田洋子 ほか
海程全国大会 in 箱根 第二次句会・金子主宰入選作品
礼装が那由他の蝶をささめかす 筑紫磐井
星々を招き入れたる植田かな 仲寒蟬
大祓してくりかえす春の泥 真矢ひろみ
星空に如来の坐す涼しかり 堀本吟
パライゾに日翳遍し桐咲いて 福田葉子