現代俳句選抄

ご恵贈頂いた書誌から、五島高資が感銘した俳句などを紹介しています。

片山由美子 著『昨日の花 今日の花』ふらんす堂

2016-05-29 | 俳句

寒卵おのづからなる仄明り  片山由美子

春眠し夢に尾のあり香りあり  同

さざなみは風にもありて青葉の夜  同

落蟬の蹴られて幹に戻りけり  同

はや虫の声を聞く夜となりにけり  同

鉦たたき宇宙に果てのありとせば  同

 


「現代俳句」平成28年5月号

2016-05-03 | 俳句

花万朶夜空の色の帯を解き  浦川聡子

眠りまで水位深めてゆくさくら  対馬康子

書きかけの手紙を通る春の月  同

着弾地黄蝶唯今交尾中  松井国央

左足また左足雪女  小西瞬夏

みささぎを浮かべて青田風となる  五島高資 (仲寒蟬・感銘十句抄)


「海程」2016年5月号

2016-05-03 | 俳句

さくら咲くしんしんと咲く人間に  金子兜太

凧作りやる子が居なく卆寿かな  相原左義長

北極星入りしままの寒卵たまご  佃悦男

火の色のにんじん積まれ雪ふりくる  前川弘明

紅茶の神様のよう冬暖か  谷佳紀

遠耳の二人の阿吽冬朝日  野田信章

往く年や色も形も消えていた  瀬川泰之

顳顬の寒気擦り傷のように孤灯  十河宣洋

鍵さがす鍵穴ひとつ冬銀河  野憲子

大寒や真竹叩いて起こす神  松本勇二

駄菓子屋へ初東雲を入れにけり  こしのゆみこ

水落ちて石の褶曲去年今年  田中亜美

細胞におよぶ引力年新た  月野ぽぽな

灯すように人参きざむ海の街  たかはししずみ

雲の上の夕陽にとどく雪野かな  マブソン青眼

石蕗の花動物園のまるくあり  室田洋子

落鮎は水に私は土になれる  河西志帆

銀河よりうからやからの瀬音かな  五島高資 (佃悦男先生の「共鳴20句」に入選)

カイツブリ自尊感情疼くのだ  桂凜火

菓子ひとつ眺めて飽かぬ初明り  中内亮玄