わだつみの道の遠のく秋入日 加藤哲也
顔見世を出て風となる一と日かな 同
宵闇に紛れ込みたる夏館 同
新涼やロダンの肘のあたりより 同
大人にもこどもにも降る木の実かな 同
蠟梅や知覚過敏を憂ひつつ 同
菜の花や月光菩薩立ち上がり 同
わだつみの道の遠のく秋入日 加藤哲也
顔見世を出て風となる一と日かな 同
宵闇に紛れ込みたる夏館 同
新涼やロダンの肘のあたりより 同
大人にもこどもにも降る木の実かな 同
蠟梅や知覚過敏を憂ひつつ 同
菜の花や月光菩薩立ち上がり 同
ぶらんこの裏まで見せて跳びにけり 蜂谷一人
心太突いて夜空を滴らす 同
龍骨のかたちに日本南吹く 同
林檎むくまあるくほどけゆく時間 同
もう土へかへる桜でありしもの 同
蒼き灯の底を聖夜の魚となる 同
蛤の舌夕暮に触れてをり 同
馬跳びの最後冬夕焼と遭ふ 同
ひぐらしや波の広がる心字池 同
空蟬を残して声となりにけり 同
昼点いて白熱灯や虚子忌なる 同
噛みてなほ七面鳥の皮の照り 佐藤文香
ぬかるみのあかるみを踏み友なりけり 同
にはとりのはぐれて一羽春の中 同
夏霧を鳥おりてきて馬となる 同
終の住処鉄扉に薔薇を這はせあり 同
こゑで逢ふ真夏やこゑは消えるのに 同
音楽のあをく膨らむ熱帯夜 同
事切れてまだ虫籠のなかにいる 福田若之
手に木の葉てんごくにも俳句はあるよ 宮﨑凜々香
木犀の届いてゐたる自動ドア 宮本佳代乃
心地よく浮かぶ月かたむき沈む 田島健一
星あかり豆腐の壁にゆきあたる 鴇田智哉
髙野公一先生よりご著書を頂きました。お手紙では、拙著『芭蕉百句』への温かいご批評を賜り、重ねて心よりお礼申し上げます。先生は「芭蕉の天地」で、ドナルド・キーン賞優秀賞を受賞された碩学にして恐縮至極に存じます。いずれにしましても、現代にあって、芭蕉の俳諧精神を探求する者同士として心強い思いがしました。深謝まで。
卒業の丘からのぞむガスタンク 小林かんな
来た路を金魚とともに引き返す 同
にんじんの太くて書架にトルストイ 同
大人になってからの友達梅三分 仲田陽子
ピーマンの中へ本音を詰めておく 同
白鳥の遺伝子をもち自由なる 同
灰色の象の背に乗る朧月 中田美子
フラスコに残る触媒昼の月 同
黄落のあちらこちらに庭師立つ 同
少しづつ空気を吐いて百合の花 岡田由季
数へ日の母はさつさと助手席に 同
初旅の関東平野のびてゆく 同