現代俳句選抄

ご恵贈頂いた書誌から、五島高資が感銘した俳句などを紹介しています。

「藍生」平成28年6月号

2016-06-20 | 俳句

早寝早起なみなみと新茶の香  黒田杏子

来年のことはさておき新茶汲む  同

土の粒かかげながらに芽立ちかな  岩田由美

禁煙をして香り増す沈丁花  高橋亜紀彦

春浅し髭剃に貸す化粧水  髙田正子

追儺会の豆に影ある畳かな  三島広志

水温むきらりと風の色めきて  清水憲一


「ひろそ火」2016年6月号

2016-06-20 | 俳句

菜の花の果てに海あり航路あり  木暮陶句郎

鳥交る空と森とをつなぎつつ  同

鳥の巣の穴は明るき闇である  同

バーテンに見せる春夜の猫目石  同

東北に地震のありし春の雪  茂木妃流

三従の道をめざして万愚節  佐藤志乃


髙柳克弘『寒林』ふらんす堂

2016-06-15 | 俳句

木馬降りる足そろひけり夕桜  髙柳克弘

皆既日蝕ゼリーふるへてゐたりけり  同

夜も力抜かぬ鉄路よ去年今年  同

炎天やひよこ売る箱へなへなと  同

ぼーつとしてゐる女がブーツ履く間  同

太陽の照りつつ古ぶ手毬かな  同

バス発ちて寒き夜景に加われる  同

蚊遣火や壁の如くに雨はげし  同

雲中の太陽つよしトマト捥ぐ  同

ビルの裏すぐに川ある聖夜かな  同

ぶらんこに置く身世界は棘だらけ  同

砂握りこぼして花火待ちにけり  同

大泣きのあと爽やかに鼻かめる  同

冬木立思考は馬の速度なす  同

息白く海の時間に囚わるる  同


「鷹」平成28年6月号

2016-06-15 | 俳句

草餅や城下といへど漁師町  小川軽舟

吉事呼ぶごとくに蝌蚪の揺るるかな  奥坂まや

日の波や寄居虫一つ引き残す  髙柳克弘

刀打つ鎚ひびかせよ引鶴へ  竹岡一郎

逃げたくて逃げだせなくて葱坊主  加藤静夫


「海程」2016年6月号

2016-06-06 | 俳句

山百合咲く弱気の虫よさようなら  金子兜太

地の黒き割れ目ついばみ春の鳥  安西篤

野火走る落日はまだ白きまま  塩野谷仁

青年は地より湧いたり山眠る  佃悦夫

裸木を濡らす大気の中にいる  堀之内長一

きさらぎや人は人殺めて次の世へ  瀬川泰之

フクロウの正眼産土神も来て  松本勇二

母を座らせ春の運転席はここ  宮崎斗士

大雪や待つ人の無き赤信号  江良修

冬濤に噛まれ噛みつく岬かな  五島高資(海程秀句・金子兜太選)

キツネよりズルい男だ海鼠食う  桂凜火(海程秀句・金子兜太選)