早寝早起なみなみと新茶の香 黒田杏子
来年のことはさておき新茶汲む 同
土の粒かかげながらに芽立ちかな 岩田由美
禁煙をして香り増す沈丁花 高橋亜紀彦
春浅し髭剃に貸す化粧水 髙田正子
追儺会の豆に影ある畳かな 三島広志
水温むきらりと風の色めきて 清水憲一
早寝早起なみなみと新茶の香 黒田杏子
来年のことはさておき新茶汲む 同
土の粒かかげながらに芽立ちかな 岩田由美
禁煙をして香り増す沈丁花 高橋亜紀彦
春浅し髭剃に貸す化粧水 髙田正子
追儺会の豆に影ある畳かな 三島広志
水温むきらりと風の色めきて 清水憲一
菜の花の果てに海あり航路あり 木暮陶句郎
鳥交る空と森とをつなぎつつ 同
鳥の巣の穴は明るき闇である 同
バーテンに見せる春夜の猫目石 同
東北に地震のありし春の雪 茂木妃流
三従の道をめざして万愚節 佐藤志乃
木馬降りる足そろひけり夕桜 髙柳克弘
皆既日蝕ゼリーふるへてゐたりけり 同
夜も力抜かぬ鉄路よ去年今年 同
炎天やひよこ売る箱へなへなと 同
ぼーつとしてゐる女がブーツ履く間 同
太陽の照りつつ古ぶ手毬かな 同
バス発ちて寒き夜景に加われる 同
蚊遣火や壁の如くに雨はげし 同
雲中の太陽つよしトマト捥ぐ 同
ビルの裏すぐに川ある聖夜かな 同
ぶらんこに置く身世界は棘だらけ 同
砂握りこぼして花火待ちにけり 同
大泣きのあと爽やかに鼻かめる 同
冬木立思考は馬の速度なす 同
息白く海の時間に囚わるる 同
草餅や城下といへど漁師町 小川軽舟
吉事呼ぶごとくに蝌蚪の揺るるかな 奥坂まや
日の波や寄居虫一つ引き残す 髙柳克弘
刀打つ鎚ひびかせよ引鶴へ 竹岡一郎
逃げたくて逃げだせなくて葱坊主 加藤静夫
山百合咲く弱気の虫よさようなら 金子兜太
地の黒き割れ目ついばみ春の鳥 安西篤
野火走る落日はまだ白きまま 塩野谷仁
青年は地より湧いたり山眠る 佃悦夫
裸木を濡らす大気の中にいる 堀之内長一
きさらぎや人は人殺めて次の世へ 瀬川泰之
フクロウの正眼産土神も来て 松本勇二
母を座らせ春の運転席はここ 宮崎斗士
大雪や待つ人の無き赤信号 江良修
冬濤に噛まれ噛みつく岬かな 五島高資(海程秀句・金子兜太選)
キツネよりズルい男だ海鼠食う 桂凜火(海程秀句・金子兜太選)