現代俳句選抄

ご恵贈頂いた書誌から、五島高資が感銘した俳句などを紹介しています。

干野風来子・句集『夕映の北岳』本阿弥書店

2015-05-30 | 俳句

小太郎の尾根震はせし当薬竜胆  干野風来子

十二天在せば胡桃のこぼれ沼  同

天狼星へ向かひレールの進みけり  同

戸隠山や雲のゆくへは蕎麦の花  同

月あかり葛の葉うらに遊びけり  同

米洗ふ背中に春の山ひとつ  同


「海程」2015年5月号

2015-05-14 | 俳句

洋上に硫黄島見ゆ骨の音も  金子兜太

歳を重ねて戦火まざまざ桜咲く  同

十一面より二面おそろし春彼岸  安西篤

ひざまずく山河ありけり冬の虹  武田伸一

少子高齢みずみずしきは芹なずな  瀬川泰之(海程秀句・金子兜太抄出)

凍蝶がゐてすぐそばの遠い場所  柳生正名(海程秀句・金子兜太抄出)

まず富士に日のさす冬のちまたかな  五島高資(海程秀句・金子兜太抄出)


「鷹」平成27年5月号

2015-05-14 | 俳句

三月の海ひとりづつ影がある  小川軽舟

鶯の声撥ね上げて谿青し  同

雪解川くぐりし橋をかへりみず  同

銀紙の引つかかりをる蓬かな  同

青空は虚言ゆるさず氷面鏡  奥坂まや

風船の影振り切つて飛び立てり  加藤静夫

人の死に石を据ゑたる雲雀かな  柳克弘


「小熊座」平成27年5月号

2015-05-14 | 俳句

凍星や盲腸線の終点に  高野ムツオ

人間の数だけ闇があり吹雪く  同

甌穴の小石もよかり又の世は  同

日高見の尾てい骨骶骨より蘖ゆる  土屋遊蛍

人間はものにすがりて春の月  渡辺誠一郎

春愁の炉心の底の潦  同

天からの力垂直花の冷  大場鬼怒多

星みがく係りがいいと卒園す  栗林浩

雛段のごとく石積み海の町  佐藤成之