現代俳句選抄

ご恵贈頂いた書誌から、五島高資が感銘した俳句などを紹介しています。

「オルガン」33号

2024-02-11 | 俳句

菜種梅雨パレードにひつような橋  田島健一

山桜なにも言わずについてくる  同

人をさがしてと奉じてゐる遅日  鴇田智哉

菜の花の群れが空気を膨らます  同

つま先に春の闇から届く波  福田若之

ゆく春に折り目があれば分けやすい  同

ほんたうはつばきのなかにあることば  宮﨑莉々香

星ぼしや見えなくなつた手に手を振る  同

こゑが地に届いて枝垂桜かな  宮本佳世乃

ともに夜を生き桜蘂降りつづく  同

 


高橋亜紀彦・句集『異邦の神』朔出版

2024-02-11 | 俳句

何度開けてもないものはない冷蔵庫  高橋亜紀彦

仙人掌の永き夢から醒めて赤  同

曼珠沙華汝もサイコパスかも知れず  同

白梅や詩人は生くるために書く  同

長き夜や使ひみちなき砂時計  同

出目金の泪に誰も気づかざる  同

 


越智友亮・句集『ふつうの未来』左右社

2024-02-11 | 俳句

雪もよい湯気のにおいのからだかな  越智友亮

気を抜くと雨粒こぼす春の空  同

噴水の水やわらかく水に消ゆ  同

駆け足や宇宙は秋の空の上  同

金木犀両手で握手して別る  同

数学をやめ台風を待っている  同

河童忌の鉄のにおいの掌よ  同

稲咲いて朝をくださる光かな  同

革ジャンの鈍きひかりやうまごやし  同

白玉や今が過ぎては今が来て  同

相槌うって君は話さずオリオン座  同

川幅に橋おさまらず枯葎  同