蝶の骨顔にかくして山河とす 高岡修
斧の柄を春の日射しが来て握る 同
ほどかれて風船自由を見失なう 同
凍滝のなか月光の氷りたる 同
朽ち果てし舟を根方に藪椿 黛執
奥つ城に隣れる田より打ちはじむ 同
枯山の枯れの極みに水の音 同
星よりも水のきらめく聖夜かな 同
春がきて日暮が好きになりにけり 同
空耳に返事などして涼新た 中西夕紀
刃となりて月へ飛ぶ沖ノ島 同
信号に止まり狐と別れけり 同
海の日を車中に入れて帰省かな 同
竹伐りの竹曳く道も竹の中 同
ぜんまいの月の中まで伸びあがる 野中亮介
風船の捕まえたがるやうに飛ぶ 同
春の月桶をあふれて天にあり 同
銀漢の尾に触れて鳴るオルゴール 同
戦場に繋がる海や野分雲 朝吹英和
靴下の穴に始まる大枯野 同
年輪の声聞く霜の夜更けかな 同
音階の行きどまりにて鶴凍つる 同
光陰の矢に刺し抜かる晩夏かな 同
てのひらをこぼるる刻よ冬すみれ 野﨑憲子
石を積むこと息をすること涼し 月野ぽぽな
空缶に闇のはげしき修司の忌 小西瞬夏
海のみか空もまた菜の花の沖 林亮
あるはずの後ろをなくす帚草 同
コスモスへ風の都の遷る見ゆ 同
鉄橋の数だけ渡る天の川 同
枯菊に燃ゆる音燃え移る音 同