秋の日の音楽室に水の層 安西篤
月を吊る宙の大きな手が見えて 宮坂静生
土まんじゆう夏の花咲く土を乗せ 坊城俊樹
黄落や少年が少女に待たれ 石田郷子
コスモスの写真に指のうつりたる 鴇田智哉
水底のやうな聖夜の街とほる 坂本宮尾
寒禽の思ひきるときかがやけり 日下野由季
星座みな傾き出でて十二月 鷹羽狩行
狼とわれをへだてて雨の柵 宇多喜代子
だいこんをおろすなんだかさびしいね 姜東
石屋根の石の押さへや雪しまく 寺田敬子
和御魂荒御魂へとしぐれけり 林誠司
詩ごころにはかにからす瓜の花 今村征一
芋の茎きしみて育つ旱星 山口望寸