現代俳句選抄

ご恵贈頂いた書誌から、五島高資が感銘した俳句などを紹介しています。

日野原重明『百歳からの俳句創め』富嶽出版

2016-11-25 | 俳句

初御空我上り坂米寿越え  日野原重明

カンナの緋わがからだにぞもえるショパン  同

癌を病む若もの診たあと星仰ぐ  同

あやまちを犯した傷をゆるし合おう  同

さっそうと揺れるコスモス風のまゝ  同

滋賀の里琵琶湖にかかる虹の橋  同


「はがきハイク」第15号

2016-11-23 | 俳句

曇天を大きな桃の実と思ふ  西原天気

あるだけの林檎をコインロッカーに  同

葡萄ひとふさ電線を見て過ごす  同

虫すだく8ポ活字の『草枕』  笠井亞子

蟋蟀の動悸激しき位牌の金  同

行列の先頭狙う鬼やんま  同


宗田安正『巨人』沖積社

2016-11-15 | 俳句

この明るさ鯤の体内かもしれぬ  宗田安正

をらずともすでに来てをり蝸牛  同

砂浜掘る虹の欠片の出づるかと  同

古池に翁の魂を釣り上げし  同

顳顬というて霞に近きもの  同

昼寝より起ちて巨人として去れり  同

 


中原道夫『一夜劇』ふらんす堂

2016-11-06 | 俳句

磨ぐまへの米の温さよ良寛忌  中原道夫

茫洋と春のみづうみ國土なす  同

にんげんに卒業あらばその後何  同

バックミラーの逃水に追はれたる  同

いくそたび標的を外せる稲光  同

對といふ船形石の涼しさよ  同

午前より午後のみじかし藪椿  同

山開き磁石に意志の生じたる  同

噴水の天頂の玉入れ替はる  同

狼は時閒の溪閒さかのぼる 同