ピアノ鳴る家や西日の鬼瓦 柿本多映
満水の池を覆へり春の空 同
何喰はぬ顔の出てくる氷室かな 同
陽炎を跨いで入る非常口 同
八月の鯨のやうな精神科 同
ピアノ鳴る家や西日の鬼瓦 柿本多映
満水の池を覆へり春の空 同
何喰はぬ顔の出てくる氷室かな 同
陽炎を跨いで入る非常口 同
八月の鯨のやうな精神科 同
十二支の闇に逃げこむ走馬燈 黒田杏子
金柑を星のごと煮る霜夜かな 同
かもめ食堂空色の扉の冬籠 同
月の稲架古墳にありてなほ解かず 同
休診の父と来てをり崩れ簗 同
青桃に夕陽はとどく天主堂(カテドラル) 同 (五島列島 六句)
はまゆふは戸毎にひらく濤の上 同 (五島列島 六句)
日に透けて流人の墓のかたつむり 同
星合の運河の窓は灯りけり 同
青柚子や風の濡れたる濡佛 同 (宇都宮 多気山)
鮎落ちて那須野ヶ原の夕火種 同 (黒羽行)
帯文 : 瀬戸内寂聴