現代俳句選抄

ご恵贈頂いた書誌から、五島高資が感銘した俳句などを紹介しています。

柿本多映句集・高橋睦郎編『拾遺放光』深夜叢書

2020-12-05 | 俳句

ピアノ鳴る家や西日の鬼瓦  柿本多映

満水の池を覆へり春の空  同

何喰はぬ顔の出てくる氷室かな  同

陽炎を跨いで入る非常口  同

八月の鯨のやうな精神科  同

 

 


黒田杏子・句集『木の椅子』(増補新装版)コールサック社

2020-12-04 | 俳句

十二支の闇に逃げこむ走馬燈  黒田杏子

金柑を星のごと煮る霜夜かな  同

かもめ食堂空色の扉の冬籠  同

月の稲架古墳にありてなほ解かず  同

休診の父と来てをり崩れ簗  同

青桃に夕陽はとどく天主堂(カテドラル)  同 (五島列島 六句)

はまゆふは戸毎にひらく濤の上  同 (五島列島 六句)

日に透けて流人の墓のかたつむり  同

星合の運河の窓は灯りけり  同

青柚子や風の濡れたる濡佛  同 (宇都宮 多気山)

鮎落ちて那須野ヶ原の夕火種  同 (黒羽行)

帯文 :  瀬戸内寂聴