現代俳句選抄

ご恵贈頂いた書誌から、五島高資が感銘した俳句などを紹介しています。

岡田耕治・句集『使命』現代俳句協会

2022-03-20 | 俳句

てのひらを一度上向け春耕す  岡田耕治

散る花の中を昇れる花のあり  同

天道虫声を立てずに笑いけり  同

よく空を飛べる形に羊歯飾る  同

落蝉やもう一度飛ぶ形して  同

どこまでも正解のない秋の空  同

てのひらを落ち着かせたる冬林檎  同

もう少し電車にいたい秋の暮  同

 


永田満徳・句集『肥後の城』文學の森

2022-03-20 | 俳句

風を呼び風に従ひ凧上がる  永田満徳

薄氷の縁よりひかり溶けてゆく  同

大波に攫はるるごと昼寝かな  同

黙すまで聞き役となる涼しさよ  同

鶴の声天の一角占めにけり  同

天草のとろり暮れぬ濁り酒  同

年迎ふ裏表なき阿蘇の山  同

落葉踏む音に消えゆく我が身かな  同

過去のごと山重なりて夕霞  同

夏蒲団地震の伝はる背骨かな  同

争ひの双方黙る扇風機  同

白鷺のおのれの影に歩み入る  同

追はざれば振り返る猫漱石忌  同

春の雪いづれの過去のひとひらか  同

巌一つ寒満月を繫ぎ止む  同

不知火や太古の舟の見えてきし  同