現代俳句選抄

ご恵贈頂いた書誌から、五島高資が感銘した俳句などを紹介しています。

鈴木総史・句集『氷湖いま』ふらんす堂

2024-11-15 | 俳句

薔薇咲くや抜歯のあとのあをぞらを  鈴木総史

とんばうや蝦夷にあをぞらあり余る  同

背広にも晩年のあり漱石忌  同

薬飲むみづのまばゆし風信子  同

実石榴や触れればくづれさうな家  同


増田まさみ・句集『かざぐるま』霧工房

2024-10-04 | 俳句
にんげんの回転木馬さくら散る  増田まさみ
何処へも戻らぬひとよ冬花火  同
手花火の手の入れ代わるニルバーナ  同
空蝉にまだ陽の残る浅きゆめ  同
二つ折り厳禁とあり天の川  同
 

月野ぽぽな・句集『人のかたち』左右社

2024-08-10 | 俳句
街灯は待針街がずれぬよう  月野ぽぽな
真水汲むように短夜のFM  同
松茸に太古の空の湿りあり  同
まだ人のかたちで桜見ています  同
太陽は遠くて近し芒原  同
手袋に旅立ちの指満たしけり  同
 

坪内稔典・句集『リスボンの窓』ふらんす堂

2024-08-07 | 俳句

ころがしておけ冬瓜とこのオレと     坪内稔典

長崎に住もう枇杷咲く五、六日     同

リンゴにもオレにも秋の影ひとつ     同

ねじ花が最寄りの駅という日和     同

夕べにはすっかり晴れて栗ご飯     同


佐怒賀正美・句集『黙劇』本阿弥書店

2024-08-06 | 俳句

地平の目まだ半びらき真葛原     佐怒賀正美

乗るによき父の背いつか天の川     同

地球まだ知られぬ星か磯焚火     同

亀鳴くや天の沖には磁気嵐     同

くねりだす街の石みち鳥渡る     同

青嵐や骨のみで立つ電波塔     同


高橋睦郞・句集『花や鳥』ふらんす堂

2024-02-22 | 俳句

この星の春を盡すや又震ふ  高橋睦郞

踝に雲さやりつぐ川禊  同

變若水や有爲の奥山㝱深く  同

春惜む綾取りの橋壊しては  同

三界は火宅風宅三の酉 同

山や水有情無情や皆目覺む  同

高橋睦郞先生より句集『花や鳥』(ふらんす堂)を頂きました。先生には昔より要所要所で大変お世話になっております。ご上木をお祝い致しますとともに併せて心よりお礼申し上げます。「芭蕉一代の表現行爲を継承しようと志すなら、その爲事を尊敬しつつ、各人自分一代の爲事を志さなければなるまい」と帯文にあり、深く首肯致します。


「オルガン」33号

2024-02-11 | 俳句

菜種梅雨パレードにひつような橋  田島健一

山桜なにも言わずについてくる  同

人をさがしてと奉じてゐる遅日  鴇田智哉

菜の花の群れが空気を膨らます  同

つま先に春の闇から届く波  福田若之

ゆく春に折り目があれば分けやすい  同

ほんたうはつばきのなかにあることば  宮﨑莉々香

星ぼしや見えなくなつた手に手を振る  同

こゑが地に届いて枝垂桜かな  宮本佳世乃

ともに夜を生き桜蘂降りつづく  同

 


高橋亜紀彦・句集『異邦の神』朔出版

2024-02-11 | 俳句

何度開けてもないものはない冷蔵庫  高橋亜紀彦

仙人掌の永き夢から醒めて赤  同

曼珠沙華汝もサイコパスかも知れず  同

白梅や詩人は生くるために書く  同

長き夜や使ひみちなき砂時計  同

出目金の泪に誰も気づかざる  同