永き日の路地がいつしか貝塚に 岩淵喜代子
晩春の動物園に鴉啼く 同
路地裏の地母神となる瓢かな 岡本惠子
欠伸して叱られてゐる残暑かな 新木孝介
永き日の路地がいつしか貝塚に 岩淵喜代子
晩春の動物園に鴉啼く 同
路地裏の地母神となる瓢かな 岡本惠子
欠伸して叱られてゐる残暑かな 新木孝介
父何やら言うて秋の蚊払ひけり 山尾玉藻
へうたんのくびれに届く風呂明り 同
炎昼の力石てふ石三つ 杉浦典子
浅間嶺の煙あはあは走り蕎麦 浜口高子
てつぺんに黒蜥蜴ゐる渾天儀 堺谷真人
椅子にぎやか梅田の海のてんとむし 湖内成一
角砂糖少し歪みて梅雨明ける 鈴木達文
八月の海底よりの夕焼かな 大盛和美
引く潮と染む潮とあり秋の暮 島田牙城
虫籠の中まで晴れてきてゐたる 堀下翔
秋風に橋がいつぽん増えてをり 仲寒蟬
夜顔や勝手口から叔母の出て 樽本いさお
秋涼し五分遅れてバス来たる 天宮風牙
飛行機や朝顔ごとのうすい空 佐藤文香
新宿は天仰ぐ街天高し 高野ムツオ
鳥渡るいなりずしからなくなりて 渡辺誠一郎
鉄銹びて線路の好きな秋の蝶 増田陽一
ほおずきの熟れて小さき母の国 佐藤成之
葭切りの声が天守にまで届く 寺澤一雄
夏草やジーンズ疲れなる太もも 越智友亮
冷し瓜休んでゐるとわかるやうに 佐藤文香
中心に蜩のゐる林かな 東直子
苔となるたましひもあり羊歯の国 村井康司