天空は時の器や黒揚羽 小檜山繁子
曼珠沙華黄泉平坂まで咲けり 同
裏白の乾く葉先の微震かな 石井薔子
十月の影を卍に阿修羅像 対馬智恵子
もとよりの川があるからさくらかな 古川塔子
天空は時の器や黒揚羽 小檜山繁子
曼珠沙華黄泉平坂まで咲けり 同
裏白の乾く葉先の微震かな 石井薔子
十月の影を卍に阿修羅像 対馬智恵子
もとよりの川があるからさくらかな 古川塔子
野薊と別の時間を開封す 松井国央
水洗いして大根を無罪とす 同
流氷の軋む岬や鉄路果つ 泉信也
鉛筆をとがらせる朝霧に向けて 加藤絵里子
はらからや分水嶺の蝉時雨 井元一
時満ちることなし山に雪残る 高野公一
たのしひの昇る途中の竹を伐る 竹腰素
一瞬にやっと近づく枯蓮 山本敏倖
十六夜の爪の半月小さくなり 島田麻紀
路地一本夕焼の川となりにけり 井口あやこ
心経の無無に秋澄む響きあり 松浦敬親
生命線ぐいと曲りぬ盛夏かな 川島一紀
茶の花や畚払ひし塵ながれ 山尾玉藻
その家に椰子抜きんづる小春かな 同
流れ星拾ひし石のぬれてをり 杉浦典子
銀漢や富士駐屯地がらんだう 浜口高子
朝寒やスリッパ鳴らす寺男 小川軽舟
朝日また夕日に似たり破芭蕉 同
水破り錨出てくる秋暑かな 奥坂まや
ビル街の月光の水圧を行く 同
密柑山眩しきままに日は沈み 柳克弘
鳩の中歩み長月果てにけり 永島靖子
鳥兜一口乗せてもらひけり 加藤静夫
はじまりの一本離れ曼珠沙華 岡田耕治
それからを温めている石榴かな 同
街に居て静かになりし天の川 同
秋旱海の底へとおよびたる 同
いくたびかドア開いている初時雨 同
沈む陽に躓くことも冬の人 安田青彦
雨の冷え谷の底より足裏へ 高野ムツオ
不易とは地祇が坐すこと葛の花 渡辺誠一郎
おほかたの土偶はをんな蕎麦の花 栗林浩
月影に寄り添うように旅立ちぬ 佐藤成之
谷底の空の末廣十二月 島田牙城
菊農家長兄なりし検査技師 海野良子
葉脈は楓の裏につづきけり 堀下翔
鰯雲ふらふらゆけば橋がある 小林苑を
月光の冴えたり粗大ごみ置場 媚庵
茸食ふ茸のやうな頭の子 仲寒蟬
盛り塩は置かれたばかり実南天 天宮風牙
雨のなか車輌をつなぐ冬になる 佐藤文香
月あげてまだ来ぬ夜を雁渡る 谷口智行
曼珠沙華の向かうの曼珠沙華を見る 男波弘志
冬晴の大きなしだれ桜の木 上田信治
曼珠沙華咲く青空を壊しつつ 月野ぽぽな