一九三八年一一月九日深夜
水晶の夜映寫機は碎けたか 堀田季何
戰爭と戰爭の閒の朧かな 同
日の本の中心や色變へぬ松 同
合歓の花どこまでもゆく舟に乗り 村松二本
月山を前に座りぬ露の玉 同
ゆきゆきてアジアの奥に月見かな 同
指を嗅ぐ少年蝶を放ちしか 谷口智行
裏返す死者へこの世の冬銀河 同
神ときに草をよそほふ冬の月 同
目の玉がUFOを呼ぶ鳥威し 上野犀行
ディランの詩もて平成の日記果つ 同
イマジンに始まるラジオ冬銀河 同
みはるかすはるのかすみはくはねども 中原道夫
兄事する石塊のありひきがへる 同
それまでのことこれからのこと落葉して 同