母はふるさとの風

今は忘れられた美しい日本の言葉の響き、リズミカルな抒情詩は味わえば結構楽しい。 
ここはささやかな、ポエムの部屋です。

窓から金モクセイが

2015年09月28日 | 
窓を開けると金モクセイが匂って来る
わたしは猫の匂いを探していた
耳の匂いと肉球の匂い
長い間に壁に天井に沁みついた懐かしい猫の香り

木犀の匂いはしても
猫の匂いも姿もない今年の秋
色づき始めたケヤキの大樹
さやさやゆれるすすきの穂の群れ
でももう金色の目 しなやかな手足
ゆらゆら揺れた灰色のしっぽはない
窓辺から流れることしのモクセイの香り

その甘い匂いのなかで
羽をはやして飛び去っていった猫の後ろ姿が浮かぶ
振り返らずに空に上がっていった猫が青い空に溶ける
変わらぬものは何もなくても金モクセイはいつものように匂い
透きとおるような 今年の秋

コメント (4)
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