ハリエット嬢(9)
Miss Harriet (9)
————————————【9】—————————————————
———————————— (I) —————————————————
J'avais alors vingt-cinq ans et je faisais le
rapin le long des côtes normandes.
J'appelle « faire le repin », ce vagabondage sac
au dos, d'auberge en auberge, sous prétexte
d' études et de paysages sur nature.
———————————〖試訳〗—————————————————
当時の私は25歳でした.ノルマンディー地方の
海岸沿いで画家の見習生をしていたのです.
私は、バックパッカー姿の宿から宿へと放浪する流れ
者を自然風景の学業だと言いつくろって「画家見習生」
と自分でそう呼んでいました.
———————————〘語句〙—————————————————
rapin (m) [古] 画家の弟子、画学生
❷へぼ絵描き
normand(e)(s) (形) ノルマンディー地方の
le long de ~ ~に沿って
vagabondage (m) 放浪、放浪生活
prétexte (m) 口実
sous prétexte de ~ ~という口実で
étude (f) 学問 (複数で)学業
———————————≪文法≫—————————————————
J'appelle « faire le repin », ce vagabondage sac au
dos, d'auberge en auberge, sous prétexte d' études
et de paysages sur nature.
appeler [アプレ]という動詞は[属詞]と[直接補語]の2つ
の連結を取ることができる甲斐性のある動詞です.
(…を)(…と)名付ける//
Ils apperlleront leur prochen fils François.
彼らは今度生まれてくる息子をフランソワと名付けるつもりだ.
appeler は単純未来ではappell と語幹末が2つつくことに注意.
ん、何ですか?今度生まれてくるのが娘だったらどうするか?
ああ、困ったね.
映画「シェルブールの雨傘」をご存じですか?
今度生まれてくる子が男の子なら「フランソワ」女の子なら
「フランソワーズ」にするって言ってました.
名詞に女性形があるフランス語の特権ですね.
話が脱線しました.実は文型の話をしようと思っていたのです.
英語なら文型は5つあって、第5文型に当たるのが
We will call our next baby François.
なのですが、
フランス語ではこれが第6文型に相当します.
つまり、文型が1つ多いのです.
何?心霊写真みたい?足が1つ多いとか、
いや、そうじゃなく、えーとじゃ、
6つとも書き出します.
文法用語が、英語のときに使った「補語」が「属詞」
になります.記号はAに変ります.(補語=C 、属詞=A)
❶ 第1文型:S+V
❷ 第2文型:S+V+A
❸ 第3文型:S+V+OD (ODは直接目的補語)
❹ 第4文型:S+V+OI(OIは間接目的補語)
➎ 第5文型:S+V+OI+OD
➏ 第6文型:S+V+OD+A
なんで英語のときより1コ文型が多いのか、よく見ると
その正体は、❹の第4文型.これは英語でいえば、
「主語+動詞+間接目的語」.
具体例を挙げると、
Il écrit à son amie. / He writes to his girl friend.
前置詞+名詞は「目的語」の資格がないのが英語.
ところがフランス語は、これにも「間接目的補語」の資格を
与えます.
まあそういうわけで
Ils apperlleront leur prochen fils François.
彼らは今度生まれる男の子をフランソワと名付けるでしょう.
は第6文型になります.
では前置きはこれぐらいにして、
J'appelle « faire le repin », ce vagabondage sac au dos.
私は背中にリュックを背負ったその漂泊者を『画家修業をする』
と呼ぶ.
この文型は、そう➏の第6文型になります.
フランス語で名詞が2つ並んで出てきたら、まずこの第6文型
を疑います.第5文型は無視して大丈夫です.フランス語の
第5文型は名詞が2つ並ぶことはありません.
どういうことかと言いますと、
英語で He gives François the book. / 彼はその本をフランソワにあげる.
はフランス語では
Il donne François le livre. とはいえません.
間接目的補語には必ず、前置詞を介すことになっているからです.
Il donne le livre à François.
と、前置詞を仲介する必要があります.
だから英語より文章解釈は少し楽になります…といいたいが、
あまり変らない.置き換えが多いんです.
Il donne le livre «vagabondage » à François.
目的語が3つあるわけではありません.livre と«vagabondage »
は同格で、1つの直接目的補語です.言い換え、置き換えにも
慣れましょう.
(彼は「漂白生活」という本をフランソワにあげる)
最後にもう1点、
sac au dos ですが sac のまえにà とかavec を補って読みましょう.
これは一種の分詞構文で、元の形ayant son sac au dos でayant son が
脱落したもの.(ayant の他には tenant が考えられます).