さすらいの青春(261)
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Et elle se mit à raconter qu'elle y avait sa fille
en place, qu'elle venait à pied pour la voir tous
les premiers dimanches du mois et que ses patrons...
—————————(訳)—————————————————
それから彼女は、自分の娘がこそに住んでいて、毎月
第一日曜日に、ご主人を連れて徒歩で自分に会いにやっ
て来てくれることや、母子それぞれの主人たちのことな
どを話し始めた.
..————————⦅語句》————————————————
en place:しかるべき場所に
patrons:(pl) 娘さんに旦那がふたりいるわけではなく
この場合、主人どうしが(仲良く酒酌み交わし
ながら、一か月の苦労話に花を咲かせたのでし
ょう.そのことは、読者側で想像して下さいと
いうわけで、...とフェイド・アウトされてい
ます.つまりここのses patrons はchaque patron
のことです.
一応念のため、他の定訳本を見ておきましょう.
みすず書房版;「そしてその主人や主婦というのは…」
patrons = patron et partonne と解釈しています.
もちろんこの解釈も可能です.
岩波文庫:「そして主人たちは…」
patrons =chaque patron
ただしこの本では母のほうが娘に会いに行くと
訳されています.
qu'elle venait à pied pour la voir のelleは、どち
らにも解釈ができます.自然な解釈はこの場合
venir が「来る」ということなので娘夫婦がやっ
て来るのだと思います.
qu'elle venait à pied avec son mari pour la voir
のことでしょう.
角川文庫:「娘が会いに来てくれるし…(中略)…その主人
というのは」
elleを娘と解釈していますが次のpatrons を単数
と見なしています.ちょっと無理な解釈のよう
です.
旺文社文庫:「むすめが…(中略)…自分に会いに来てく
れること、その主人というのは…」
elleは娘ですがpatrons を単数形に訳していま
す.
講談社: 「自分の娘が奉公に出ていて…(中略)…会い
に来てくれるし、またその主人たちというの
は…」
patrons は複数形で受け入れて、その主人を奉
公先の主人たちと解釈しています.
パロル舎: 「自分の娘が就職しているが、…(中略)…
自分に会いに来るし、その雇い主というのが
…」
elle は娘、patronsは単数解釈で「雇い主」
以上、本によって様々な解釈を取っていますが、
訳者も混乱するような箇所は、試験問題には出ないと思い
ますので、まずご安心ください.