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台湾TSMCにさらに差をつけられたサムスン電子

2021-12-04 18:43:33 | 日記
台湾TSMCにさらに差をつけられたサムスン電子

今年7-9月期の世界半導体ファウンドリ(委託生産)市場で、2位のサムスン電子と1位のTSMC(台湾)の市場シェアの差がさらに広がったことが分かった。

市場調査会社トレンドフォースが3日に明らかにしたところによると、
サムスン電子の今年7-9月期のファウンドリ市場シェア(売上基準)は今年4-6月期(17.3%)より0.2ポイント下がって17.1%だったという。

一方、TSMCの市場シェアは0.2ポイント上がって53.1%で、両企業間の市場シェアの差(36ポイント)は前分期より0.4ポイントさらに広がった。

前分期と比べたサムスン電子のファウンドリ売上の伸び率は11%、TSMCは11.9%だった。

半導体業界関係者は「TSMCは、7-9月期に発売されてよく売れたアップル社の『iPhone 13』に主な半導体を事実上、全量供給したことが奏功した」と話す。

7-9月期の市場シェア3位は台湾UMC(市場シェア7.3%)で、以下、米グローバルファウンドリーズ(6.1%)、中国SMIC(5%)の順だった。

トレンドフォースによると、今年7-9月期のサムスン電子をはじめとするファウンドリ上位10大企業の全売上高は前分期比11.8%増だったとのことだ。

2019年7-9月期以降、9分期連続で最高の上昇率を出している。

トレンドフォースは「今年10-12月期も5G(第5世代移動通信)やIoT(モノのインターネット)分野の半導体需要増加でファウンドリの売上成長は続くだろう」と見込んでいる。

サムスンの李在鎔副会長が訪米日程を終えて韓国に戻った後、サムスンは1000億ドル(約11兆3000億円)以上の現金保有という強みを頼りに国際的な半導体大手1社の合併・買収あるいは数社への資本参加を選択する可能性が高いことが明らかにした。

対象にはテキサス・インスツルメンツ、ルネサスエレクトロニクス、NXPセミコンダクターズ、インフィニオン テクノロジーズ、STマイクロエレクトロニクスなどTSMCの重要顧客が含まれているという。

「テキサス州テイラーにサムスンの新工場が完成すれば、韓国・平沢工場の最新の生産ラインとともにサムスンの世界の半導体生産の重要地点になり、ロジックチップ分野における弱点を補うのにも役立つ」と台湾メディアは報じているが、重要なのはテイラー工場と北米の顧客との近さが受注やサービス提供に有利との指摘もあり、両社の競争は今後さらに激化する。

がしかし、現在のサムスンでは巨額買収に限界がある。

自社技術向上よりも買収ありきでは限界と言う意味だ。



韓国・文大統領が「オミクロン株」でピンチ、与党内の分断が深刻に

2021-12-04 16:00:11 | 日記
韓国・文大統領が「オミクロン株」でピンチ、与党内の分断が深刻に

武藤正敏:元・在韓国特命全権大使
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国際・中国元駐韓大使・武藤正敏の「韓国ウォッチ」


2021.12.4 5:05

新型コロナウイルスの感染者の急拡大とオミクロン株の感染は韓国・文政権に致命的な打撃となりかねず、こうした中で与党内の分断が深刻化しつつある

文在寅大統領の就任後
進む韓国社会の分断

 文在寅氏が大統領就任後に直ちに進めた「積弊の清」では、「進歩」と呼ばれる革新系と保守系の分断を助長してきた。

 貧富の格差はますます拡大し、持てる者と持たざる者が互いを侮辱し、軽蔑し、そして反目するようになった。

 年齢層でも分断が広がり、若者の住宅購入、結婚、育児の夢を奪い、既存世代との反目を助長してきた。

ソウルと釜山市長選挙での与党の大敗が物語っている。

 男性と女性の間でも、フェミニズム運動の是非をめぐり対立している。

 経営者、労働組合も相互の利益のために協力する姿勢は見えず、対立を繰り返している。

 司法や捜査機関も判事や検事の政治的性向で判決や捜査状況が左右されてきた。

そのため同様な事件で異なる判決が繰り返されている

 メディアも政治性向によって、その報道内容に大きな差が生じている。

こうした社会の分断の中でも、政権与党内の団結は固く、政策の失敗やスキャンダルがあってもお互いにかばい合い、反対派をたたくことで自己を正当化、独裁体制を確立し、
文在寅政権5年目となってもレームダック化を防いできた。

 しかし、ここに来ての新規コロナ感染者の急拡大とオミクロン株の韓国内感染である。

 韓国は既に冬季に入っている。新規のコロナ感染は増えるだろう。

そしていったんオミクロン株の感染が拡大し始めると、韓国政府にとって有効な対策は取りづらくなるだろう。

そうなれば文政権を支えてきたコロナ対策「K防疫」成功の神話は瓦解するだろう。

K防疫の失敗は、文政権に致命的な打撃を与えかねない。
 その時に、与党「共に民主党」の次期大統領候補である李在明氏がどう動くか。

文大統領と運命を共にすることにはならず、与党内で文大統領派と李在明氏が対立分断されるような状況になっていくのではないか。

文政権の分断政治の結末は、文大統領と李在明氏の関係にも溝を作るのだろうか。

感染者数は過去最多

高まる医療崩壊リスク

 文政権が先月1日から進めた段階的日常回復(ウィズコロナ)で1カ月間に新規のコロナ感染者は倍増。

2日の発表では5266人と1日に初めて5000人を突破してから2日連続で5000人を超え、過去最多となった。

これまでの最多感染者は先月24日発表の4115人だった。

重症患者も733人で前日の723人を10人上回り過去最多を記録した。

死者が増大しているのは医療体制が追い付かないからだとも言われている。

 特に緊急の課題は医療崩壊をいかに最小限に食い止めるかである。
 全国のコロナ重症者用病床は先月29日、1154床のうち906床が既に使用中(使用率78.5%)で、政府が「非常計画」の発動を検討する基準である75%を初めて超えた。

 ソウル市に限れば91%であり、ソウル市の5大病院の重症者用病床で残っているのは8床のみである。

最悪の場合、12月末に重症者用病床が最大2000床まで必要になる可能性があるという。

 これを受け、韓国政府はコロナ患者に在宅医療を原則として適用することにした。

しかし、専門家は「(これは)在宅治療ではなく事実上在宅監察という状況で、高齢患者は少し悪化するだけですぐに重症、死亡につながる恐れがある」と警戒している。

そうなれば重症病床のひっ迫はさらに深刻になり、誰の命を優先するかという選択肢しかなくなる恐れがある。
「K防疫成功」の国際的評価が失われる
 
韓国で1日の新規感染者が5000人を超え、過去最多を記録したことを海外メディアが一斉に報じた。

 ロイターは
「隣国の日本は感染を抑制し、東京の新規感染者数を一けたにおさえているが、韓国は他の国々と同様に推移している」
「400人未満だった先月初めに比べ、急激な増加傾向にある」と報じた。
 APは「保健の専門家らは、経済への影響を考えて先月に緩和された社会的距離確保の規制を、再び施行すべきだと主張した」と述べている。

 K防疫成功に韓国国民が酔いしれたのは、これによって文大統領の国際的評価が高まり、韓国の国際的地位も高まったという高揚感が大きな要因となっていた。

しかし、新型コロナ感染の拡大に伴う苦しみに加え、韓国の国際的評価が失われることは文大統領に対する失望につながっていくだろう。

感染拡大を抑える
有効な手立てがない政府
 
韓国政府はK防疫に伴い、これまで飲食店に営業時間の短縮、入店人数の制限、客の個人情報確保・提供などさまざまな規制をかけてきた。

 しかしその結果、コロナ以降1年6カ月で自営業者は66兆ウォン(約6.3兆円)を超える負債を抱え込み、1日平均1000店以上の店舗が廃業し、45万店以上が閉店したという。

京卿新聞の調査によると、韓国の飲食店が受けた政府の支援や補償は他の先進国の10~20分の1程度である。自営業者の苦痛はあまりにも長い期間放置されてきた。
 新規感染者が過去最多を記録したにもかかわらず、政府は有効な対策を打ち出せていない。

規制を強化すれば、自営業者の廃業・倒産は一層増大するであろう。

しかし、社会的距離確保を進めなければ、新規感染者は一層増大し、日常の回復は一層遅れるであろう。

 そこに来てのオミクロン株の世界各国への拡散である。

1日に行われた中央防災対策本部の説明によると、先月24日にナイジェリアから入国した40代夫婦ら3人がオミクロン株に感染していた。

 これに先立ち、23日にナイジェリアから帰国し新型コロナ感染が確認されていた50代女性とその知人ら2人もオミクロン株に感染していた事実が追加で確認された。

さらに悪いことに40代夫婦がワクチン接種完了者だったため、移動制限を受けていなかった。それゆえ今後、地域社会への感染も懸念される。

李在明氏を悩ませる
文大統領との距離感

 文大統領が誇ってきたK防疫の成果は、既に風化した。

残された事実は、文大統領が行ってきた政策はほぼすべて失敗だったということである。

 李在明氏は、与党「共に民主党」の中では非文在寅派である。

大統領選挙に勝ち抜くためには親文在寅派の支持を得ることが不可欠である。

また、文大統領の支持率は一時下がったこともあったが、概ね40%前後を維持している。

このため、親文在寅派と離れることはあまり得策ではなかった。

 他方、次期大統領選挙に勝つためには20代、30代や中間層の支持が欠かせない。

しかし、若者世代の支持は文大統領から離れてしまった。

中間層の人々も文政権に期待していた「公正さ」がむしろ遠のいたことから、革新系の文政権に失望し、支持が離れてしまった。

 こうした状況下で文大統領と同一視されることは、李在明氏の選挙活動にとって有利に働くとは考えられない。

李在明氏にとって、文大統領との距離感をどう取っていくのかは難しい課題となっている。

李在明氏が
文大統領批判を強める理由

 朝鮮日報は、「李在明氏、候補になった途端に態度が変わった」と題する記事を掲載した。

同紙は、李在明氏が文政権との違いを強調する選挙戦略について青瓦台は苦々しく感じているようだ、と報じている。

 李在明氏はすべての国民を対象に25万~30万ウォン(約2万4000~2万9000円)の災害支援金を上乗せして支給するよう文政権に要求した。

ただ、この要求に対する支持が多くないことから短期間のうちにこの公約は撤回した。

 また、若者を取り巻く問題についても、「私たちは彼らが感じている苦痛に本当に共感し、話を聞こうと切実に努力でもしたのだろうか。

最近は深く反省しつらく感じている」と述べ、現政権の政策を遠回しに批判した。

 李在明氏は20代、30代に会って感じたこととして、このように若者の苦痛に言及した。

これは若者の支持を狙った発言だが、同時に文政権の政策を批判したものと受け取られている。

何事も自画自賛で反省しない文政権からすれば厳しい指摘だろう。

 政府与党からは、大統領選挙に出馬した過去の候補者たちはほぼ例外なく任期末となった政権との違いを強調してきたという声が出ている。

その時の政治的状況によって、政権と政策面で距離を置く候補者から、レームダック化した大統領と対立する候補者までさまざまだ。

 朴槿恵(パク・クネ)氏は李明博(イ・ミョンバク)大統領に離党を求めなかったものの、それ以外の大統領は皆、政権の最終年に離党させられてきた。

 文大統領は20代、30代の若者、中間層の支持を失った。

このため李在明氏としても、彼らの不満をそらすためには、文政権の政策とは差別化を図らざるを得ない。

 しかし、そのことは親文在寅派が主流を占める「共に民主党」内部の結束を揺るがすことになる。

李在明氏の行動に対する親文在寅派の警戒心は高まっており、与党内の李在明氏への支持を揺るがす事態に発展する可能性もある。

李在明支持派による
相次ぐ差別発言

「共に民主党」の選挙対策委員会懸案対応タスクフォースの副団長を務める黄雲夏(ファン・ウンハ)議員は先月28日、最大野党「国民の力」の尹錫悦(ユン・ソクヨル)候補の支持者について、自らのフェイスブックに「ほとんど低学歴で貧困層、そして高齢層」と指摘し問題となった。

 これに対し「共に民主党」の宋永吉(ソン・ヨンギル)代表は、「尹候補を支持する国民を批判し、訓戒するかのような姿勢は非常に傲慢(ごうまん)で危険な態度だ」と批判した。
 さらに李在明氏の随行室長の韓俊鎬(ハン・ジュンホ)議員はフェイスブックに「2児の母キム・ヘギョン氏(李在明氏夫人)vsトリ(ペットの名前)の母キム・ゴンヒ氏(尹錫悦氏夫人)」と書き込み、問題となった。
『さまよえる韓国人』(WAC)
次期政権でも『さまよえる韓国人』は続くと解説した話題本。12月22日発売予定

 野党「正義党」の張恵英(チャン・ヘヨン)議員は、「出産したかどうかで女性の優劣をつけるという性差別的な認識」と強く批判した。

 選挙対策委員会関係者による相次ぐ差別的な言行について、「共に民主党」では「リベラル陣営が掲げる『政治的正しさ』の原則や道徳的価値が損なわれかねない」「有権者から『民主党は偽善』とみられるしかない」との懸念が持ち上がっている。

 このように李在明氏の支持派に対しては、親文在寅派からの懸念が高まっている。

李在明氏ばかりではなく、その支持派からもポピュリスト的言動が目立っているが、それは「共に民主党」の主流派の意向にはそぐわないだろう。

今後、非文在寅派、親文在寅派は単に政策面のみならず、行動面からも対立は深まっていく可能性がある。

 それは「共に民主党」内の分断を加速化させ、大統領選挙の行方にも影響を及ぼしかねない。
(元駐韓国特命全権大使 武藤正敏)



日本「年収30年横ばい」の黒幕は内部留保。労働生産性に見合った賃金を払わぬ大企業の罪

2021-12-04 15:15:40 | 日記
日本「年収30年横ばい」の黒幕は内部留保。労働生産性に見合った賃金を払わぬ大企業の罪

勝又壽良
2021年11月28日ニュース

世界的な物価上昇が起こっているが、日本は「さざ波」程度だ。

低物価・低金利・低成長・低失業の4点セットになっている。

日本人の賃金が上がらないのは、労働生産性が低い結果でなく、労働分配率が低い「異常現象」である。

労働生産性に見合った賃金でないのだ。

こういう事実を認識して、「労働に見合った賃金」を受け取り、日本経済を正常化させるべきである。(『勝又壽良の経済時評』勝又壽良)

※本記事は有料メルマガ『勝又壽良の経済時評』2021年11月25日号の一部抜粋です。

ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にご購読をどうぞ。当月配信済みのバックナンバーもすぐ読めます。

プロフィール:勝又壽良(かつまた ひさよし)
元『週刊東洋経済』編集長。静岡県出身。横浜市立大学商学部卒。経済学博士。1961年4月、東洋経済新報社編集局入社。週刊東洋経済編集長、取締役編集局長、主幹を経て退社。東海大学教養学部教授、教養学部長を歴任して独立。

日本は「低物価・低金利・低成長・低失業」の4点セット


サプライチェーンの停滞によって世界的な物価上昇が起こっている。

その中にあって、日本もエネルギー価格の上昇はあるが、物価水準としてならせば「さざ波」程度である。依然として、低物価に変わりない。
欧米の金融当局は、消費者物価上昇に頭を悩ませている。日本では、物価が少しは上がって景気が刺激されれば良いという、「期待感」をのぞかせている。

日本経済はまったく別次元をさまよっているが、低物価だけ突出しているのではない。「低物価・低金利・低成長・低失業」の4点セットになっている。これが特色である。
将来の先進国経済が進むべきひな形が、日本に見られるというイメージもある。だから、このままで良いかと思われがちだが、そうでないことを指摘したい。
日本の労働生産性が低い結果でなく、労働分配率が低い「異常現象」である。労働生産性に見合った賃金でないのだ。こういう事実を認識して、「労働に見合った賃金」を受け取り、日本経済を正常化させるべきである。

ガンは労働分配率の低下


こういう書き方をすると、煽動しているように見えるがそうではない。

日本経済に活力をもたらすには、労働に見合った賃金を受け取ることで所得が増えて消費増につながれば、「万年低物価」という沈滞ムードを打破できる。

1980年代まで、高度経済成長時代の家庭は、すべて「共稼ぎ」でなくても家計を維持できた。

それは、年々の賃上げがそれなりに期待できたからである。
現在は、共稼ぎが普通である。

それでも、住宅を買えば苦しくなる状態だ。

むろん、当時とは潜在成長率で天と地もの違いがあるから当然、起こるべきことである。

ただ、今の「雀の涙」程度の賃上げでは、日本経済が循環しないのだ。

30年前の労働分配率は、現在よりに約10%ポイントは高かったのである。

そこで、せめて生産性上昇に見合った賃上げを行なうべきだ。
実は、生産性上昇率に見合った賃上げをしていない結果、企業の内部留保(利益剰余金)は増える一方である。

財務省の「法人企業統計」によれば、2020年度は過去最高の484兆円に達している。

2020年、日本の名目GDPは538兆円である。何と、名目GDPの89.9%にも相当する金額が、内部留保となって眠っているのだ。

むろん、これだけの内部留保があるから、安定した雇用を確保できるというメリットを否定するものではない。

大きな経済的なショックが起こっても、従業員を解雇せずに一時的な赤字で凌げる体力をつくっていることを認めなければならない。

だが、そういう「保険」のために日々、生活に苦闘している従業員を犠牲にすることは、回り回って自社の業績にも響くという「合成の誤謬」に気付くべきであろう。

「物価上昇は悪」という刷り込み

先に、「低物価・低金利・低成長・低失業」が4点セットになっていると指摘した。

これは、日本的経営の特色を100%表している。

日本企業が、名目GDPの約90%にも相当する内部留保を抱えていることの必然的結果だ。

誤解ないように指摘したいが、名目GDPはフロー概念であり、内部留保はストック概念である。

単なる比較論で言っているだけである。

日本の消費者物価上昇率(前年同月比)は、1993年以来、2008年夏場の2ヶ月をのぞけば、2%を超えたことがない「超安定状態」である。

消費者物価が上昇しても、必ず「0%」に引き戻されるほど、このラインが強い吸引力を持っていることが分かる。

これには、次に述べるような「メカニズム」が、消費者の中に出来上がっているのでないかと思わせるほどである。

所得上昇率が低いという事情があるものの、「物価上昇は悪」という認識を決定的に刷り込ませてしまっていることだ。

過去、消費税率引き上げのとたんに景気を冷やしたのは、この「物価上昇は悪」というイメージに逆らったからである。

賃上げ率を上まわる消費税率引き上げは、消費者にとって容認しがたいことなのだ。

現状の低い賃金引き上げ率が続くならば、今後の消費税引き上げは絶望と見たほうがよい。

政府が将来、消費税率引き上げを考えているとしたら、生産性に見合った賃上げルールを確立して実行することが大前提になる。

消費税率を引き上げられるほどの体力(賃金引き上げ率)を持つ日本経済へ回復させるには、賃上げルールをどのように確立するかである。

政府が、民間企業の賃上げに干渉することは不可能である。

だが、望ましい経済運営に当っては、労働生産性上昇率に見合った賃上げが不可欠である。

税制で、その誘導策をいかに設けるかである。

政府は、労使の自主交渉を見守りながら適正に誘導する政策手腕が問われる。

岸田政権は、労働分配率問題に触れているので、そのルートを早く示すべきである。

働きに見合う賃金が必要

労働分配率という言葉を使うと、何か労働運動推奨のような雰囲気になりそうだが、そうではない。

自分が働いた成果である労働生産性に対して、どれだけの賃金を貰ったかという問題である。

むろん、100%は不可能である。企業の拡大再生産に必要な利益を残さなければならない。

一方、分配率が下がれば労働者の所得が減って消費が減り、経済循環がスムーズに行かなくなるというのも現実である。

こういうバランスを考えると、適正分配率があるはずである。その適正分配率がどこにあるかを次のデータによって探り当てたい。

 労働生産性 平均年収 労働分配率
1991年:61.382ドル 39.939ドル 65.06%
1995年:62.865ドル 40.543ドル 64.49%
2000年:66.639ドル 41.004ドル 61.53%
2005年:71.416ドル 41.553ドル 58.18%
2010年:72.372ドル 40.705ドル 56.24%
2015年:75.035ドル 39.828ドル 53.07%
2019年:75.384ドル 41.726ドル 55.35%
※出所:労働生産性はILO、平均年収はOECD、労働分配率は筆者試算
ドル換算であるから、円相場の変動を反映するが、労働分配率の計算に支障はない。

このデータを見て気付くことは、バブル経済崩壊の後遺症がはっきり表面化してきた2000年以降、労働分配率が顕著な低下を見せたことである。

労使協調を合い言葉に「企業防衛」を最優先した結果が、このような分配率低下をもたらしたのである。

労働側は、雇用確保が最大のテーマになったので、賃上げ闘争をしない大企業労組も目立った。

この賃上げ自粛は、労働側に「一時避難」でなく、労働運動そのものを放棄させるという思わざる方向へ行ってしまった。

無力化された日本の労組

経営側は、バブル崩壊で倒産した有名企業を目のあたりにしてきただけに、賃上げを渋るという守りの姿勢に転じた。
私は、労働組合関連通信社と長年コンタクトがあり、労働組合運動の衰退を肌で感じてきた。

現在の日本で、末端の労働組合運動は賃上げでめぼしい成果を上げられないことから「開店休業」状態の労組が続出している。
これは、決して歓迎すべきことではない。

韓国の労組のように韓国経済に支障を及ぼす存在になっても困るが、日本のように弱体化する労組も大きな問題である。

労使は、良い意味で「緊張関係」に立たなければならない。労使が馴れあいになると、経営者側に緊張感を欠如させる危険性が高まる。

社名を出すと差し障りがあるので匿名とするが、戦後からの労使関係で緊張関係を欠いていた企業は、仮に大企業であっても発展の芽が摘まれることは間違いない。現に、そうなっている。

対立ばかりでも駄目、なあなあの緩い関係も駄目である。ほどよい緊張関係が、企業を発展させるし、従業員の待遇も改善する。

労働分配率を60%台へ引き上げる必要
以上のような視点で、前記の労働分配率推移を見ていただきたい。

1991年の労働分配率は65%である。95年も64%を維持していた。この6割台の労働分配率が、妥当なものとすれば、現在(2019年)は、約10%ポイントも低下している。
これが、日本経済を「低物価・低金利・低成長・低失業」の状態にさせた要因と思われる。

低失業率は、マクロ経済政策でアベノミクスにより潜在成長率を引き上げた政策効果による。

一方で労働分配率の低下が、アベノミクス効果を相殺したことは疑いない。安倍政権でも、経営側に賃上げを大いに働きかけたが、「経営論理」の壁に阻まれた。
こういう、過去の経験を生かせば、税制の活用が必要であろう。

ただ、企業の内部留保に課税するという乱暴な議論が登場して、この議論は空転した。

ここへ、さらに課税することは「二重課税」である。これは、税法上あり得ない議論である。

こういう「愚論」を避けるには、労働分配率のガイドラインをつくり、それを達成した企業には税法上のメリットを与えることだ。ガイドラインでは、60%台の労働分配率へ引き上げることを目標にすべきである。

日本株の魅力は内部留保

皮肉なことだが、海外から日本株が注目されている。

その主たる理由は、日本企業の内部蓄積の厚さである。
法人企業統計によると、企業の2020年度末の「内部留保」(金融・保険業を除く)は前年度末に比べ2.0%増の484兆3,648億円であった。2012年度以来、9年連続で過去最高を更新している。

労働分配率が低下しながら、内部留保は9年連続の過去最高の更新である。この10年で約1.6倍に拡大している。

このうち約半分に当たる242兆円は、資本金10億円以上の大企業によるもの。
これは、大きな違和感をもたらす。経営側が、自らの地位安泰を図るという「守りの経営」を如実に示しているからだ。

役員にとって、財務内容が良ければ外部から干渉され、ポストを脅かされることはまずない。

労働側には、経営の外部環境の悪化をことさら強調して賃上げを渋る。

一方では、手厚く内部留保を積み増す。

こういう構図が、日本経済にでき上がったのである。

過去9年にわたる内部留保の積み増しは、労働分配率の顕著な低下と軌を一にしている。

しかも、大企業では役員に「ストック・オプション」制度を付与している。

自社株をあらかじめ定められた価格で取得できる権利である。

役員だけでなく、従業員にもこの権利が与えられている。だが、多くは役員であろう。

となれば、適正な賃上げを退け、内部留保へ回して株価を引き上げることは本末転倒というべきだ。

最近、普及してきた「コーポレートガバナンス」(企業統治)は、株主の権利保護と不祥事防止のための経営監視の仕組みである。

だが、株主以外の主要利害関係者である従業員の利益を損ねた企業統治などあり得ない。

日本企業は、株主利益だけを企業統治と考えているとすれば、大きな間違いである。

株主・従業員・取引先・自治体の4者が利益を受けるべきである。これが、正しい企業統治の在り方である。

北京五輪「日本の名誉のため外交ボイコットを」 ペマ・ギャルポ氏

2021-12-04 14:51:34 | 日記
北京五輪「日本の名誉のため外交ボイコットを」 ペマ・ギャルポ氏

2021/12/3 17:37

取材に応じるペマ・ギャルポ拓殖大教授

北京冬季五輪の開幕が2カ月後に迫る中、香港やチベット、新疆ウイグル自治区などで人権弾圧を繰り返す中国政府に対して欧米諸国などが「外交的ボイコット」を検討しており、岸田文雄首相が強い姿勢を示せるかが焦点となっている。

チベット出身の政治学者、ペマ・ギャルポ拓殖大教授は産経新聞のインタビューに対し「日本の名誉のためにも外交的ボイコットという明確な態度を示すことが非常に重要だ」と強調した。インタビューの要旨は以下の通り。
北京冬季五輪をめぐっては当初、チベット人やウイグル人の支援組織ぐらいしか開催反対を主張していなかったが、今では世界の180もの人権団体や組織が、自国政府や国際社会に何らかの形で反対姿勢を示すよう訴えている。

そうした動きは中国最高指導部の元メンバーに性的関係を迫られたと告白したテニス選手の彭帥(ほうすい)さんの安否問題が出たことでさらに加速している。日本だけが態度を明確にしないのは日本のイメージのために本当によくない。


安倍晋三元首相はよく、普遍的な価値としての自由や民主主義、人権に言及していたが、普遍的な価値ならば、相手がどういう国であれ、モノを言っていかなければならない。今月9、10日両日には米政府主催の民主主義サミットが開かれる。岸田首相が胸を張って出席できるよう明確な態度を示すことが非常に重要だ。

国際人権問題担当首相補佐官まで任命したのに、現段階で首相から明確な発言が出ているようには見えない。

もっとも政府ばかりを責めるのではなく、自ら人権派、リベラルと称する人やメディアにも同じことを問いかけたい。東京五輪・パラリンピック組織委員会会長だった森喜朗元首相の女性をめぐる発言を拡大解釈し、鬼の首を取ったかのように騒いだ芸能人やスポーツ界、野党の女性国会議員が彭さんの問題に黙り込んでいるのはおかしい。

日本は、実際にあったか、なかったかも明確でない「南京大虐殺」のようなものを「反省」するが、今起きている新疆ウイグル自治区における大虐殺やチベット、南モンゴル、ウイグルでの言語の禁止という民族の魂を奪うに等しい文化的虐殺に対し、傍観者的な態度を取ってよいのか。

政府の政策は、特に民主主義社会では国民世論を反映している。日本人の良識にも訴えたい。(原川貴郎)
■ペマ・ギャルポ氏 1953年、チベット・カム地方(現在の中国四川省)生まれ。59年、インドに亡命し、65年に来日。亜細亜大卒業後、ダライ・ラマ法王アジア・太平洋地区担当初代代表などを歴任。2005年、日本に帰化。政治学博士。