韓国の「高齢化の予測統計」が波紋…「日本を超えるスピード」で進む“尋常ではない現実”
12/30(木) 8:02配信
統計庁が出した驚きの数字
12月19日、韓国の統計を司る統計庁より「将来人口推計:2020~2070年」が公表された。
この調査は5年に1回行われる調査であり前回調査は2015~2065年を対象としたものであったが、2018年から合計特殊出生率(以下、「出生率」とする)が1を割り込んだこともあり、2019年にイレギュラーに2017~2067年を対象とした推計が公表された。
今回は、2020~2070年を対象とした推計の内容を考察する。
将来には不確実性が伴うため、これを推計時に考慮して出生率、期待寿命、国際純移動といった人口変動要因の将来水準の仮定をいくつか設けて複数の推計を行う。
出生率については、高位仮定は出生率が比較的高い水準に回復するとした仮定、下位仮定は比較的低水準にまでしか回復しないとした仮定が設けられている。
期待寿命については、高位仮定は期待寿命が比較的高くなるとした仮定、下位仮定は比較的低水準への上昇にとどまるとした仮定が設けられている。
さらに、国際純移動は2020年にはマイナスであったものが、高位仮定は比較的高い水準のプラスとなるとした仮定、低位仮定はマイナスのままとどまるとした仮定が設けられている。
そして、出生率、期待寿命、国際純移動の中位仮定は、それぞれ中程度となるとした仮定である。
これら3つの人口変動要因にそれぞれ3つの仮定があるため、合計で9つの仮定を導くことができるが、将来人口の中位推計は3つともすべて中位仮定を置いた推計、高位推計はすべて高位仮定を置いた推計、低位推計はすべて低位仮定を置いた推計である。
高位推計は楽観的シナリオ、中位推計は標準的シナリオ、低位推計は悲観的シナリオといえるだろう。
そして通常、将来人口推計といった場合は中位推計の数字を使う。
ちなみに出生率の仮定を具体的にみてみると、2020年は0.84であるが、高位仮定は1.40、中位仮定は1.21、低位仮定は1.02までそれぞれ回復することが仮定されている。
よって現在の出生率が1を割り込んだ状況が続くことは仮定されていないこととなる。
人口の動き
さてここからは韓国の人口関連の数値の動きを確認する。
第一に人口についてみてみよう。
中位推計であるが、2020年の人口は5183.6万人でピークを迎えその後は減少に転ずる。
2041年には5000万人を切り、2066年には4000万人も切る。
そして2070年には3766万人となり、2020年から2070年までの人口減少率は27.4%である。
次に高位推計であるが、人口が5000万人を切るのは2055年であり、2070年までに4000万人を切ることはない。
2070年の人口は4438万人であり、2020年から2070年までの人口減少率は14.4%にとどまっている。
一方、低位推計については、2031年には人口が5,000万人を切り、4000万人を切るのも2056年である。
2070年の人口は3153万人で、2020年から2070年までの人口減少率は39.2%となり、50年間で人口は4割近くも減少する。
第二に高齢化率についてみてみよう。
2020年は15.7%であるが、中位推計では、2025年には20%、2035年には30%、2050年には40%を超える。
そして2070年の高齢化率は46.4%に達するが、OECD加盟国で韓国を除いて将来、高齢化率が40%を超えると予想されている国は見当たらないため、韓国の高齢化率は突出することとなる。
高位推計ではこの状況が少しはましになる。
高齢化率が20%を超えるのは中位推計と同じく2025年であるが、30%を超えるのは2036年、40%を超えるのは中位推計より5年遅い2055年である。
ただし高位推計でも高齢化率は40%を超え、2070年には43.5%ととなる。
楽観的なシナリオでも、韓国は世界で類をみない超高齢化社会となる。
そして低位推計は悲惨である。
高齢化率が20%を超えるのは2025年、30%を超えるのは2035年で中位推計と同じであるが、40%を超えるのは中位推計より2年早い2048年である。
そして、2070年の高齢化率は49.6%で、人口の約半数が高齢者となってしまう。
日本よりも高齢化が進む可能性
ちなみに日本の将来人口は、国立社会保障・人口問題研究所が2017年に「日本の将来推計人口(平成29年推計)」を公表した。
これにより、日本の2015年から2065年までの人口が推計されているため、これをもとに高齢化率の日韓比較をしてみよう(ともに中位推計の数値を使用する)。
日本の2065年の高齢化率は38.4%であるが、韓国は45.9%であり、韓国のほうが日本より高齢化率が7.5%ポイントも高くなる。
現在は、日本のほうが韓国より高齢化が進んでいるが、将来はこれが逆転する。
そして、50年後には韓国は日本より高齢化がはるかに進んだ国になるのである。
高齢化は経済に悪影響を及ぼす。
まずは経済成長率である。
高齢化は労働力人口の減少を招き、労働投入の経済成長への寄与が低下する。
また高齢化はマクロでみた貯蓄率を低下させ、資本蓄積の伸びを鈍化させ、ひいては資本投入の経済成長への寄与が低下する。
経済成長率は、生産性の寄与、労働投入の寄与、資本投入の寄与の和で決まるため、生産性が高まらない限り、労働投入の寄与と資本投入の寄与がともに低下すれば、経済成長率が長期的にみて低下する。
次に、財政である。高齢化は、年金支給の増加、医療保険給付の増加を招き、財政に多くの負担をかける傾向にある。
そうなれば、財政赤字が増加し、ひいては政府債務が増加することになり、財政が悪化する。
韓国の高齢化は、世界でも類をみないほど進むことは確実である。
この状況は楽観的なシナリオである高位推計の結果でも変わらない。
韓国経済の将来は高齢化の悪影響を受けることは必至であり、かなり厳しいものになることが予想される。
高安 雄一(大東文化大学教授)