文在寅が「隠蔽」するウラで…
文在寅政権の「自画自賛」と「思い込み」が現在の韓国の苦境を招いているという様子を、前編記事『文在寅の「呆れた自滅」で、韓国「大崩壊」への“地獄のカウントダウン"が始まった…! 』では紹介した。
実際、いま韓国では「雇用崩壊」で若者たちの怒りはピークに達しており、北朝鮮との関係も危機に直面している。
文在寅大統領の「自滅」で、いったい韓国はこれからどうなってしまうのか。そのヤバすぎる最前線を緊急レポートする。
「雇用大統領」という自画自賛
確かに輸出は好調だが…
文在寅大統領は昨年の7月16日、総選挙後の国会の開院式に出席し、演説を行った。
文在寅大統領は
「経済でも韓国は他国より相対的に善戦した」
「政府の果敢で前例のない措置が中小企業保護と雇用維持に寄与し」
「輸出・消費・雇用などで経済回復の流れが見え始めた」と希望に満ちた展望を語った。
確かに輸出は好調である。
それは特に今年に入って、半導体を中心に価格の上昇が輸出金額にプラスに働いているからである。
それは韓国政府の政策とは無関係である。
しかし、雇用の実態は悲惨である。
これを認めないのは文在寅氏とその周辺くらいであろう。
文大統領は、財政支出で高齢者向け短期アルバイトを増やすことで、見かけ上の失業率は低く抑え、その数字をもとに韓国経済の就業状況は良好であると発言している。
しかし、雇用が改善したなどとても言えるものではない。
今年非正規職が64万人増加した。そのうち、60歳以上の高齢者が27万人である。
青年失業率は5.4%と昨年より3.5ポイント改善している。
しかし、これは事実上のトリックといわれても仕方がない。
20代から30代の30.1%(243万人)が非正規職であり、その比率は60代よりも高い。
しかも青年層の勤務時間を2年前と比較すると週36時間に満たない短時間労働が10.3万に増加したのに対し、36時間以上はかえって13.9万人減少している。
この間、良質な製造業の雇用は減少している。
それは反企業的な韓国政府の政策が原因であり、その代表例が、最低賃金の無計画な大幅引き上げ、規制改革と労働組合寄りの労働政策及び重大災害処罰法と呼ばれる過激な労働者保護法である。
数字の粉飾で自画自賛していては、対策は遅れるばかりである。これでは、新型コロナ後も良質の雇用の創出は遅れるばかりだろう。
韓国の「生活の質の低下」に歯止めがかからない
文在寅氏は、韓国経済が国民1人当たりのGDPは世界十大経済大国の仲間入りを果たした、と自画自賛する。
だが国民生活にはその実感は広がっていない。
グローバル統計サイト「NUMBEO」によると、2021年の韓国の「生活の質」指数は130.02となり、評価対象国83か国中42位となった。
文政権1年目の2017年には67か国中22位だったから、大きく悪化したことになる。
生活の質低下の要因は不動産価格の高騰と物価高、そしてままならない就業機会の減少である。
ソウル市内の不動産価格は文在寅政権の4年間で倍増した。
文政権はこの間20数回も大々的に不動産対策を発表しておきながら、上昇を抑えることができなかった。
その背景にはマネーゲーム化した不動産文化とコロナ禍による金融緩和が火に油を注いだ側面がある。
青少年は追い込まれている。20-30代の人々を調査したところ「一生懸命働いても金持ちになれない」と答えた人が70.9%に上る。
同時に69.5%は「希望する職場に就職する可能性は低い」62.9%は「今後も若年層の雇用環境は悪化する」と答えている。
こうした青年層の悲惨な現実に目をふさいで自画自賛しているのが文在寅政権の実態である。
世界の10大経済大国になったというのは文在寅政権が圧力をかけ成長を妨害する財閥企業の功績である。
保革対立を持ち込み、保守派攻撃を自画自賛
文在寅氏の政策の優先度は国内政治では、政治を「敵」と「味方」に分ける考え方、政敵への報復と選挙勝利、そして検察改革である。
文在寅がローソク革命で朴槿恵氏から政権を奪取すると、最初の国内政治的課題として「積弊の清算」をあげ、保守政権の業績否定を否定した。
それはまず、朴槿恵大統領の父であり、国父ともいうべき、朴正煕元大統領韓国が国の発展の基礎を作り上げた「漢江の奇跡」と呼ばれる業績を韓国の社会化教科書から削除することであった。
これは政敵朴父子に対する報復でもあろうか。
並々ならぬ執着
全斗煥元大統領
朴氏を引き継いで韓国経済を発展の軌道にのせたのは全斗煥(チョン・ドゥファン)元大統領である。
同氏は大統領就任時経済成長率マイナス4.8%、物価上昇率42.3%、貿易赤字44億ドルと非常事態にあった韓国経済を立て直した。
そして退任時には、経済成長率12.8%、物価上昇率0.5%、国民1人当たりGNP3098ドルという経済を作り上げ、88年ソウルオリンピックの招致にも成功した。
そして任期の年を終えると約束通り後任に道を譲った。
これは民主的政権交代のはしりである。
それでも文在寅氏は、全元大統領を軍事クーデターの首謀者、光州民主化運動の弾圧者としてその業績を否定し、同氏の死亡に際しても元大統領としての礼遇は行わなかった。
その後の保守系大統領についても、李明博氏、朴槿恵氏は依然収監されたままである。
このように文在寅氏は、保守系大統領を執拗に攻撃した。
その反面、自分が収監されることを極端に警戒し、高位公職者犯罪捜査処を新設、検察の捜査権を奪うとともに、同処の人事を通じて文政権の周辺に捜査が及ばないような検察改革を行った。
さらに、来年の3月9日に行われる大統領選挙に向けては、保守系候補の尹錫悦氏の検事総長としての職権乱用などをしきりに追求し、与党系の李在明氏の不動産疑惑の捜査を回避する動きを見せており、革新系による政権維持に並々ならぬ執着を見せている。
文在寅氏は、国内政治に大半のエネルギを注ぐだけではなく、経済にも政治を持ち込み、保革の対立を煽っている。
文在寅氏が経済政策の幹部に起用したのは進歩経済学でも少数者である所得主導成長グループである。
そうした人々の考えのベースにあるのは「1人当たりの国民所得が3万ドルだ。
まともに分配されていないからこのような状況であり、年間3万ドルずつ均等に分ければ全員が幸せに暮らすことができる」という社会的思考である。
文在寅氏は経済分野において社会的思考に基づく政策で格差を是正し、経済成長に結びつけることができる、と思い込んでいる。
そして、こうした政策では社会の公平、公正が実現できないということを理解できないのが、文在寅氏とその周辺である。
彼らは、経済の実態を見ることなく、自画自賛体質によってその失敗を隠蔽し、政権の政策を正当化している。
経済政策を判断するのは国益にかなっているか否かであり、革新系を正当化することではない。そこに文在寅政権の最大の過ちがある。
文在寅政権の最優先課題は南北関係の改善
文在寅氏にとって最大の優先課題は南北関係の改善である。
そのために、ほかを犠牲にしている。
それでも北朝鮮との関係はうまくいっていない。
文在寅政権は北朝鮮に非核化の意思があると言って米国のトランプ前大統領を米朝首脳会談に引っ張り出したが、それが文在寅氏の思惑通りにはいかず米朝首脳会談は破綻した。
韓国の安全保障を危険にさらしている
金与正氏
北朝鮮からの脱北者が北朝鮮に向けて飛ばしていたビラを金与正氏が禁止しろというと、これを禁止する法律を作成した。
北朝鮮との軍事合意を結び韓国の安保を危険にさらしている。
そして今は「終戦宣言」を提唱しているが、これが実現すれば、在韓国連軍や在韓米軍の地位にも重大な影響を及ぼしかねない。
文在寅氏は2019年2月の米朝首脳会談までは南北、米朝関係の改善を促したことを自画自賛していた。
これが失敗しても米朝関係の橋渡しを行うことができるのは自分であり、南北関係の改善は朝鮮半島に平和をもたらすとも思い込んでいる。
しかし、それは北朝鮮の都合でいつでも崩壊させることができる偽りの平和である。
南北の経済が一体化すれば、日本を越えることができるともいう。
しかし、北朝鮮の窮乏を救うためのコストには見向きもしない。
文在寅氏の自画自賛と思い込みでの韓国の平和と繁栄が壊されようとしている。
「自画自賛の政治」とは決別せよ
さらば文在寅
結論。
大統領の自画自賛で韓国国民が不幸になったのは文在寅政権がはじめてではない。
しかし、文在寅氏の現実を見ない政治、自画自賛の政治、思い込みの政治、保革の対立を煽る政治は、これまでのどの大統領にもまして激しいものがある。
次期大統領選挙が近づいている。 保革の対立を煽る政治を繰り返していたのでは韓国の繁栄も安定もない。
自画自賛の政治とは決別し、現実を直視する政治なることが望まれる。
武藤 正敏(元駐韓国特命全権大使)