2021年12月11日
- 韓国経済ニュース時評日本経済ニュース時評
韓国政府は、「K防疫モデル」と自画自賛したが、それも今は昔のことになった。
日本へ対抗して「ウィズコロナ」を急ぎすぎた結果、感染者が急増し手が付けられない状況に追い込まれている。
失敗した最大の原因は、三つあるように思われる。
1)政府が、コロナ対策で医療専門家の意見を聞かないこと。
2)政府が、綿密な医療設備・人材の確保をしなかったこと。
3)政府が、日本の実施する「ウィズコロナ」へ対抗せざるを得なかったこと。
こうした状況下で、韓国の感染者数はいずれ、一日1万人(10日は7022人)へ達するだろうと悲観的見方が強まっている。
コロナ治療陣では内科医が払底し、眼科医や皮膚科医まで動員される事態に追い込まれている。
こうした専門分野以外の医師を動員しても、満足な治療が行なわれるとは思えない。悲劇そのものである。
『ハンギョレ新聞』(12月11日付)は、「韓国、病床待機者1258人 コロナ病床あっても医療人材なし」と題する記事を掲載した。
段階的日常回復(ウィズコロナ)の開始以降の新型コロナウイルス感染者の急増により病床稼動率が高まったことで、自宅で1日以上病床の空きを待っている患者の数も急速に増えている。
保健医療システムが限界に達しているため、病床稼働率をこれ以上高めることはできないという指摘が出ている。
(1)「10日の中央防疫対策本部(防対本)の発表によると、この日午前0時現在で、入院する病床が見つからずに1日以上病床の空きを待っている患者の数は1258人。
このうち3日待っている患者は80人で、4日以上待機している患者も285人にのぼる。
待機患者のうち70歳以上の高齢患者は503人で、高血圧、糖尿病などの基礎疾患がある患者も755人。
これらの感染脆弱階層は、速やかに入院診療を受けなければ重症化する可能性が高い」
1日以上病床の空きを待っている患者の合計は1258人
3日待っている患者は80人
4日以上待機している患者285人
あたかも「野戦病院」のような緊迫化した状況になっている。
日本の夏場が、これに近い状況だっただけに、なぜ、これを参考にした対策を取らなかったのか。事前の綿密な準備不足を否めない。
(2)「政府が、行政命令などによって病床確保に努めているにもかかわらず、病床待機者数は急速に増えている。
10月末までは病床の空きを待つコロナ感染者はいなかったが、11月に段階的日常回復が始まってから急激に増え、11月26日には1310人の待機者が発生した。
その後の病床拡充により、今月4日ごろには800人台にまで減少したものの、抑えきれないコロナ拡散により、病床待機者は再び1258人にまで増えた。
同時に、コロナと診断されてからも自宅で治療を受ける在宅治療者の数も急速に増え、2万0458人に達している。在宅治療患者が2万人を超えたのは初めて」
下線のように10月末までは、病床の空きを待つ感染者はいなかった。
それが、「ウィズコロナ」とともに急増した。
社会の「人流」把握が不十分であったことと、人々が一斉に「自由」を謳歌するなど慎重さに掛けていたのである。
この点が、日本人と決定的に異なっている。日本は、「ウィズコロナ」でも慎重に行動していた。
(3)「病床待機者は増えているが、病床稼働率は70%台を保っている。
9日午後5時現在の稼働率は、感染症専門病床が73.65%、重症患者病床が79.28%、準重症患者病床が73.91%。政府はこの日、行政命令を発動し、全国の医療機関でコロナ重症、準重症、中等症用の病床をさらに1899床確保すると明らかにした。
目標どおり病床が確保されれば、重症患者専門病床1413床、準重症病床746床、中等症病床1万3852床が運用されることになる」
病床は増えているが、問題は次のパラグラフで指摘するように「医療スタッフ」が不足している。
(4)「専門家は、政府が病床動員行政命令を下しても重症患者をこれ以上受け入れるのは難しいだろうと指摘する。
現実的に運用できる保健医療システムの力量がすでに尽きているというのだ。カトリック大学医学部のペク・スニョン名誉教授(微生物学教室)は「重症患者病床の20%が空いているにもかかわらず、重症患者が重症患者病床に移送されずに自宅待機している。
行政命令を下して病床を増やしたとしても、医療人材の供給問題などで実際に感染者が行ける病床がなければ行政命令は無意味だ」と批判した」
先に、医師の募集をおこなったが、治療専門家である内科医はゼロであった。
眼科や皮膚科の医師が集められている。あたかも野戦病院が、外科医でなく産婦人科医によって治療するような事態に落込んでいる。
(5)「防対本の発表によると、この日のコロナ新規感染者数は7022人、累計感染者数は50万3606人。過去最多の新規感染者が発生した8日(7175人)からは153人減ったものの、先週金曜日(4944人)と比べると2078人の増加だ。重症患者は852人で、過去最多の重症患者が出た前日(857人)から5人の減少。コロナで死亡した人の数は53人で、累計死者数は4130人。オミクロン株への感染が新たに確認された感染者は3人で、累計感染者数は63人となる」
10日の感染者数は、先週金曜日(4944人)と比べると2078人の増加、つまり42%増である。
『ハンギョレ新聞』は、政権支持メディアであるから、敢えて増加率をぼかしているが、異常な増加率である。
一週間に4割も増える状況が続けばどうなるか。韓国政府は正念場を迎えている。
日本では、菅首相(当時)がコロナ対策で自民党総裁選出馬を断念したほど。
内情は別としても、こういう名目が立つ事態にあった。文政権のコロナ対策は、生温いのだ。