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8 こんなに「日本企業がケチになった」根本的な原因

2021-12-13 17:08:47 | 日記
こんなに「日本企業がケチになった」根本的な原因

「賃上げ」も「設備投資」もしなければ縮小は必然

デービッド・アトキンソン : 小西美術工藝社社長 著者フォロー
2021/05/19 9:00

個人消費がデフレの原因になっていない以上、日本政府として需要を喚起するためには、とにもかくにも、企業の設備投資を喚起するべきです。

そのために、MMTを真剣に考える価値はあります。MMTは、企業投資を喚起する「薬」になりうるのです。
一方、企業の設備投資の問題に手をつけずに、ただ消費税をゼロにするだけでは、経済が持続的に回復するとはとても思えません。こういったMMTの使い方は「毒」になります。

そうした意味で、菅政権が掲げているグリーン投資、ICT投資を全国の全企業に徹底させる戦略は正しいと思います。

大企業のみならず、大半の労働者を雇用している中小企業も例外なく実施するべき戦略です。

輸出も需要の1つですから、需要を喚起するもう1つの重要な政策です。観光戦略はその最たる例です。

最後に、需要のうち最大のものが個人消費ですから、これまでずっと低下傾向にあった労働分配率を元に戻すべきです。

それには、諸外国同様に、コロナであっても、経済を支えながら最低賃金を引き上げるべきです。

企業の緊縮戦略は「lose-lose」戦略である

私は長年、経済を供給側から分析して、「生産性向上」と「輸出の増加」と「最低賃金の引き上げ」を訴えてきました。

今回は、経済を需要側から分析してみました。まったく違う方面から見ても、ある意味で当然、まったく同じ課題が見えてきました。

日本経済は、人口問題に対応するために、労働者の給料を上げる必要があります。

それには生産性を高めるべきです。それには設備投資が必要です。

生産性を高めた分だけ、個人の所得が増えるように、労働分配率を高めなければなりません。

労働分配率の上昇によって個人消費が増え、それにともなって企業の売上も増えますから、企業も儲かります。「win-win」です。

日本は、新しいことに反対する傾向が強いです。それは、「win」があると必ず「lose」があると考えるからであるように思います。

とても日本的な、消極的な思考です。しかし、世の中には、「win-lose」だけではなく、「win-win」もあります。

日本企業がいまとっている、労働分配率を下げながら投資をしない戦略は、一見「win-lose」に見えます。

短期的には、企業が「win」するからです。

しかし、長期的に見ると企業も労働者も損ばかりの「lose-lose」戦略になっています。

ICT投資をして、輸出もグリーン投資も増やして、人材投資もして、労働分配率を高める戦略こそが、真の「win-win」戦略なのです。

次回は、コロナ禍における海外の最低賃金の動向を検証します。

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7 こんなに「日本企業がケチになった」根本的な原因

2021-12-13 17:03:34 | 日記
こんなに「日本企業がケチになった」根本的な原因
「賃上げ」も「設備投資」もしなければ縮小は必然

デービッド・アトキンソン : 小西美術工藝社社長 著者フォロー
2021/05/19 9:00


事実、日本では、大企業より中小企業のほうが設備投資を減らしています。

特に1990年以降は、その傾向が強いです。

それによって、中小企業の設備年齢は1990年以降、大企業と比べて非常に古くなっています。


中小企業は外部株主がいない家族経営が多いですから、株主至上主義とは関係のない世界です。

株主至上主義の強化と日本企業の設備投資減少は同じ時期に起きていますので、それが原因だと考えたくなるのはわかりますが、かなり無理のある合成の誤謬です。

イノベーション投資に期待するしかない

人口減少の悪影響をそこまで受けないのは、イノベーション投資です。

イノベーションの結果生まれた商品は、人口が減っても、普及率がピークアウトするまでは売上の増加が期待できます。

ですから、日本企業の設備投資を増やすには、イノベーション投資を増やす政策が最も筋がいいと考えられます。

しかし残念ながら、ここも3つの問題があります。

まず、政府の生産的支出の減少が悪影響を及ぼしています。

政府が投資の道筋を示して、お金を出して、民間の投資を喚起するべきですが、日本政府は長年、社会保障を増やすために、生産的支出を減らしてきました。

もう1つは既得権益です。

イノベーションを起こす商品は、既存企業に対して悪影響をもたらす場合が多いです。

残念ながら、今までは政府が既得権益に過剰に配慮する傾向がありました。

日本は新規参入を徹底的に潰す傾向がありますので、イノベーションが起きにくいのです。

最後に、イノベーションを起こす企業は新しい企業が多いですが、日本は新規起業の比率が低いので、イノベーションも起きにくい状況です。

総括すると、日本経済の衰退の原因は、企業の緊縮戦略にあります。そして日本企業が緊縮戦略をとる主因は、以下の4つです。

(1)人口減少と高齢化
(2)政府の生産的支出の減少
(3)中小企業の経営者の高齢化問題
(4)中小企業の後継者不足の放置

デフレやグローバル化、消費税の引き上げなどは、これら4つの主因に拍車をかけているだけの副因にすぎません。

今回は、需要側から日本経済を見てきました。

経済学では、需要は「個人消費(C)+投資(I)+政府(G)+純輸出(X)」で表されます。

世界銀行の2019年のデータによると、世界全体のGDPは、個人消費が63%、投資が20%、政府支出が17%という構成になっています。

最も小さいのが政府支出で、最も変動しやすいのが投資です。


6 こんなに「日本企業がケチになった」根本的な原因

2021-12-13 17:02:46 | 日記
こんなに「日本企業がケチになった」根本的な原因

「賃上げ」も「設備投資」もしなければ縮小は必然

デービッド・アトキンソン : 小西美術工藝社社長 著者フォロー

2021/05/19 9:00


(6)政府の生産的支出(PGS)

当然ながら、政府が生産性を向上させるための生産的支出を減らせば、企業も新しい投資を控えることは十分ありえます。

ECBの論文の指摘どおり、財政の厳しいイタリアやスペインのように日本も生産的支出(PGS)を減らしてきたので、企業の設備投資に悪影響を及ぼしていることは間違いありません。

このPGS減少という視点に限って、反緊縮財政派の考え方は正しいと考えます。

生産的支出を増やし、生産性を上げて、税金が増える形で財政健全化を計るのが王道だと言えます。

「デフレ」「株主至上主義」の影響は限定的

以上の理由は、デフレと関係のない、現実的な設備投資の説明要因です。日本企業の社長の1人として、実感している原因です。

(a)デフレと設備投資の関係

とはいえ、デフレと設備投資の減少に因果関係がないことはありません。

たしかにデフレ下には金融が緩和され、金利が低下するため設備投資をしやすくなるかもしれませんが、借金は名目ですから、デフレによって期待できる利益が減れば、返済負担が重くなります。借金を控える動機になっているとも考えられます。

しかし世界的に見ると、利益率の拡大によって、借金を原資とする設備投資の割合は減っていますし、インフレが続いている国でも設備投資が減っています。

ですから、日本企業が設備投資を控えている最大の理由がデフレにあるとは言えないのです。

また、これから労働人口が約3000万人減ることに比べて、今までのデフレ圧力は、企業がここまで設備投資を控えることの説明要因にはなりません。

繰り返しですが、デフレになっていない先進国でも、企業の設備投資は減っているのです

ですから、日本のデフレが日本企業の設備投資減少の十分な説明要因になることはないのです。

(b)株主至上主義と設備投資の関係

資本コストが上がっていることが、企業投資が減っている理由だとする主張もあります。

資本コストとは、株主が求める資本の収益率です。

株主至上主義になったから資本コストが高まり、世界的に投資が減っているという説があります。

西洋資本主義やハゲタカによる悪影響とよく言われます。表面的な理屈として、もっともらしく聞こえます。

しかし、これも十分な説明にはなりません。

そういう圧力を受けているのは主に上場企業です。

上場企業は360万社ある日本企業のうち約4000社にすぎませんし、上場企業で働いている日本人労働者は全体の2割にもなりません。



5 こんなに「日本企業がケチになった」根本的な原因

2021-12-13 17:00:40 | 日記
こんなに「日本企業がケチになった」根本的な原因

「賃上げ」も「設備投資」もしなければ縮小は必然

デービッド・アトキンソン : 小西美術工藝社社長 著者フォロー

2021/05/19 9:

もちろん、サービス業だからといって設備投資が必ず少なくなるわけではありません。

しかし日本は、最低賃金が世界的に著しく低く、人材の質が高いので、サービス業の設備投資が少なくてもやっていける構造になっています。

中小企業の後継者不足は大問題

(5)後継者不足

よく考えれば誰でも気づくことですが、企業の経営者が高齢化して、跡継ぎのいない会社が増えれば増えるほど、積極的に投資する企業は減ります。

廃業予定の企業が、設備投資するインセンティブを持つはずがありません。

企業経営者の高齢化が進むほど、その悪影響は顕著に出るはずです。

実際に、日本で企業投資を最も減らしているのは、大企業ではなく中小企業です。後継者不足の影響は確実にあると考えられます。

中小企業庁によると、2025年までに、経営者が70歳を超える中小企業は245万社に膨らむと予想されています。そのうち、127万社は後継者が未定です

実際、中小企業の設備年齢も大きく上がっています。

私としては、ここに最大の原因があると考えますが、さらなる分析が必要です。


4 こんなに「日本企業がケチになった」根本的な原因

2021-12-13 16:58:45 | 日記
こんなに「日本企業がケチになった」根本的な原因

「賃上げ」も「設備投資」もしなければ縮小は必然

デービッド・アトキンソン : 小西美術工藝社社長 著者フォロー
2021/05/19 9:00

アメリカは日本以上に海外直接投資を増やしながらも、国内の設備投資額は、1990年から2018年の間に3.4倍も増えています。

金額にして310兆円の増加です。これに対して、日本は逆に15%も減っています。

直近の15年間、日本の海外直接投資は平均して13兆円でしたが、これはアメリカの海外直接投資33兆円の39.5%にしか相当しませんので、十分な説明要因にはなりません。

ちなみに、日本の対外直接投資は大半が生産性の高い製造業が多いと言われますが、実は直近の15年間のデータ(JETRO)では、非製造業が最も多い57.4%を占めています。

日本の対外直接投資は主に金融・保険業(19.4%)、卸売・小売業(13.1%)、化学・医療(9.2%)などの大企業が中心です。

それより重要なポイントがあります。生産性を最も大きく改善させる資本の深化です。国民1人当たりの設備投資を見ると、アメリカは2.6倍も増えていますが、日本は労働参加率が上がったにもかかわらず、17%も減っています。この大きな差を、一部の企業のたかだか13兆円の対外直接投資で説明することはできません。

産業構造の変化も影響
(4)サービス業の拡大
人口が高齢化すると、経済の中でのサービス業の比重が高まります。サービス業は、製造業に比べて労働集約型になりがちなので、設備投資の対GDP比率を下げる傾向にあります。特に日本のように、人材を安く調達できればできるほど、設備投資に悪影響が出やすいことが確認されています。