前回(腹を納る法)、前々回(頭脳を納る法)と傷口の縫合が出てきましたが、今回はそれについて、もう少し詳しくご紹介いたします。出典はやはり『外科手引艸』からです。
針ハ皮ヌイ針ヲ用ユ。糸ハ南毛大白上々ヲ、ツネノ絹糸ノフトサニシテ、イカニモクリニヨラセテ持ツナリ。其糸ヲ長サ一尺ホドヅツニシテヌウナリ。
南毛とは南蛮から輸入された木綿糸、コットンのこと。 大白とは、きわめて清潔なものという意味です。それを撚ってふつうの絹糸の太さにして使用します。 現代でも縫合の糸には、化学合成のもの(ナイロンなど)がいろいろ出て来ていますが、依然、絹糸も使われています。絹糸は自然のものの中で人体への親和性が高く、縫合には最適なのですが、この当時は使うことが出来ませんでした。なぜなら絹は非常に高価なものであり、また一般人の使用には規制があったからです。そんな訳で華岡青洲も縫合には絹糸を使えず、蝋を引いた木綿糸を使っていたのです。ちなみに麻糸だと小児などの柔らかい肉が切れやすいので、使い難かったようですね。(『外科摘要』参照)
一処ヅツニテヨクシメテ、三ツハカリムスビテ、残リノ糸ハキルナリ。腸入レテモヌイ、手足ツギテモ縫、イグチヲツギテモヌウナリ。イグチツグニハ三処ヌウナリ。何モ糸ハ一処ヅツニテヌイキルベシ。
糸は一つ縫うごとによく締めて、三つ結び、切ります。こうすると抜糸するのが楽になります。イグチとは生まれながらにして、口唇が縦に裂けている奇形のことです。今で言うところの口唇裂のこと。
ウチ身ニモキヅニヨリヌウコトアリ。同シ心得ナリ。其薬モ人油、天利膏ヲ用ユ同前ナリ。
縫合した傷口の上には例によって人油、天利膏を使います。これが縫合の一つの方法です。
『金創口授』より
つづく
(ムガク)
(これは2010-09-14から2010-09-28までのブログの修正版です。文字化けなどまだおかしな箇所がありましたらお教えください)
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