『晴れた日には・・・』

日々の雑感を綴ります。

高橋和巳『悲の器』

2014年01月11日 | 
3連休に、仕事を三つ持って来ました。
今日はそのうちの一つをやろう、と思っていたのに
朝起きて、ふと本棚を眺めて
目に飛び込んできた本、高橋和巳の『悲の器』
この本、私は読んだんだろうか・・・・・
記憶にないなあ・・・・
そう思うと、無性に読みたくなってきたのです・・・・
試験勉強ををしようとして
いつのまにか、好きな本を読んでしまう
そんな学生の頃の自分を思い出しました・・・

しかしまあ、実に読みずらい、です・・・・
主人公の正木教授(法律専門)やその他の登場人物が
自分の思想や考えを延々と語る部分はやたら難かしく、
時には専門的な用語も入って、
ますます読む気がしなくなっていくのです。
それでも「知識人の愛と挫折」という表題に魅せられて
だいたいのストーリーだけを追っていくことにしました。

さて、それで「どう?」
と言われても、なんと答えてよいのやら・・・・・
ただ・・・・
今の人は、きっと読まないわよねえ・・(苦笑)

高橋和巳のあとがきは、1962年10月16日
初版は1968年、
ここにあるのは、1974年19版です。

あとがきには、こうありました。
「(前略)なお、この作品は、その欲張った構想のゆえに、
日本の現代史や精神史、とりわけ多くの法律学の資料や著述の
参照のうえに成り立っている。
私の脳裏に生まれ、作中人物に仮託した二三の観念については
相当な自負がないわけではない。(後略)」

作者がそういっているからそうなのでしょう。
かなり、欲張った(笑)内容です。

当時の帯表紙の書評の面々もすごいです。
寺田透、埴谷雄高(知らない)や、
野間宏、福田恒存らが、書評しています。
福田恒存氏評
「これは、大げさ言うと『罪と罰』だ。
 常識の世界に挑戦している。
 しかも、かなり高い調子で貫いている。
 ただ、最後に、刀折れ矢尽きた感じはするが・・・」


一日何もせず、本だけを読んで日が暮れました。


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『くじけないで』柴田トヨ

2013年12月03日 | 
由紀さおりさんが
「主題歌、私が歌ってるのよ。」と教えてくださった。
映画「くじけないで」

「100歳の詩人」と話題になった柴田トヨさんの
『くじけないで』から

 「貯金」

私ね 人から
やさしさを貰ったら
心に貯金をしておくの

さびしくなった時は
それを引き出して
元気になる

あなたも 今から
積んでおきなさい
年金より
いいわよ


たくさんのメモ書きの中から
推敲に推敲を重ね
余分なものをそぎ落として
一篇の詩になる、という。
90を過ぎて出合った詩作で
トヨさんは、前向きに生きることを
改めて実行します。


この年齢になって、毎朝起きるのは
本当は辛いです。
それでも私はベッドからヨイショと起き上がり
バターかジャムを塗ったパンと紅茶で
朝食を取ります。
そしてその日、ヘルパーさんにやってもらう
掃除や洗濯等のお手伝いや
買い物のリスト作り。
さらには公共料金の支払いなどを含めた
家計や通院スケジュールなどを考えます。
結構、頭を使い、忙しいんです。

だからどんなに一人ぼっちでさびしくても
考えるようにしています。
「人生、いつだってこれから。
誰にも朝は必ずやって来る」って。

一人暮らし20年。
私しっかり生きてます。



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『悩むこと 生きること』姜尚中(2)

2013年12月03日 | 
「テレビ報道の問題点」(2012年1月27日)

最近のテレビ報道で首を傾げたくなるのは
天気予報の時間の長さだ。
確かに、東日本大震災やゲリラ的な豪雨、
変わりやすい天候の影響などを考えると
天気予報に時間を割くのは、それなりに頷ける。
しかし、海外のテレビ報道を見ると、
たいていは、あっさりとしたものだ。

この点で海外経験の豊富な加藤周一さんが
「日本のテレビ報道の特徴はね、
気象学、動物学、植物学の時間が長いことなんですよ。」と、
皮肉っぽいユーモアを交えて語っていたことが
思い起こされる。

「春一番が吹きました。」
「タマちゃんが現れました。」
「桜前線が北上しています。」
こうした現象は、はたして報道に値する事件なのだろうか。
さらに驚きなのは、海外で重大な事件が起きても
気象学や動物学、植物学的な現象が
テレビ報道の冒頭を飾ることがあることだ。

一年の折々に繰り返される歳時記的な現象の報道の後に
飢餓や内戦、デモや政変などで混乱する
海外のシーンを見せられて、
視聴者はいったいどんな印象を持つことになるのだろうか。
自分たちの住んでいる生活圏はこんなにのどかで平和なのに
なんと海外は、ぶっそうな場所が多いんだろう。
こんな「内外格差」のイメージではないか。

しかし、東日本大震災以後、不幸なことに
私たちの生活圏は決して磐石の
安定した世界ではないことがわかった。
穏やかに移ろいゆく美しい四季折々の恵深い自然ではなく
いつ何時、猛威を振るうかもしれない
凶暴なエネルギーを蓄えた自然は
安定した秩序のイメージと結びついた
気象学や動物学、植物学とは無縁だ。
日常の情緒的なイメージでは捉えきれない
不規則的で逸脱的な自然現象。
これに備えるには、情緒を排した
事実に基づく災害報道が求められている。


言いたいことは、解からないではない。
けれど、
一年の折々に繰り返される歳時記的な現象の報道の後に
飢餓や内戦、デモや政変などで混乱する
海外のシーンを見せられて
 
も、
きちんと、報道は報道として捉えることができる
これは「私的」な考え方かもしれないが、
それはまた「日本人的な」捉え方、なのだと思う。

「春一番」や「タマちゃん出現」「桜前線」は
「報道」というジャンルではないのかもしれないが、
そうした話題が、ニュースの冒頭を飾ったとしても
それを受け入れられるのが
「日本的な感情」のような気がした。
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『悩むこと 生きること』姜尚中

2013年12月02日 | 
これは、姜尚中が執筆した
信濃毎日新聞の夕刊コラム
『今日の視覚』を1冊の本にしたものである。

姜尚中という人物には、実はあまり興味はなかった。
加島祥造にまつわる一人として登場したのが
姜尚中だった、というだけのことなのだ。
どういうつながりだろう、そういう興味だけで
姜尚中を知る気になった。

このコラムを読んでいて、
いろいろ面白いことを発見した。

2011年10月14日のコラム「見えない糸」から

今月8日、私は伊那弥生ヶ丘高等学校の創立百周年を祝う
記念講演の講師として招待された。
校舎は東西駒ヶ岳と仙丈ヶ岳に囲まれ、
天竜川の恵みを受けた豊かな伊那の沃野に佇んでいた。
校門から続く銀杏並木を眺めていると、
わたしは何か見えない糸で結ばれる
人生の機微のようなものを感じざるをえなかった。

校長の窪田先生から、前身の伊那高等女学校の時代、
金大中元韓国大統領の最初の伴侶であった
車容愛(チャヨンエ)女史が学んでいたことを
知らされていたからである。
金大中先生の自伝『死刑囚から大統領へ』(岩波書店)には、
妻の車女史を亡くした時の悲しみが切々と語られている。

1973年の東京での金大中拉致事件以来、
金大中先生の波乱に富んだ生涯は、
韓国の激動の現代史と重なり、
私もその波濤の飛沫を浴びながら青春時代を過ごした。
そして晩年、父親と息子ほどの歳の差がありながらも、
親しく先生の謦咳(けいがい)に接する機会に恵まれたのである。
先生との見えない糸は今も切れずに続いているかと思うと、
感無量であった。

そしてさらに驚いたのは、車女史をはじめ、
伊那高等女学校の女学生たちが、
敗戦間際の昭和19年から20年にかけて、
学徒勤労動員で名古屋の軍需工場で
海軍軍用機の生産に従事していたことである。
実はこの頃、私の父も名古屋の軍需工場で働いていたのである。
生前の父の話では、
そこは海軍軍用機を生産する工場であったらしく、
同じ工場であった可能性も考えられる。

名古屋空襲で一宮市に逃れた父と母は、
一粒種の息子(長男)を亡くしており、
父と母にとって名古屋での体験は終生、
忘れることができなかったはずだ。

こうして伊那の地での一日は、過去は死なず、
今を生きる者たちと見えない糸で結びついていることを
実感させることになったのである。


弥生が丘高校は私の母校でもある。
読みながら、姜尚中に
親近感が沸いてきた。


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高遠町ブックフェスティバル

2013年09月21日 | 
気持ちのいい秋晴れの日
高遠町ブックフェスティバルに行ってきました


今日から3日間、
高遠町が「本の町」になります



町中のあちらこちらの店先に
こんなふうに、かわいらしい本棚が置かれて
本が並べられていました
「手にとって見てください、どうぞ」
そんなことが書かれて
1冊100円~300円で売られていますが、
無人販売で、貯金箱のような缶が置かれているだけなのです

中には、こんなふうに
空き店舗を利用して、しっかり古本が並べられていて
じっくり読んだり、眺めたり・・・・
楽しめます




こんな懐かしい教科書が・・・・


そして、こんな魅力的な本も・・・・


やっぱり買ってしまった(苦笑)
もちろん、復刻版だけれど・・・・
金1500円也
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