近衛秀麿著『オーケストラをきく人へ』(婦人画報社刊、1950年)を読みました。
何しろ65年前の古い本なので、どうせみんなが知っているような基本的なことしか書かれてないんだろうなー的な、なめくさった態度でいたんですが、とんでもなかったです。
近衛さんのレクチャーを直接受けているような気分にさせられる本です。
コントラバスの章を見てみます。
「コントラバスは、その絃が長いことから、きわめて多様のフラジオレット音をだし得ることが理論的に、昔から着眼されていましたが、それを存分に使いこなした作曲家はあまり多くありません。ただラヴェルが主として小編成の場合、例えば組曲『ラ・メール・ロワ』などで示した妙技はまったく驚くべきものです」
なるほど!それと、コントラバスの弓とその持ち方にはフランス式とドイツ式があるってことを恥ずかしながら初めて知りました。
この持ち方、たしかにどっちも見たことがあります。
「コントラバスを演奏の際、弓の持ち方には図で示すようにドイツ式とフランス式の二様があります。双方の特色は一長一短ありますが、チェロと同じ持ち方のフランス式は、優雅な旋律や複雑な楽句に対して、弓さばきが自由で優れていますが、ドイツやロシア音楽独特の、低音の鋭いアクセントを強調するには不向きのようです。
この構造まで違う二様の弓の分布は、ヨーロッパでいうと、ライン河以北のドイツ系と北欧、バルカンの諸国が全部ドイツ式で、フランス、スペイン及びベルギーの7割、イタリア、スイス、オランダの五割ぐらいがフランス式と思って間違いないでしょう。アメリカでは都市によって多少の差異はありますが、だいたいこの両式が相半ばしています。日本では、ようやくフランス式がふえ始めました。」
。。。持ち方だけでなく弓自体の構造も両方式で違うらしいのですが、卓球でいうとシェイクとペンみたいなもん?
このフランス式とドイツ式はいままで全然気にしていませんでしたが、これからは、テレビなどでオーケストラを見るときチェックしようと思います。
ポイントとしては
・現在、どちらが主流なのか?
・一つのオーケストラで両式が混在することがあるのか?(混在したら音色がボヤけやしないか)
・一人のコントラバス奏者がふたつの方式を臨機応変に切り替えることができるのか?
・イタリア式など、ほかの持ち方はないのか?
自分が知らないだけで、クラシック愛好家のあいだでは常識的なことばかりなのかも。。