バスに乗り、車内をぐるりと見回して少し考えて、二人がけの空いていた通路側座席に向かいました。
窓側に座っていた細い中年女性が、ちらりと視線を投げかけます。
「空いている座席は他にもあるのに」、と言いたげな眉間のしわに
「窓側は眩しすぎるから。お隣失礼」と心の中で言い訳して座り、読みかけの本を取り出し読み始めました。
次のバス停で乗ってきた2人の乗客も、それぞれ日陰側の座席につきます。
眩しいのが苦手な人や日焼けを気にする人がいるのかしら、と一瞬思い再び本に視線を落としました。
「ゴホゴホゴホ」
しばらく本を読んでいると、大きな咳が聞こえました。
咳が聞こえた方を振り返らずにそっと見ると、最後尾の右の窓側に座った大柄な中年女性が咳き込んでいます。
マスクはしていないし、ハンカチや手で口を押さえてもいません。
「ゴホゴホゴホ、ッゴホッゴホゴホッ」
今度は真後ろの人が激しく咳き込みはじめ、ひつじの巻き毛に息がかかります。
ああ、そうだった・・・。
持っていたマスクを2枚とも人にあげてしまったと思い出します。
「ゴホゴホゴホ」
とうとう隣の座席の細い中年女性までもが咳をし始めました。
「ゴホゴホゴホ」
右の窓側の中年女性も再び咳をし始めます。
つられる様に車内のあちこちで咳をし始める人がいます。
「ゴホゴホゴホ」
「ゴホゴホゴホ」
「ゴホゴホゴホ」
もう、落ち着いて本を読むどころではありません。
ひつじはカバンから静かにアロマジェルを取り出しました。
プシュッと手のひらにひと押しして、手のひらに広げ温めたジェルを喉全面に塗ります。
ひんやりと冷たい感触の後に、喉にスーっとした香りがしみ込みます。
手のひらを口元に寄せ、鼻から香りを楽しみながら静かに深く息を吸い込み、お腹からゆっくりと吐き出します。
爽やかな「香る風」がひつじの喉の奥を何度も通ります。
「さてと」
返却期限ギリギリの本を少しでも読み進めなくてはなりません。
車内で咳をする人はいなくなりました。
マイコプラズマ肺炎が流行っているのだそうです。
気をつけましょう。
うちに帰ったら
「ゴホゴホゴホ」
ひつじ君が咳をしています。
ああ!!!
水曜午後にやっている内科を探して車で連れて行きました。
「血を取られたよ。薬出しとくから治らなかったらまた来てってさ」
検査結果は土曜には出るそうです。
窓側に座っていた細い中年女性が、ちらりと視線を投げかけます。
「空いている座席は他にもあるのに」、と言いたげな眉間のしわに
「窓側は眩しすぎるから。お隣失礼」と心の中で言い訳して座り、読みかけの本を取り出し読み始めました。
次のバス停で乗ってきた2人の乗客も、それぞれ日陰側の座席につきます。
眩しいのが苦手な人や日焼けを気にする人がいるのかしら、と一瞬思い再び本に視線を落としました。
「ゴホゴホゴホ」
しばらく本を読んでいると、大きな咳が聞こえました。
咳が聞こえた方を振り返らずにそっと見ると、最後尾の右の窓側に座った大柄な中年女性が咳き込んでいます。
マスクはしていないし、ハンカチや手で口を押さえてもいません。
「ゴホゴホゴホ、ッゴホッゴホゴホッ」
今度は真後ろの人が激しく咳き込みはじめ、ひつじの巻き毛に息がかかります。
ああ、そうだった・・・。
持っていたマスクを2枚とも人にあげてしまったと思い出します。
「ゴホゴホゴホ」
とうとう隣の座席の細い中年女性までもが咳をし始めました。
「ゴホゴホゴホ」
右の窓側の中年女性も再び咳をし始めます。
つられる様に車内のあちこちで咳をし始める人がいます。
「ゴホゴホゴホ」
「ゴホゴホゴホ」
「ゴホゴホゴホ」
もう、落ち着いて本を読むどころではありません。
ひつじはカバンから静かにアロマジェルを取り出しました。
プシュッと手のひらにひと押しして、手のひらに広げ温めたジェルを喉全面に塗ります。
ひんやりと冷たい感触の後に、喉にスーっとした香りがしみ込みます。
手のひらを口元に寄せ、鼻から香りを楽しみながら静かに深く息を吸い込み、お腹からゆっくりと吐き出します。
爽やかな「香る風」がひつじの喉の奥を何度も通ります。
「さてと」
返却期限ギリギリの本を少しでも読み進めなくてはなりません。
車内で咳をする人はいなくなりました。
マイコプラズマ肺炎が流行っているのだそうです。
気をつけましょう。
うちに帰ったら
「ゴホゴホゴホ」
ひつじ君が咳をしています。
ああ!!!
水曜午後にやっている内科を探して車で連れて行きました。
「血を取られたよ。薬出しとくから治らなかったらまた来てってさ」
検査結果は土曜には出るそうです。