ずっと「普通」になりたかった には、グニラさんが食事中に父親から厳しく叱責された様子や食べられなかった理由が綴られています。
本人にしか分からない「感覚」は、とても気づきにくいです。
ご飯は柔らかいほうが好き、とか固いほうが好き、と言った食感の好みもですが、
味が変わるとすごくびっくりするから急にお味噌を変えられるのは嫌、とか
あんかけになっていると、野菜炒めがベタベタして食感がダメ、とか
あんかけは見た目がてらてらして気持ち悪い、とか、
見るだけで味の再現が出来てしまうから、嫌いな物は目の前で食べないで、とか
大人が観察して、何度か繰り返して試して、ああ、ひょっとして・・・と気づいてあげなければならないと思います。
親御さんは小食偏食は気にしても、丸呑み早食いはあまり心配しないと思います。
でも保育士は、必ずこのような発達の凸凹を記録します。
毎日の記録を読み返し、どうしてこの日は食べられたのか、または食べられなかったのか、等を考えることは何度もありました。
着替えも食事もいつも最後になることが日常だったT君は、給食を「減らす?」と聞くと、必ず「全部食べる」と答えていました。
いつも背中を丸くしていてシャキッと座る姿勢は10秒続けば良い方で、グニャグニャと体が繋がっていないような走り方をするお子さんでした。
でもカレーライスだけは決められた時間内に食べられて、時々おかわりもしました。
噛むことが苦手だったので丸呑みでしたが、「カレーはビリにならない」と唯一自信を持って食事に挑めるメニューでした。
カレーの匂いを嗅いだだけで、お散歩からの帰り道も早足になり、手洗いもスムーズでした。
「給食残さなかった!おかわりできた!」とお母さんに話している様子は自信に溢れていました。
「どうせカレーでしょ」といわれる時もあれば、「すごいねえ。カレーは得意だね」と褒めてもらえる時もあり、やはり褒めてもらえる時の方が嬉しそうでした。
不思議とお母さんに褒めてもらえたときは帰り支度も早く出来て、「毎日カレーならいいのに」と言ったお母さんの言葉は、今のほうがずっとよくわかります。
お洗濯物をたたんだり、お夕飯を作ったり、済ませてしまいたい家事はたくさんあったでしょう。
「本当はもっとしっかり噛んで欲しいのだけどなあ」と思いながら、T君が食事を楽しみ意欲的に過ごせるカレーの日は未熟だったひつじにとっても思い出深いです。
お子さんの場合、兄弟が生まれる、ママがお仕事を始める、引っ越しなど、生活の変化が食事に影響する場合もあります。
不安、さみしさ、自分へのプライド。
どう伝えて良いか分からないことも多いのかもしれません。
お膝に抱っこして、胸に抱いて、キスをして、赤ちゃんの頃のように親子がお互いに安心できる時間と場所を作って欲しいです。
お子さんにとって、お母さんの存在はとても大きいです。
お食事は楽しくと思います。