これは、朝日新聞の投稿欄「朝日歌壇・俳壇」に掲載された短歌と俳句の中から、東京電力福島第一原子力発電所の原子炉溶融事故に関連して詠まれたものを縮刷版から抜き書きしたものである。
原発事故の発生時から2012年7月までの期間について順次抜き書きを進めていて、今回は2011年6月に掲載されたものである。
2012年8月以降については、新聞発行をリアルタイムでフォローしながら適宜まとめてこのブログで紹介している。
2011年6月6日
心平のモリアオガエルも被爆危機もう聞けぬのかケルルンクック
(下野市)若島安子 (馬場あき子選)
原発が停止になればきのうより茶畑眩し牧之原台地
(静岡市)篠原三郎 (馬場あき子選)
二か月も見えぬ収束原子炉の蒸気を避けて無人ヘリ飛ぶ
(市川市)山本明 (佐佐木幸綱選)
原発の大事故千年に一度のみと。三十二年に三度起こりし
(名古屋市)諏訪兼位 (佐佐木幸綱、高野公彦選)
土下座などされても還らぬ日常と知れども怒りのやり場のなくて
(福島県)斎藤栄子 (佐佐木幸綱選)
原発に群がる蟻と逃げる蟻、蒼天にただ白き日輪
(福島市)美原凍子 (高野公彦選)
原発の五月の闇にぬつと月
(名古屋市)青島ゆみを (長谷川櫂選)
2011年6月12日
「わがんね」と「さいあぐだ」との二言で言い尽くしたり静かな怒り
(野洲市)松山武 (馬場あき子選)
刈り捨てる生茶の匂い嗅ぎながら農の人嘆く原発汚染
(三重県)喜多功 (馬場あき子選)
「原発に馬も豚っこも牛も皆殺(や)られちまっだ どうしよもねべ」
(神栖市)寺崎尚 (佐佐木幸綱選)
ポポポポーンとあいさつしようお日様に脱原発のCM見たい
(函館市)武田悟 (佐佐木幸綱選)
原発のCMに出たあの人が災害募金を訴えている
(千葉市)愛川弘文 (佐佐木幸綱選)
2011年6月20日
魔界めく警戒区域の慰霊祭僧侶でさえも防護服着る
(名古屋市)山田静 (高野公彦選)
バス停の浜岡原発明るくて何も思わず乗り降りしていた
(静岡市)堀田孝 (永田和宏選)
原発は悪いものだと言ってません怖いものだと言ってるのです
(横浜市)田口二千陸 (永田和宏選)
一番茶刈り捨てをする茶農家に宙(そら)は真っ青な八十八夜
(野田市)川瀬玄忠(馬場あき子選)
一時帰宅駆けつけたるは牛のもと餌やり水やり第二の家族
(福島県)北村ミヨ (馬場あき子選)
フクシマの哀れ桃の実色づくよ
(本宮市)兼谷木実子 (金子兜太選)
被爆地の薫風の野に牛痩せし
(鎌ケ谷市)桜井宇久夫 (金子兜太選)
2011年6月27日
丘畑は雲ひくく垂り廃棄せしキャベツ五千に花咲きたりと
(ひたちなか市)篠原克彦 (高野公彦、永田和宏、馬場あき子選)
名古屋まで水を持ち来る出演者アメリカからのオペラ公演
(名古屋市)福田万里子 (高野公彦選)
放射能データ同封で送らるる会津の友のアスパラガスよ
(三重県)三井一夫 (馬場あき子選)
ふくしまのもも、なし、りんごちさき実のひとつひとつが抱いてる不安
(福島市)美原凍子 (馬場あき子選)
放射能を怖れ今年は食べずおり背戸の筍ただ見守るのみ
(福島県)目黒美津英 (佐佐木幸綱選)
窓閉めろ表土を削れよ言うけれど地上の生物人のみにあらず
(福島市)伊藤緑 (佐佐木幸綱選)
その内に何とかなると思いしが何ともならぬ原発の事故
(川崎市)池田功 (佐佐木幸綱選)
南相馬へ二度目の帰宅日帰りで猫一匹の頭撫で来ぬ
(横浜市)荒川澄 (佐佐木幸綱選)
セシウムの大気に太る鯉のぼり
(福島市)二宮宏 (大串章選)
原発の方茫々と卯波立つ
(いわき市)斎藤ミヨ子 (大串章選)
脱原発デモに知る顔梅雨激し
(横浜市)下島章寿 (金子兜太選)
福島の日傘は重し放射能
(福島市)渡部健 (金子兜太選)
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